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21.十全大補湯|漢方歳時記

21.十全大補湯|漢方歳時記

2012年10月25日 (木) 09時00分配信 投稿日:12/10/25 09:00 icon_view 265view

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今回は、十全大補湯について解説します。

十全大補湯は、現在頻用される処方の一つです。「十全」とは、1.欠点がないこと。完全であること、またそのさま。万全。2.全く危険がないこと。最も安全なこと、またそのさま。という2つの意味があり、随筆・孔雀楼筆記に「脾胃弱き人は、損じたる物を食へば病を生ず。即座に拝味せば十全なるぞ」と、『日本国語大辞典』に記載されています。

本方は、婦人の聖薬といわれる四物湯(川キュウ・地黄・当帰・芍薬)と、四君子湯(人参・茯苓・白朮・甘草)の合方である「八珍湯」に桂皮と黄耆を加味したもので、この「十味が全うして、よく虚を補う」ことから名付けられました。また、「気血陰陽、表裏内外共に補わないものはなく、十全の効能がある」からともいわれています。

浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』には、「此の方、局方の主治によれば、気血虚すと云うが八珍湯の目的にて、と云うが黄耆肉桂の目的なり。又、下元気衰うと云うも肉桂の目的なり。又、薛立齋の主治によれば、黄耆を用いるは人参に力を合わせて自汗盗汗を止め、表気を固むるの意なり。肉桂を用いるは、参耆に力を合わせて遺精白濁或いは大便滑泄、小便短少或いは頻数なるを治す。又、九味の薬を引導してそれぞれの病処に達するの意なり。いずれも此の意を合点して諸病に運用すべし」とあり、黄耆と桂皮の作用をよくあらわしています。
 

図


十全大補湯の主治として、『和剤局方』には、「男子、婦人の諸虚不足、五労七傷、飲食進まず、久しく病んで虚損し、時に潮熱を発し、気は骨脊を攻め、拘急疼痛、夜夢遺精、面色萎黄、脚膝無力、一切病後、気 旧にしかず、憂愁思慮、血気を傷動し、喘嗽中満、脾胃の気弱く、五心煩悶するを治す。并に皆之を治す。この薬性温にして熱せず、平補にして効有り、気を養い神を育み、脾を醒まし渇を止め、正を順らし邪を辟き、脾腎を温暖し、其の効具に述ぶべからず」と記載されています。
また、浅田宗伯の『勿誤薬室方函』にも同様に、「男子婦人、諸虚不足、五労七傷、一切病後、気 旧にしかず。即ち千金の黄耆茯苓(湯)」とあります。したがって、虚証で、全身の衰弱が甚だしく、胃腸の働きも弱り、貧血で、皮膚は枯燥して熱状の無いものを目標として、貧血、産後や手術後の衰弱、瘰癧、白血病、諸出血、脱肛、種々の癌などに応用されます。

応用例1
十全大補湯には、補気・補血・強壮の効能があるため、白血球や赤血球など血液成分を補い、免疫力を上げる作用を有します。種々の癌に用いることができますが、特に血液系統、子宮癌、乳癌などに効果的です。抗癌剤治療において、白血球が減りすぎる場合や貧血症状を伴う場合にも応用されます。

応用例2
低血圧・貧血・冷え性は、いずれも血行不良で血液成分が薄く、疲れやすい、朝起きづらい、体が冷える、寝つきが悪いなど、症状も同じような傾向があります。低血圧の原因としては、1. 婦人科系の働きが悪い 2. 胃腸虚弱 3. 血虚で全体に気力不足 4. 水分代謝が悪く水滞があるというように大まかに4つに分けられますが、十全大補湯が奏効するのは、血虚で全体に気力が不足しているすなわち気血両虚の場合です。
貧血気味(血虚)で気力が不足しているため、精気がなく、顔色も青黒くなります。また、疲れやすく、熱が出やすく、熱が出るとなかなか治らず、出血すると止まりにくいタイプに用います。再生不良性貧血、白血病、血友病、紫斑病、悪性貧血など、血液そのものに問題があるケースにも使用されます。


<参考文献>
日本国語大辞典、小学館、1972.
漢方薬膳学、万来舎、2012.
矢数道明:臨床応用漢方処方解説、創元社、1997.
太平恵民和剤局方、人民衛生出版社、1985.
矢数道明:漢方後世要方解説、医道の日本社、平成3年.
近世漢方医学書集成95、浅田宗伯、勿誤薬室方函、昭和57年.
近世漢方医学書集成96、浅田宗伯、勿誤薬室方函口訣、昭和57年.
太平恵民和剤局方、人民衛生出版社、1985.


著者:小松一




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