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32.風邪対策(3)|漢方歳時記

32.風邪対策(3)|漢方歳時記

2013年12月24日 (火) 08時00分配信 投稿日:13/12/24 08:00 icon_view 306view

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これまでに風邪の初期には、桂枝湯や葛根湯、銀翹散などがよく用いられることを説明しました。今回は、さらに風邪が長引いたときに用いられる小柴胡湯について説明します。

風邪をひいて数日、熱は下がったものの微熱があって、ぐずぐずする状態になると、食欲は減退し、口が苦くなり、のどが乾き、めまいがしたりするようになります。舌は白苔となり、鼻水が水っぽい透明なものから色のついた粘っこいものへと変化してきます。この時期を太陽病に対して少陽病といい、用いられる代表的な処方が小柴胡湯です。

小柴胡湯
『傷寒論』太陽病篇に、「傷寒五六日、中風、往来寒熱、胸脇苦満、嘿嘿(もくもく)として飲食を欲せず、心煩喜嘔、或は胸中煩して嘔せず、或は渇し、或は腹中痛み、或は胸下痞硬し、或は心下悸し、小便不利、或は渇せず、身に微熱有り、或は欬(がい)する者、小柴胡湯之を主る」とあります。この条文の中で、1.往来寒熱、2.胸脇苦満、3.嘿嘿として飲食を欲せず(食欲不振)、4.心煩喜嘔、の4つは小柴胡湯の正証といわれ、どれか一つ該当すればこの方を用いてよいと言われています。

<近世漢方医学書集成・腹証奇覧、名著出版より>


また、「病を得て六七日、脈遅浮弱、悪風寒、手足温、医二三之を下し、食すること能わずして脇下満痛し、面目及び身黄、頸項強ばり、小便難の者、柴胡湯を与う。後必ず下重す」、「傷寒四五日、身熱、悪風、頸項強ばり、胸下満、手足温にして渇する者、小柴胡湯之を主る」、「傷寒、陽脈しょく、陰脈弦、法まさに腹中急痛すべし。先ず小建中湯を与う。差えざる者、小柴胡湯之を主る」、「婦人中風、七八日、続いて寒熱を得て、発作時に有り、経水適断つ者、此れ熱血室に入ると為す。其の血必ず結す。故に瘧状の如く、発作時に有らしむ。小柴胡湯之を主る」とあります。
陽明病篇には、「陽明病、潮熱を発し、大便溏、小便自ら可、胸脇満去らざる者、小柴胡湯を与う」、「陽明病、脇下鞕満(きょうかこうまん)、大便せずして嘔し、舌上白苔の者、小柴胡湯を与うべし」 

少陽病篇には、「本太陽病解せず、少陽に転入する者、脇下鞕満(きょうかこうまん)、乾嘔して食すること能はず、往来寒熱、尚未だ吐下し、脈沈緊の者、小柴胡湯を与う」 

厥陰病篇には、「嘔して発熱する者、小柴胡湯之を主る」
陰陽易差後労復病篇には、「傷寒()えて以後、更に発熱するは、小柴胡湯之を主る」
『金匱要略』嘔吐(えつ)下利病篇に、「嘔して発熱する者、小柴胡湯之を主る」(厥陰病篇と同じ)
婦人雑病篇に、「四肢煩熱に苦しみ、頭痛する者、小柴胡湯を与う」と、大変多くの条文が記載されています。

以上のことから、
1. 風邪や麻疹などの急性熱性病で、発熱してから数日経過して、往来寒熱、口が苦い、食欲不振、胸脇苦満、咳、舌白苔などがある場合。
2. 気管支炎、肺炎、喘息などの脇部疾患。
3. 肝炎、胆嚢炎、胆石など、及び胃炎、胃潰瘍、嘔吐、便秘などの消化器系疾患。
4. 肩こり、円形脱毛症、耳下腺炎、扁桃炎、中耳炎など。
5. 腎炎、腎盂炎、睾丸炎、陰部瘙痒症などの泌尿器系疾患。
6. 神経衰弱、精神分裂症、不眠、ノイローゼ、癲癎(てんかん)などの神経性疾患、血の道症など、種々の疾患に広く用いられます。

小柴胡湯は、以下の七味で構成されています。小柴胡湯という名前のとおり、柴胡が君薬となります。柴胡は黄ごんとともに胸脇部の清熱、消炎、疏通をはかります。半夏と生姜の組み合わせは嘔を止め、生姜以下の四味は、胃腸の働きを助けて季肋部を緩める作用があります。
 


 

小柴胡湯の合方

小柴胡湯は、しばしば加減したり他の処方と合方して用いられます。合方による代表的な処方を紹介します。

1.柴胡桂枝湯は、小柴胡湯合桂枝湯で、小柴胡湯証に表証を兼ねた者に用います。主に感冒・肺炎などの熱性疾患のほか、胃潰瘍や十二指腸潰瘍・肝炎・膵炎など季肋部から心下部の疼痛、及び頭痛、神経衰弱・不眠・ヒステリーなどの神経症にも応用されます。

2.柴朴湯は、小柴胡湯合半夏厚朴湯で、神経衰弱、ノイローゼ、慢性の気管支炎や感冒で、咳のある場合などに用いられます。

3.柴苓湯は、小柴胡湯合五苓散で、下痢、のどの渇き、暑いときの種々の疾患に多く用いられます。また、腎炎、ネフローゼなどにも応用されます。

4.柴陥湯は、小柴胡湯合小陥胸湯で、肋膜炎などに応用されます。


<参考文献>
根本幸夫:漢方春夏秋冬、薬局新聞社、1995年.
やさしい漢方ハンドブック、総合漢方研究会編、平成14年.
宋版傷寒雑病論(二訂版)、東洋学術出版社、1990年.
尾台榕堂:類聚方広義(第三版)、燎原書店、1988年.
やさしい漢方入門、総合漢方研究会編、健友館、1995年.
矢数道明:臨床応用漢方処方解説、創元社、1997.
漢方薬膳学、横浜薬科大学編、万来舎、2012.
近世漢方医学書集成、腹証奇覧、名著出版、昭和56年.

この記事について/著者:小松一



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