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13.十干|漢方歳時記

13.十干|漢方歳時記

2011年10月25日 (火) 17時00分配信 投稿日:11/10/25 17:00 icon_view 323view

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半年ほどお休みしていた漢方歳時記ですが、今月から再開することになりました。今期は、各月の「数字」をテーマにお話ししようと思います。たとえば、今月は10月ですから、「十」に関連した漢方の話題という次第で、一年間お付き合い下さい。
 

1.十干

十干(じっかん)とは「甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸」の10種類をいいます。中国の殷の時代から、10日ごとに循環する日を表示する数詞として用いられてきました。周の時代になると十二支と組み合わされ、年と日を表すようになりました。漢代に五行説と結合し、十干は二つずつ「木火土金水」に配当され、それぞれ陽(())、陰(())に分けられました。たとえば「甲、乙」は木に属しますので「きのえ、きのと」とよびます。
 

表1

漢方処方には、十干にちなむ名前がいくつかあります。原南陽(はらなんよう)の『叢桂亭医事小言(そうけいていいじしょうげん)』には、甲字湯、乙字湯、丙字湯、丁字湯の4処方の記載があります。中でも秋に悪化しやすい痔の繁用処方、「乙字湯」が有名です。
原文では「痔疾、脱肛痛楚(つうそ)(痛み苦しむこと)、或いは下血腸風(ちょうふう)(腸炎・出血性大腸炎や血便)、或いは前陰痒痛する者を理する(整える)方。柴胡・黄ゴン各7分、升麻・大黄各4分、甘草3分、大棗4分、生姜2分」とあります。
原方は原南陽の七味ですが、エキス剤など現在の乙字湯は、浅田宗伯(あさだそうはく)の配合を用います。『勿誤薬室方函(ふつごやくしつほうかん)』に「柴胡、大黄、升麻、黄ゴン、甘草、当帰。右六味、もと大棗有り。今、当帰を以て代える。更に効あり」と書かれているように、六味からなり、大黄・黄ゴン・柴胡によって炎症を鎮め、当帰・甘草が体に陽気をめぐらし、当帰・升麻・柴胡の組み合わせで、沈滞した気を上昇させます(升提(しょうてい)作用)。大黄については、便秘のない人は注意が必要です。なお、『勿誤薬室方函口訣』には、「此の方、甘草を多量せざれば効なし」との指示があります。
 

表2

「甲字湯」は、オ血を理する方として、茯苓、桃仁、芍薬各7分、牡丹皮4分、桂枝6分、甘草、生姜各2分で構成されています。桂枝茯苓丸の加味方と見なすことができます。「婦人病は、オ血に属する者が八から九割である。経閉、腰脊から足にかけて引き攣れ、新旧の腹痛、或いは天気によって、時々首肩が強ばって頭痛がし、寄生虫病でない者は皆オ血に属す」「産後の小便不利や浮腫などでオ血に属する者には有効である」と説明しています。

「丙字湯」は、甘草6分、山梔子4分、沢瀉2分、当帰、地黄、滑石、黄ゴン各5分で構成されており、「諸淋を理する方」と記載されています。

「丁字湯」は、生薬の「丁子」と混同して「ちょうじとう」と読みそうになるのですが、十干の4番目ですので「ていじとう」と読みます。
ヘキ嚢(へきのう)病(胃拡張,胃下垂などの症)、旧腹痛、宿水(しゅくすい)(水分の代謝障害により胃に水が溜まること)を吐し、食を得れば通劇、ソウ雑(そうざつ)(胸やけ)・アイ気(あいき)(ゲップ)、酸臭鼻を衝き、昏暮に至って終日食する所の者を吐し、吐後痛失するがごとく、次日又前状を作す者を理する方。牡蛎1銭6分、茯苓1銭2分、呉茱萸8分、橘皮4分、朮・枳実各6分、甘草・生姜各2分、人参3分」と述べられています。


2.十味敗毒湯

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、アレルギー性皮膚炎や、蕁麻疹などの皮膚病に頻用されます。表の熱証または表の湿証による化膿傾向、激しい掻痒感、身疼痛、濃厚な膿汁等のあるもの、或いは、湿証の化膿の初期から中期にも用いられます。大きく、皮膚面に赤く隆起している蕁麻疹には効果があると言われますが、進行して陰証に陥ったものや、小さく、色が皮膚面と同じであるか、それよりも蒼く見えるようなものには用いられません。

この処方は、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)から、前胡・羌活・薄荷・連翹・枳殻(きこく)・金銀花を除き、桜皮を加えたものであり、その基になったのは『小児薬証直訣(しょうにやくしょうちょっけつ)』の人参敗毒散と言われます。

表3


浅田宗伯(あさだそうはく)は「化膿性の腫瘍など種々の腫れもの、初期の悪寒や高熱、疼痛を治す。柴胡、独活、桔梗、川キュウ、甘草、荊芥、防風、桜皮、茯苓、生姜。右十味。撲ソクを桜皮の代用にする」「華岡青洲が荊防排毒散を取捨したもので、それより効力が優れている」と述べています。 急慢性鼻炎・外耳炎・乳腺炎・湿疹・蕁麻疹・アトピー性皮膚炎・花粉症・水虫・面疔などに応用されます。



<参考文献>

原南陽:叢桂亭医事小言、近世漢方医学書集成18、名著出版、昭和54年.
やさしい漢方入門、健友館、1995.
やさしい漢方ハンドブック、総合漢方研究会 、2002.
根本幸夫、根井養智:陰陽五行説-その発生と展開、薬業時報社、1991.
根本幸夫:漢方春夏秋冬、薬局新聞社、1995年.
長濱善夫:東洋医学概説、創元社、昭和63年.
傷寒雑病論(二訂版)、東洋学術出版社、1990年.
漢方210処方生薬解説、じほう、pp. 199、2001.
浅田宗伯:勿誤薬室方函、近世漢方医学書集成95、名著出版、昭和57年.
浅田宗伯:勿誤薬室方函口訣、近世漢方医学書集成96、名著出版、昭和57年.
華岡青洲:瘍科方筌、近世漢方医学書集成29、名著出版、昭和55年.



著者:小松一



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