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5.薬物乱用・依存の予防を考えるpart1

5.薬物乱用・依存の予防を考えるpart1

2009年10月16日 (金) 07時00分配信 投稿日:09/10/16 07:00 icon_view 321view

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■薬物乱用・依存の予防を考える-1



薬剤師のみなさん、こんにちは。
コラム「薬剤師のための薬物乱用・依存講座」にようこそ。

これまで、薬物乱用の先にある薬物依存について解説し、薬物依存が引き起こす様々な問題についてお話してきました。

今回から、薬物乱用・依存の予防について考えていきたいと思います。
 

■1.疾病予防の3段階



公衆衛生学や予防医学では、疾病の予防を3段階にわけて考えられます。

具体的には、一次予防、二次予防、三次予防と呼ばれ、それぞれの段階に適した予防手段がとられることになります。
下表に、各段階における予防の内容をまとめました。

image1
表1.疾病予防の3段階

では、薬物依存症の予防とはどのような内容になるでしょうか。

以下、具体的な取り組み例を交えて、薬物依存症の一次予防~三次予防について考えていきたいと思います。

■2.薬物依存症の一次予防



薬物依存症という疾病は、薬物乱用を繰り返すことにより生じた状態ですから、薬物依存症の一次予防の目的は、その原因となっている薬物乱用を予防することになります。
薬物乱用の1回目を防ぐことは、薬物依存症のスタート地点に注目した根本的な取り組みだと言えます。

薬物依存者の多くが、10代の思春期に薬物乱用を開始していますので、青少年を対象とする一次予防は、特に重要です。
具体的な取り組みとしては、教育機関における薬物乱用防止教室が代表的でしょう。

わが国の薬物乱用防止に関する施策である第三次薬物乱用防止五か年戦略(平成20年8月~)では、「すべての中学校・高等学校において、少なくとも年1回の薬物乱用防止教室を開催するよう指導する」とされており、文部科学省の調査によれば、平成16年度では、小学校の80%以上が、中学高校の90%が薬物乱用に関する指導を実施していると報告されています。

教育内容も、従来の「知識伝達型教育」や「脅し型教育」から、薬物乱用のきっかけとなるような要因を減らし、薬物乱用の誘いを断るスキルを養うといった実践的なライフスキル(Life skill)教育への関心が高まりつつあります 。
薬剤師が薬物乱用の予防に関わる機会が多いのも、この薬物乱用防止教室ですね。

例えば、学校薬剤師が外部講師として依頼を受けることがあります。
第三次薬物乱用防止五か年戦略の中では、薬物乱用防止教室の開催にあたっては、「警察職員、麻薬取締官OB、学校薬剤師等」の協力を得るように明記されています。
しかし、文部科学省の調査 によれば、小中高校の薬物乱用防止教室で学校薬剤師に講師を依頼しているケースは全体の20%に満たず、学校薬剤師の今後更なる活躍が期待されます。

教育現場以外では、地域における薬物乱用防止活動、メディアを通じた啓発活動などがこれに該当します。
より広い視点で捉えれば、薬物乱用を生み出さないような生活習慣や生活環境を整えていくことも一次予防と言えるでしょう。

image2
表2.薬物乱用防止教室で依頼している教師の職種

■3.あなたは、学校薬剤師ですか?



さて、あなたは現在、学校薬剤師として活躍されていますか?

学校保健法では、大学以外の学校には学校医、学校歯科医、学校薬剤師を置くことと定められています(学校保健法第16条)。
学校薬剤師の職務は、学校保健計画立案への参加、学校環境衛生に関する検査(例えば、飲料水、水泳プール水、排水、給食、照度、空気、騒音などが検査対象となります)および検査に基づく助言・指導、学校で使用する医薬品に関する助言・指導など多岐に渡ります(学校保健法施行規則第25条)。
近年では、これらの業務に加えて、薬物乱用防止教室の外部講師としての協力が求められるようになりました。

学校薬剤師の多くは、地域の薬局で働いている薬剤師であり、調剤業務や医薬品販売業を主とする通常業務とは、だいぶ異なる業務内容だと言えます。国際的にみても、この学校薬剤師(school pharmacist)という制度は、かなりユニークだと思いますし、薬剤師が地域保健活動の一端を担える魅力的な仕事だと思います。

学校薬剤師を担当されている先生方、これまでに薬物乱用防止教室の講師として学校から依頼を受けたことはありますか?
このコラムをご覧の先生方は、様々なお立場の方がいらっしゃるでしょうけど、当然、私なんかより、薬物乱用防止教育の経験の長いベテランの先生もいらっしゃるかと思います。

その一方で、今年から学校薬剤師をはじめられた先生は、「あ~残留塩素って何だっけ?」「ト、ト・・・トリハロメタン?なんだっけそれ?」「この検査機器どうやって使うんじゃぁ~~?」と、衛生検査に困窮されている先生もいらっしゃるでしょう。
そんな中で、学校から薬物乱用防止教室の講師として依頼されたら、「え?薬物乱用防止?私が話すの?どうしよう・・・何を話せばいいの??」とさらに困ってしまう先生もいらっしゃるかも知れません。

■4.学校薬剤師と薬物乱用防止教室



学校薬剤師を担当されている他の先生方は、薬物乱用防止教室をどのように実施しているのだろう?

