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6.五臓の働きと病証|漢方歳時記

6.五臓の働きと病証|漢方歳時記

2010年09月17日 (金) 09時00分配信 投稿日:10/09/17 09:00 icon_view 724view

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■五臓五腑



漢方でいう臓腑は、内臓の諸器官を総称したものです。内臓を「五臓五腑」という器官に集約させ、そこに心身の機能を便宜的に結びつけ、表現しています。



五臓五腑では、肝・胆は木、心・小腸は火、脾・胃は土、肺・大腸は金、腎・膀胱は水に属します。

臓腑名には、西洋医学の解剖名が用いられ、その内容は共通する部分もありますが、異なる部分も多く、全てが同じわけではありません。

五臓
「五臓」の概念は、解剖に基礎をおきながら、後述の通り、反応や治療効果から想定される感覚的な概念を含みます。

『 素問 ( そもん ) 』 金匱真言論 ( きんきしんげんろん ) に「臓腑中の陰陽を言えば、即ち蔵を陰となし、腑を陽となす」とあるように、「臓(蔵)」は、体のより深い所にあり、精力や活力を化生貯蔵する器官です。中が充実した実質性臓器で、物が入らないために「陰」とします。

五腑
「五腑」は、ほぼ現代医学の用語と同義に用いられます。体の表面近くにあり、栄養源となる食物を集め、消化する諸器官をさし、主に運搬、伝導、排泄をおこないます。管や袋の形をした中空状臓器で、物を十分に詰め込めるため「陽」とします。

その他の臓器
五臓五腑に当てはまらないものとして、脳、髄、骨、脈、胆、女子胞(子宮)を「 奇恒の腑 ( きこうのふ ) 」といいます(『素問』五蔵別論)。胆は五腑にもありますが、その働きの違いによって区別しているようです。

■五臓の働きと病証



1.肝


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「肝」は、五行では木に属する臓で、『素問』 霊蘭秘典論 ( れいらんひてんろん ) に、「将軍の官、謀慮出ず」と記されているように、全ての臓器を統括する器官とされます。

外界からの傷害や、体内の有害物質を防御、排除し、また、精神情緒の活動を調節し、思考思索をめぐらす作用があります。そのため、肝に異常が生ずると、思 惟活動が鈍り、ぼんやりして無気力になったり、抑鬱状態となったり、怒りやすくなったりします。「怒りは肝を傷る」といわれるように、精神的にイライラ し、腹を立てることは、肝の作用と関係しています(五志)。

『霊枢』本神に「肝は血を蔵す」とあるように、血量の調節など、血液の状態と深く関わっています。肝血が不足すると、体内の血液の生理活動が損なわれ、狭心症、めまい、筋肉の痙攣等が生じます。また血液の貯蔵不足によって、血液の凝固機能が低下すると、喀血、 衄血 ( ぢくけつ ) などの出血を起こします。怒りによる吐血などには、肝の治療が不可欠です。

肝には、水分代謝を調節する作用もあるため、肝硬変などによって、門脈の循環障害が起きると、腹水を生じます。

肝は筋をつかさどり(『素問』陰陽応象大論)、腱や筋繊維、関節の運動を支配しています。そのため筋骨の痛み、ひきつれ、巻き舌、四肢の痙攣、麻痺、萎縮、陰嚢収縮などが、病変として現れます(五主、五病変)。

五竅では、肝は目に該当します。従って、肝が病むと、目が赤く腫れ、疼痛のある急性眼疾となったり、慢性的な目のかすみ、乾き、雀目、あるいは目がショボ ショボしたり、めまいを起こしたりします。目に症状がある場合は、肝の治療を重視しますが、目は心や腎とも深く関係しているため、これらの治療も併せて行 うとよいでしょう。

爪甲(五華)については、「爪は筋の余り」といわれるように、肝血が不足すると、爪甲は薄く柔らかく、色沢も淡白となり、爪甲の中間部に凹みが現れます。

五色では、肝は青色と関係し、顔色の青い人には、肝の症状が現れると考えられます。

経絡では、足の厥陰肝経が、生殖機能に関係するので、インポテンツや更年期の症状が現れます。その他、中年を過ぎ肝が虚すと、筋力の衰え、中風による半身不随、言語障害、筋萎縮性疾患などの症状が現れやすくなります。

2.心
循環器系と中枢神経系をつかさどる、肝と並んで最も重要な臓器です。血を全身に絶え間なく循環させる(五主)。意識を正常に保ち、精神活動を正常に行わせる。顔色を明るくし、つやを与える(五華)。舌の働きを維持する(五竅)。といった働きがあります。

心が病むと、動悸、息切れ、不整脈、健忘、下半身のむくみ、舌のもつれ、煩躁、不眠などの症状が現れます。


3.脾
一般的には膵臓をさし、胃と一対となって働きます。ただし現在の中国では、脾といえば脾臓を意味します。

飲食物を消化吸収し、後天の元気(生後の環境等で培われた生命力)を生成する。血液の循環を守る。筋肉を充実させ、腕や足を丈夫にする(五主)。唇の色を明るくし、つやを与える(五華)などの作用があります。

脾が病んだ時は、胃腸虚弱、軟便、下痢、腹脹、食欲不振、疲れやすい、手足が重くだるい、といった症状が現れます。


4.肺
呼吸器系の中枢です。呼吸を正常にさせる。脾と協力して、気や血を生成する。水分を全身にめぐらせ、汗で水分調節をする。皮膚や毛につやをもたせ、体表を防御する(五主、五華)。鼻やのどの働きを正常にさせるなどの作用があります。

肺の病証としては、疲れやすく声に力がない、息切れしやすい、のどや口の乾燥、咳、喘息、鼻づまりなどがあります。


5.腎
泌尿器系と生殖器系の機能をあわせ持っています。水分調節を行い、尿を生成する。先天の元気(持って生まれた生命力)を宿し、身体の成長、発育を順調に行 わせ、生殖機能を働かせる。骨や歯を丈夫にする(五主)。便通、排尿を調節する。耳を健康に保つ。髪の毛を丈夫に保つ(五華)。足腰を丈夫にするなどの働 きがあります。

腎が病むと、精力減退、インポテンツ、遺精、腰痛、膝痛、視力低下、抜け毛、難聴、耳鳴り、下半身の冷え、夜間頻尿、尿失禁、むくみなどの症状が現れます。


<参考文献>
やさしい漢方入門、健友館、1995.
やさしい漢方ハンドブック、総合漢方研究会 、2002.
根本幸夫、根井養智:陰陽五行説-その発生と展開、薬業時報社、1991.
長濱善夫:東洋医学概説、創元社、昭和63年.
素問・霊枢、日本経絡学会編、1992.


著者:小松一



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