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16.国試解説|漢方歳時記

16.国試解説|漢方歳時記

2012年05月14日 (月) 09時00分配信 投稿日:12/05/14 09:00 icon_view 754view

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今年3月、6年制薬学部になってから初めての薬剤師国家試験が行われました。今回は、この第97回国家試験で出題された、漢方の問題について検証します。

今回出題された処方は、次の3つです。
問214‐215 麻黄湯、小青竜湯
問307 葛根湯
麻黄、甘草を含む処方で『傷寒論』や『金匱要略』に記載されており、いずれも使用頻度の高いものです。これら3処方の使用法、使用上の注意、配合される麻黄と甘草の副作用を確認する問題となっています。



問214‐215
医師から、感冒の患者に麻黄湯、小青竜湯を処方する際にどのような点に注意すべきか確認したい旨の問い合わせがあった。

問214 医師に伝えるべき注意点として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 下痢、軟便のある患者の場合、症状を悪化させることがある。
2 モノアミン酸化酵素阻害剤やカテコールアミン製剤との併用により、神経刺激作用が増強され、不眠や発汗過多になることがある。
3 炎症性疾患の患者では症状を悪化させることがある。
4 肝硬変又は肝癌の患者には使用禁忌である。
5 ループ系利尿薬やチアジド系利尿薬との併用により、低K+血症が増強されることがある。


解説

問214は、生薬の副作用に関する設問と解釈すると、1:大黄(センノシド類)、2:麻黄(エフェドリン)、3:附子(アコニチン)、4:柴胡(サイコサポニン類)、5:甘草(グリチルリチン酸)の副作用や禁忌に関する記述と考えられます。
麻黄湯は、麻黄・杏仁・桂枝・甘草の4味、小青竜湯は、半夏・麻黄・芍薬・桂枝・細辛・乾姜・甘草・五味子の7味で構成されています。したがって両処方に配合されている麻黄の副作用「2」と甘草の副作用「5」が正答となります。

しかし、臨床上の観点からこの問題を検証すると、『傷寒論』弁不可発汗病脈証并治篇に「下利、発汗すべからず。汗出れば必ず脹満す」とあるように、下痢をしている状態では発汗剤を使用してはいけないとの注意が記されています。麻黄湯は太陽病に用いる発汗剤であるため、下痢や軟便により津液(体内の正常な水分)が足りない状態において、さらに麻黄湯で発汗させると、さらなる津液不足をきたし、症状の悪化(壊病(えびょう))を引き起こすことになります。よって、選択肢「1」は正解となります。

一般的に下痢や軟便、特に水瀉性の下痢(清穀下利)のある感冒の場合は、古方では陰虚証と考え真武湯などを考慮した方がよいと思います。陽病の場合、すなわち太陽と陽明の合病で自下利するようなケースには、葛根湯を用いますので、下痢の状態などをよく吟味してフィードバックします。

次に、選択肢「3」のケースですが、炎症性疾患がどの部位を指すのかよくわかりませんが、例えば、感冒で咽喉の炎症が有る場合、麦門冬湯などの滋潤剤を用いたり、或いは発熱しても悪寒がないケースであれば「温病」ですので、麻黄湯のような辛温発表剤ではなく、銀翹散のような辛涼発表剤を選択します。

出題者の意図としては、「生薬の副作用で、2,5を選択する」だと思いますが、以上の理由により、漢方の臨床的には「1,3」のケースでも注意する必要があると考えられます。



問215 問214の根拠となる配合生薬中の成分はどれか。2つ選べ。
1 グリチルリチン酸
2 サイコサポニン類
3 アコニチン
4 l-エフェドリン
5 センノシド類

解説
1:甘草、2:柴胡、3:附子、4:麻黄、5:大黄の主成分です。従って、麻黄湯と小青竜湯の両処方に配合されている甘草の成分「1」と麻黄の成分「4」とが正答となります。



問307
かぜ症状を訴えて薬局を訪れた来局者に、薬局製剤の葛根湯を販売することとなった。来局者への説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 胃の弱い人でも安心して服用できる。
2 インターフェロン製剤との併用は禁忌である。
3 頭痛や肩こりにも効果がある。
4 食前又は食間に服用する。

解説
この設問は、葛根湯の効能・効果、および問214や215と同様に麻黄含有成分エフェドリンの副作用の注意を促すものと解釈します。

「1」:添付文書の【使用上の注意】には、1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)(1)病後の衰弱期、著しく体力の衰えている患者[副作用があらわれやすくなり、その症状が増強されるおそれがある。](2)著しく胃腸の虚弱な患者[食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等があらわれることがある。](3)食欲不振、悪心、嘔吐のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]・・・と記載されています。このことから、不適切です。
「2」:小柴胡湯などの柴胡剤に関する事項です。特にインターフェロン製剤との併用は禁忌ではないので、不適切
「3」:『傷寒論』太陽病篇には、「太陽病、項背強ばること几几(しゅしゅ)、汗無く悪風する者、葛根湯 (これ)を主る」と記載されており、太陽病、すなわち感冒などの初期で頭痛、発熱、悪寒があり、首や肩がこわばった状態に用います。従って、適切
「4」:【用法及び用量】として、「通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する」とあるので、設問上は「適切」

しかし、使用上の注意の(3)食欲不振、悪心、嘔吐のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]のとおり、実際に食前や食間の空腹時に服用すると、胃腸が弱くない人でも、麻黄(エフェドリン)の作用で食欲の減退や悪心、嘔吐などを来すことが多々あります。

この場合、半夏を加味して葛根加半夏湯とするか或は半夏を含む処方、例えば、小半夏加茯苓湯や半夏厚朴湯などを合方して用いる方がよいです。または食後に服用するように指導するのがよいでしょう。

また、『傷寒論』葛根湯条に、服用法として、桂枝湯と同様の将息および禁忌、すなわち「一服して汗が出れば病は治るので、薬が余っていてもそれ以上は服用しないこと。しかし、汗が出ないようであれば更に前法にならって服用せよ。それでも汗が出なければ、半日で1日分を服用する。重症の場合、病状を観察しながらどんどん飲む。1日分を飲み終わってもまだ病症があれば更に作って服す。汗が出なければ、1日の服用量が2,3日分になることもある。生ものや冷たい物などは避けよ」との指示があります。
このように、風邪初期には、葛根湯を煎じて経過を観察しながら約2時間おきに、汗が出るまで服用するので、漢方の臨床上「4」が適切とはいいがたいところです。

以上の理由により「3,4」、あるいは「」のみでも正答ではないかと思います。



今後の国家試験対策

1.今回は、麻黄や甘草の副作用について問われましたが、それ以外の附子、大黄、柴胡剤の副作用に関する問題が出る可能性があります。
2.漢方の得意とする分野、特に婦人科系や皮膚疾患に用いる重要処方は覚えておいた方がよいと思います。
3.医療機関では、抑肝散、釣藤散、大建中湯、補中益気湯などがよく使用されているようですから、このような処方はピンポイントで覚えておくと良いでしょう。


<参考文献>
傷寒雑病論(二訂版)、東洋学術出版社、1990年.
尾台榕堂:類聚方広義(第三版)、燎原書店、1988年.
医薬品医療機器情報提供ホームページ、http://www.info.pmda.go.jp/


著者:小松一

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