運営からのお知らせ

新着記事・レポート

カテゴリーを選択

薬物乱用・依存講座

<<前の記事へ

次の記事へ>>

6.薬物乱用・依存の予防を考えるpart2

6.薬物乱用・依存の予防を考えるpart2

2009年11月16日 (月) 13時50分配信 投稿日:09/11/16 13:50 icon_view 250view

お気に入りに登録

お気に入りに登録

icon_view 250view

薬剤師のみなさん、こんにちは。コラム「薬剤師のための薬物乱用・依存講座」にようこそ。

今回は、児童・生徒を相手に薬物乱用防止の話をする際のポイントについてお話をしたいと思います。学校での薬物乱用防止教育を実践される際のヒントになれば幸いです。
 

■1.身近な問題だと感じてもらう-1



まず、全般的なことですが、薬物乱用防止教育というと薬物の害や、犯罪性のことばかりが強調されがちです。薬物乱用が心身に与える影響が重大なものであり、薬物乱用が犯罪であることは当然です。しかし、いきなりこの調子で子どもたちに語りかけても、あまりメッセージとして受け止めてもらえないと思います。

「あぁ、またドラッグの話し?そんなのダメなのはわかってるよ・・・うざいよね。」

まぁ、こんな態度をとられても仕方ありません。健康教育にはいろいろなモデルやアプローチがありますが、健康被害ばかりを強調したり、脅したりといった、いわゆる恐怖教育(Fear education)だけでは、人の行動をより健康的なものに変えていくためには、限界があるのではないでしょうか。
なぜなら、植え付けられる「恐怖」と、子どもたちの想像力との間に距離がありすぎるからだと思います。


■1.身近な問題だと感じてもらう-2



幻覚や妄想といった精神病のことを詳しく説明してもピンとこないでしょうし、タバコ吸い続けた肺の画像を見せても、「気持ちが悪い」とか「怖い」と感じさせる効果はあっても、それが自分たちの問題とは感じてもらえないのではないでしょうか。やはり、薬物乱用が自分たちの近くで起きている問題であることに気がついてもらうことが重要です。

「私とは関係ない話」「自分だけは大丈夫」などと考えている子は、実は危険な状態だと思います。なぜなら、思春期の子どもたちというのは、友達や先輩といった身近な人間関係からの影響を強く受ける時期です。あるいは、メディアの影響も受けやすいと言われています。
そのような時期にいる子どもたちの中で、例えば一人の子が薬物を使いはじめると、学校の友達や周囲の仲間に「こんなにいい物がある」とすすめることが良くあります。あるいは、「仲間外れにされたくないなら、一緒に使え」と迫ってくる場合もあるでしょう。今まで薬物のことなど考えたこともなかった子が、「あいつもやってるんだから、1回くらいは大丈夫だろう」と薬物を使いはじめてしまうわけです。

このように思春期における薬物乱用は、感染力の強い伝染病のごとく、一気に広がる可能性があります。
では、どういうメッセージを伝えれば、「身近な問題」として感じてもらえるのでしょうか。


■2.データに基づく実態を伝える



私は、薬物乱用の実態を伝える上で、いくつかのデータを使います。数字で客観的に示すことは、説得力のある方法ですが、情報量が多すぎると受け取る方が消化不良になってしまうので、そのあたりのバランスを考える必要があります。
ですから、提示するデータ必要最低限にとどめ、むしろその数字をわかりやすく伝えることが重要と考えています。例えば、実際にどのくらいの子どもたちが薬物乱用と関わりをもっているのか、といった実態を伝えるために、下記のようなデータを提示します。

ここで登場するデータは、兵庫教育大学教育・社会調査研究センターが実施した「高校生の喫煙、飲酒、薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国調査2006 」の中から大麻に関する実態をピックアップしました。
「身近に乱用者がいるか」、「誘われた経験があるか」、「実際に乱用経験があるか」という3つの側面から捉えたものです。


図1.高校生の大麻に関する実態(出典:勝野眞吾、他:高校生の喫煙、飲酒、薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国調査2006)

「大麻を吸ったことがある男子高校生は 0.8%」ですとか「女子高校生は0.5%」という割合を提示しても、なかなかイメージしにいくと思います。逆に、「なんだ、大麻やっているヤツって0.5%しかいないんだ、やっぱり自分とは関係ないや」とこちらの意図とは異なるイメージを持ってしまう恐れすらあります。
そこで、「125人に1人の割合」「200人に1人の割合」という表現を用いて説明するようにしています。

