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8.風邪の初期に用いる処方|漢方歳時記

8.風邪の初期に用いる処方|漢方歳時記

2010年11月18日 (木) 09時00分配信 投稿日:10/11/18 09:00 icon_view 780view

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■秋にかかりやすい病気と処方



秋は五行説の「金」、五臓腑の「肺」「大腸」に相当します。この時期に気をつけたい風邪の初期症状と、食材に関係する痔疾について、代表的な処方を交えて紹介します。

今年のように10月初旬まで厳しい残暑が続いたあと、朝晩冷え込みが続くと、全身の毛穴が閉じ、皮膚呼吸しにくくなるため、鼻や気管支への負担が急増します。また、乾燥した空気(五悪)が、鼻やのどの粘膜を刺激し、「肺」系統の炎症が起こりやすくなります。
 

  表1
 

■風邪の初期に用いる処方



後漢の時代、張仲景の著した『傷寒論』では、風邪の初期症状を太陽病、少陰病に大別し、さらに太陽病を、3種類に分類しています。

太陽病
(1)中風(ちゅうふう):発熱し、汗が出て、悪風し、脈緩(かん)のもの
(2)傷寒:発熱し或はまだ発熱しなくても、必ず悪寒し、体痛み、嘔逆し、脈緊(きん)のもの
(3)温病(うんびょう):発熱し、のどが渇き、悪寒のないもの
少陰病:脈微細にして、ただ寐(いね)んと欲するなり

はじめに悪風・悪寒(さむけ)、頭痛、発熱し、汗が出る場合は「桂枝湯」、汗が出ず、肩などが凝る場合は「葛根湯」を服用します。寒気がなく、発熱し、のどが渇く場合は、温病として「銀翹散(ぎんぎょうさん)」「桑菊飲(そうぎくいん)」を用います。

『傷寒論』は、急性熱性病について書かれた書物であり、時系列にそって進行する病状と、その治療法について記しています。初期の風邪を診断することはもちろん、複雑な諸症状を捉えて、最適な処方を選び出すために、漢方を学ぶ上では必読の書です。
 

表2


■銀翹散の処方解説



温病初期の代表的な処方が、銀翹散です。清代の呉(ご)鞠通(きくつう)の『温病条弁』に「・・・ただ悪熱し、悪寒せずして渇する者、辛涼平剤、銀翹散之を主る」とあります。

表3



温病の特徴は、前出のように、口が渇き、のどが痛み、さむけがなく、舌先が赤くなることです。銀翹散は、秋に多用する処方といえます。
 

  表4

■秋に悪化しやすい大腸の症状



秋は、実は痔の悪化しやすい季節でもあります。「大腸-辛」の関係が示すとおり、痔はお血があり、便秘がちな人がなりやすく、この時期に、お血になりやすい食品と、辛い物を摂り続けると、一気に悪化しかねません。辛い物を多食する習慣のある人はご注意下さい。
  表5


■乙字湯の処方解説



痔の代表的な処方は、江戸時代の名医原南陽(はらなんよう)の創作による「乙字湯」です。六味からなり、大黄・オウゴン・柴胡によって炎症を鎮め、当帰・甘草が体に陽気をめぐらし、当帰・升麻・柴胡の組み合わせで、沈滞した気を上昇させます(升提(しょうてい)作用)。大黄については、便秘のない人は注意が必要です。
 

表6


他にキュウ帰(きゅうき)膠(きょう)艾(がい)湯(とう)や補中益気湯なども頻用されますが、患者の体質の虚実を見きわめ、症状に応じて使い分けます。外用薬として、紫雲膏を用いてもよいでしょう。

お灸は痔疾に非常によく効きます。原南陽は「都(すべ)て痔には灸の効あるものなり。諸痔共に灸すべし」と奨励し、尾てい骨の先端の「長強(ちょうきょう)穴」や腰への灸を、乙字湯と併用しています。また、頭頂の「百会(ひゃくえ)穴」が特効穴であり、前腕内側の「孔最(こうさい)穴」も、痔全般に使用します。

イメージ図


<参考文献>
やさしい漢方入門、健友館、1995.
やさしい漢方ハンドブック、総合漢方研究会 、2002.
根本幸夫、根井養智:陰陽五行説-その発生と展開、薬業時報社、1991.
根本幸夫:漢方春夏秋冬、薬局新聞社、1995年.
長濱善夫:東洋医学概説、創元社、昭和63年.
呉鞠通:温病条弁、旋風出版社、1974年.
原南陽:叢桂亭医事小言、近世漢方医学書集成18、名著出版、昭和54年.
傷寒雑病論(二訂版)、東洋学術出版社、1990年.
入江靖二:図説深谷灸法、緑書房、昭和55年.



著者:小松一



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