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10.血圧異常|漢方歳時記

10.血圧異常|漢方歳時記

2011年01月25日 (火) 09時00分配信 投稿日:11/01/25 09:00 icon_view 502view

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■血圧異常に用いる漢方薬



年が改まり、いよいよ寒さも本格的になってきました。この時期、もっとも気をつけたいのが脳血管系・循環器系疾患です。

脳梗塞や脳出血などの大半は12月から2月に集中し、特に4,5日ほど冷え込みが続いた後に、多くなります。浴室やトイレなど温度差のある室内のほか、過度のストレスや疲労、睡眠不足、暴飲・暴食などの要因が加わると、リスクはさらに増加します。予防のためには生活を節制し、室温が極端に変わらないよう気を配ることが大切です。

また冷え性、貧血、低血圧などの症状も 悪化しやすく、女性にとってつらい季節でもあります。
 

■高血圧の体質による分類と処方



漢方では、高血圧症について気・血・水の3つの体質に分けて考えます。

「気」はストレス型といえます。些細な出来事が起こるたびにショックを受け、血圧の変動につながりやすい「過敏型」と、ストレスを抱えこんでしまうと、なかなか発散することができない「溜めこみ型」の二つに分けられます。後者は血圧が下がりにくく、しばしば不眠、動悸、イライラ、不安などの精神症状を伴います。処方では、どちらの場合にも柴胡加竜骨牡蛎湯や、桂枝加竜骨牡蛎湯など、竜骨や牡蛎の配合されたものを主に用います。

「血」の場合は「本態性高血圧症」と診断されるものです。瘀血証で、頭痛、肩こり、目の充血、のぼせなどの症状を呈し、これに便秘が加わるとさらに悪化します。この場合、瀉心湯、黄連解毒湯、桃核承気湯、防風通聖散など、駆瘀血と清熱を兼ねた処方を用いるとよいでしょう。

「水」は 「腎性高血圧」と診断され、腎機能の異常から起こるために、むしろ腎機能の調整を主眼とするタイプです。五苓散や八味丸、小青竜湯、当帰芍薬散などがよく用いられます。


■血圧異常の処方解説



1)瀉心湯(三黄瀉心湯)

出典は『金匱要略』で「心気不足、吐血衄血するは、瀉心湯之を主る」、「婦人涎沫(ぜんまつ)を吐し、医反(かえ)って之を下す。心下即ち痞(ひ)す。まさに先ず其の涎沫を吐すを治すべし。小青龍湯之を主る。涎沫止めば乃ち痞を治す。瀉心湯之を主る」とあり、『類聚方』には「心気不定、心下痞、之を按じて濡(なん)の者を治す」とあります。
 

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尾台榕堂の『類聚方広義』の頭註に記載されている「酒客(酒飲み)、鬱熱下血する者。腸痔(ちょうじ)(痔核で痛み出血)、腰痛下血する者。痘瘡(とうそう)、熱気熾(し)盛(熱が盛んなさま)、七孔出血する者。産前後、血暈鬱冒、或は狂の如き者。眼目(きん)痛(灼けるような痛み)、赤脈怒張、面熱酔の如き者。齲歯疼痛、歯縫出血、口舌腐爛、唇風(しんふう)(脱性唇炎)、走馬疳(そうばかん)(口腔癌の類)、喉痹(こうひ)焮熱腫痛、重舌(じゅうぜつ)、痰胞(たんほう)(舌下膿腫)、語言すること能はざる者。癰疔(ようちょう)内攻、胸膈冤(えん)熱、心気恍惚の者。発狂、眼光熒熒(けいけい)(灯火の燃えるさま)、倨傲(きょごう)(おごりたかぶる)妄語、昼夜牀に就かざる者。以上の諸症、心下痞、心煩悸の症有り」を治療目標として使用します。

具体的には、脳出血、脳出血による麻痺、言語障害、高血圧症、ノイローゼ、不眠、めまい、耳鳴り,肩こり、頭痛、のぼせ、吐血、鼻血、眼底出血、歯痛、口内炎、蕁麻疹、打撲、便秘、二日酔い等に応用されます。

2)釣藤散(ちょうとうさん)
宋の許叔微(きょ しゅくび)が記した『普済本事方(ふさいほんじほう)(本事方)』第二巻、頭痛頭暈(ずうん)方の一つに「肝厥(かんけつ)頭暈を治し、頭目を清す。釣藤散」とあります。肝気の逆流によるめまい、頭痛を鎮める良方です。
 

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一般に下実上虚で、上衝の激しい頭痛やめまいに用います。のぼせが強く、朝や午前中に血圧が上がり、頭痛、めまいがあることを目標にします。神経過敏で血圧が上がりやすいタイプや、拡張期の血圧が高いものにも効果があります。


3)当帰芍薬散

『金匱要略』に「婦人懐妊、腹中㽲痛(こうつう)(絞るような痛み)するは、当帰芍薬散之を主る」とあり、妊娠中の常用薬とされています。また「婦人腹中諸疾痛するは、当帰芍薬散之を主る」として、生理痛などに頻用されます。
 

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血虚に用いる生薬と、利水作用のある生薬、両方の組み合わせからなります。血虚による冷え、貧血、腹痛、筋肉がゆるみ、色白く、体がだるい等の症状を、当帰・川芎・芍薬によって血を補い、温めて巡りを良くし、痛みを止め、浮腫については沢瀉・茯苓・朮によって、水分の代謝を改善します。

この処方は、月経痛、月経不順、不妊症、貧血、低血圧、ダイエット後の無月経、冷え症、出血過多、脱肛、腎炎、慢性勝胱炎などにも応用されます。

4)その他
血圧異常、冷え性には、鍼灸治療も有効です。特に、高血圧、脳卒中の予防、及び治療には、刺絡(しらく)療法が奏功し、卒中の救急時に施術を行うと、予後は大変よくなります。冷え性にはお灸が最適ですが、これらの治療法については別の機会に紹介します。


<参考文献>
やさしい漢方入門、健友館、1995.
やさしい漢方ハンドブック、総合漢方研究会、2002.
根本幸夫:漢方春夏秋冬、薬局新聞社、1995年.
宋版傷寒雑病論(二訂版)、東洋学術出版社、1990年.
矢数道明:臨床応用漢方処方解説(増補改訂版)、創元社、1989年.
許叔微:普済本事方、新文豊出版公司、1987年.
漢方210処方生薬解説、じほう、平成13年.
荒木正胤:漢方養生談、大法輪閣、昭和39年.
吉益東洞:類聚方、近世漢方医学書集成12、名著出版、昭和55年.



著者:小松一



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高血圧に関するまとめ(ココヤク)
漢方薬の効果的な飲み方、飲みやすい方法などあれば教えて下さい!
漢方薬のメーカーによる効果の違いは、どれくらいあるのでしょうか?

Good7

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