まぁ、実際は同じことなのですが、「125人に1人の割合」というと、生徒数が300人くらいの学校をイメージすれば、大麻の乱用経験がある生徒がその中に2~3人いても不思議ではない数字となります。
ちょっと詐欺(笑)みたいですけど、「なんだ、結構いるな」、「身近に迫ってきているんだな」と感じさせることが大切です。

このデータのような全国規模の実態調査は、報告書が公開されていますので、関心のある方は是非ご覧いただき、健康教育に活用されると良いと思います。
(※ただし、データを引用する際には、必ず出典を示してください。これは必ず守っていただきたいルールです。)

【全国調査の報告書】
・高校生の喫煙、飲酒、薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国調査2006(兵庫教育大学教育・社会調査研究センター)
・薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査(国立精神・神経センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)


■3.薬物乱用の先にあるものを理解させる



頭ごなしに「薬物乱用はダメ、ゼッタイ」と説いても、その効果には限界があると思います。「なぜ、ダメなのか」を理解させることが必要です。

しかし、「犯罪だからダメ」、「危険だからダメ」という説明では、やはり十分とは言えません。法律家や警察であれば、「犯罪モデル」として薬物乱用を捉え、子どもたちに伝える必要があるでしょうが、薬の専門家である薬剤師が話しをする場合は、やはり薬物の「依存性」を説明することが求められると思います。

以前のコラムでも書きましたが、私は薬物乱用問題の本態は「薬物依存」と考えています。薬物乱用者が、再使用を繰り返してしまうのは、薬物依存がベースとなっているからです。
薬物乱用を繰り返した先に「薬物依存」があるということをわかりやすく伝えてみましょう。薬物依存を理解させるには、サルの薬物自己投与実験を使うことも有効でしょうし、薬物依存症の当事者の手記などを利用するという手もあります。

例えば、当事者による薬物依存症のリハビリテーション施設であるダルクでは、様々な体験談や手記が販売されています。こういった書籍の中には、思春期にどういうきっかけで薬物乱用を始め、薬物にハマっていく様子が書かれているものもあります。
そして、薬物依存症がどのような病気で、そこから回復することがいかに困難であるかを理解することができるでしょう。実際の症例を提示しながら、薬物依存についての理解を深めることは薬物乱用防止教育で役に立つ方法でしょう。


■オススメの本を紹介



最近、私がお気に入りなのは、京都ダルクが出版している漫画です。
高校生が薬物に出会い、ハマっていく様子が分かりやすく描かれています。1冊210円(安っ!)ですし、是非一度読んでみてください。

『だからボクはダルクにいる―ドラッグなんていつでもやめられると思っていた―』
作画:榎 朗兆
編集:京都精華大学 事業推進室
発行者:NPO法人京都DARC
発行:2008年11月29日
A5 27p
定価:210円(本体:200円) 5000冊以上については1冊158円(本体:150円)

最後に、ダルク関連の書籍紹介をしているページをご案内します。
ご自身の薬物依存に対する理解を深める上でもいくつか目を通していただくことをオススメいたします。

◆京都ダルク
http://www.yo.rim.or.jp/~kyo-darc/book/book.htm
◆東京ダルク
http://tokyo-darc.org/shoseki.html

――――――――――――――――――――――
勝野眞吾、吉本佐雅子、三好美弘、他:高校生の喫煙、飲酒、薬物乱用の実態と生活習慣に関する全国調査2006.兵庫教育大学教育・社会調査研究センター報告書.2007

著者:嶋根卓也


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

Good4

コメントする

コメントする

コメント

回答:0件

記事・レポート(1389件)

show

2018.05.26 new がん薬物療法の進歩に期待される薬剤師の役割とは? 【特集記事】

2018.05.23 new 295.勤務する薬剤師の居場所を 【薬剤師業界のウラガワ】

2018.05.16 new 294.騒動の行方は。 【薬剤師業界のウラガワ】

2018.05.09 293.来場者が行動で示した潜在的関心 【薬剤師業界のウラガワ】

2018.05.03 99.サラリーマン薬剤師 【世塵・風塵】

もっと見る

業界ニュース(20698件)

show

アンケート

show
ただいま、募集中のアンケートはありません。

もっと見る

セミナー情報(19件)

show

ブログ(5333件)

show

求人情報

show

よく見られている
新着記事・レポートランキング 集計期間:05月20日~05月27日

もっと見る

よく見られている
薬剤師のQ&Aランキング 集計期間:05月20日~05月27日

もっと見る