私も以前は、学校薬剤師を担当しておりましたので、薬物乱用防止教室の取り組みの現状には関心があり、調べてみたいと思いました。そこで、文部科学省から研究費の助成 を受け、学校薬剤師の先生方を対象にアンケートを実施しました。

アンケートにお答えいただいたのは、A県の学校薬剤師会の研修会に参加された374名の学校薬剤師でした。ちなみにA県には約600名の学校薬剤師が登録されておりますので、半数以上の方をカバーできていることになります。

この374名の属性は、女性が59.2%と多く、平均年齢は55.9歳でした。担当されている学校は、小学校が81.4%と最も多く、中学校50.1%、高等学校24.1%、幼稚園23.6%、その他2.5%と続きました。
これは、お一人の学校薬剤師が複数の学校を担当されているケースもありますので、複数回答による結果になります。

374名中の219名(全体の59.5%)が、これまでに薬物乱用防止教室での講師経験がありました。この219名の方々に、講演で扱う内容について尋ねた結果を下図にまとめました(図1)。

薬物乱用防止教室とはいえ、喫煙や飲酒についてお話される場合が多いことがわかります(73.3%)。
思春期における喫煙や飲酒は、薬物乱用と密接な関連がありますので、喫煙・飲酒と薬物乱用を上手く結びつけてお話をされている先生方もいらっしゃるのではないかと感じました。

その一方で、薬物依存症についてのお話をされるのは約半数でした。
やはり、薬物乱用の先にある問題として、依存症について理解させることは重要だと思いますので、学校薬剤師の先生方に、薬物依存についての理解を深めていただけるように、我々も努力を続けていかなければと改めて感じました。

image3
図1.講演で扱う内容(複数回答)n=219

次に、講演以外で実践している取り組みについても伺ってみました。

パンフレットや薬物標本、ビデオなど様々な資材を活用されている回答がみられました。
その一方で、ロールプレイ(例えば、薬物乱用を誘う役と、断る役を決めて、断るトレーニングをするようなこと)、化学実験、グループディスカッションなどを取り入れていらっしゃる方もみられました。

image4
図2.講演以外で実践している取り組み(複数回答)n=219

■5.困っているのはあなただけじゃないかも



薬物乱用防止教室をまだ経験されていない先生方もいらっしゃいましたので、今後学講演の依頼があった場合を想定していただき、その依頼に対する考えを率直に伺いました。

全体の81.5%は、講演依頼を「受けたい」という回答でしたが、「断りたい」という回答も18.5%みられました。
講演を受けたいか?断りたいか?その背景には何があるのでしょうか。下の表をご覧ください。

image5

表3.薬物乱用薬物乱用防止の教室の講演依頼に対する態度とその背景(n=347)

データを眺めていただくと、どうやら、担当されている学校の種類では違いがないようです。
つまり、「高等学校を担当しているから」ですとか、「小学校の担当ではないから」というのが講演依頼の可否には関係していないことになります。

次に、講演経験のデータをご覧ください。
講演を受けたいと考えているグループでは、66.0%に講演経験があるのに対して、講演を断りたいと考えているグループでは、講演経験は22.7%のみです。つまり、講演を受けたいか、断りたいかの背景には、これまでの経験が関係している可能性が考えられます。

それは講演回数のデータをご覧いただいてもご理解いただけると思います。
講演を受けたいグループの経験回数は平均3.98回に対して、断りたいグループでは平均1.27回にとどまっています。
講演の準備度や、薬物乱用に関する知識や情報に関するデータも同様で、講演を受けたいグループの方が、準備も十分にできており、知識や情報も豊富に揃っていることになります。講演を受けたいと考えている人は、「経験も知識も豊富な人」ということになります。

これは、当たり前の結果と言われれば、その通りなのですが、実は大きな意味を持っています。
なぜなら、講演の場数を踏み、知識も情報も豊富な人たちは、「講演を受けたい」と積極的に考えているわけですから、現時点で「自信がない」、「上手くできるか不安だわ」、「情報や知識が不足している」と感じている人たちであっても、場数を踏み、知識や情報を蓄えることで、講演を積極的に引き受けられるようになる可能性を示唆しているからです。

困っているのは、あなただけじゃありません。周りにいる経験豊富な学校薬剤師を探して、お話を伺ってみるもの良いでしょう。
勇気を出して講演を引き受けてみましょう!

著者:嶋根卓也


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

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