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7.薬物乱用・依存の予防を考えるpart3

7.薬物乱用・依存の予防を考えるpart3

2010年01月25日 (月) 16時09分配信 投稿日:10/01/25 16:09 icon_view 341view

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■薬物乱用とアルコール



 薬剤師のみなさん、こんにちは。コラム「薬剤師のための薬物乱用・依存講座」にようこそ。今回のテーマは、若者におけるアルコールと薬物乱用です。

 わが国では、麻薬や覚せい剤に対しては極めて厳しい態度がとられる一方で、アルコールに対しては寛容な面があるように感じています。これまでお話ししたように、アルコールも依存性物質の一つですし、未成年者飲酒禁止法の観点からみれば、未成年者の飲酒も広義の薬物乱用となります。

小中学生を対象とする薬物乱用防止教室では、「薬物乱用」と看板を掲げていても、内容的には飲酒や喫煙について主たるテーマとして実施する場合があるようです。
青少年を飲酒や喫煙から守ることは、公衆衛生的な観点から極めて重要ですが、薬物乱用防止という目的から考えれば、単純に飲酒や喫煙による健康被害のみを伝えるだけでは十分とは言えないのではないでしょうか。

私は、薬物乱用との共通点や結びつきを挙げながら、薬物乱用に関連付けて理解させることが重要と考えています。そこで今回は、アルコールに注目して薬物乱用との関係について考えていきたいと思います。

下図は、薬物依存症者(民間リハビリテーション施設を利用する164名が調査対象)が各薬物を何歳から使い始めたのかを示したものですが、アルコールの開始年齢は平均14.4歳となります1)。つまり、中学校2年生くらいで飲酒を始めるパターンが多いことになります。では、実際の青少年でのアルコールの広がりはどのような状況なのでしょうか。

image2
図1.各薬物の開始年齢


■2.未成年者のアルコールの実態



厚生労働省の研究班では、1996年、2000年、2004年の3回に渡り、全国の中高生を対象とするモニタリング調査を実施しています2,3,4)。これらの調査によれば、アルコールを「飲まない」中高生は年々増加傾向にあります。
例えば飲酒頻度に関する項目に注目すると、この1年間に一度もアルコールを飲まなかった割合は、高校生男子では24.4%(1996年)、31.6%(2000年)、42.7%(2004年)と増加傾向にあり、高校生女子でも29.5%(1996年)、34.7%(2000年)、42.9%(2004年)と増加傾向がみられています。

 わが国の健康政策である健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)では、未成年者の飲酒をなくすことを目標に掲げており、現在、各地方自治体はこの目標に向かって様々な取り組みを実施しています5)。未成年者での飲酒が減りつつある背景には、こうした健康政策の策定や実施が影響しているほか、2001年の未成年者飲酒禁止法の改正により、種類販売の際に年齢確認などの措置を講じる旨が規定されたことも影響していると考えられます。
しかし、その一方で、高頻度に、大量に飲酒を行うような問題飲酒群に注目すると、男子では若干減少しているものの、女子では減少がみられないという報告もあります6)。つまり、全体のリスクは以前に比べると減少しているものの、リスクの高いグループではほとんど変化がないことがわかります。

 リスクの高い飲酒というと、イッキ飲みなどによる急性アルコール中毒の問題も忘れてはいけません。大学生などの若者の間での急性アルコール中毒が原因と考えられる死亡例は後を絶ちません。イッキ飲み防止連絡協議会が発行している「アルコール・ハラスメント『アルハラ110番』にみる被害の実態と対策」7)では、飲酒の強要などにより被害を受けた方々の実態が詳しく解説されていますので、ご関心のある方はぜひお読み下さい。
 

■3.暴飲(Binge drinking)とは?



 欧米では、若者の危険な飲酒行動を表す場合、”Binge drinking”(暴飲)という言葉がしばしば用いられます。Binge drinkingという言葉が研究で使われるようになったのは、ハーバード公衆衛生大学院によるCollege Alcohol Study(CAS,1994)の中で、健康面・安全面のリスクを伴う大量飲酒という意味を含む言葉として用いられるようになったのが出発点のようです8)。
 しかし、Binge drinkingの定義は未だ統一されておらず、研究により異なりますが、「1席においてx杯以上のアルコールを摂取する飲酒行動」のように、急性中毒につながるような危険行動として捉えられる場合が多いようです9)。

例えば、CASによる定義では、男性であれば「1席において5杯以上(女性の場合はエタノール代謝能や体重の性差を考慮して4杯以上)を立て続けに飲む行為が、過去2週間に最低1回みられること」をBinge drinkingとしています8,10,11)。Binge drinkingは、短期間に大量のアルコールを摂取するという点で、わが国の若者の間で問題となっている「イッキ飲み」もこのなかに含まれるとする意見もありますが、周囲の者が飲酒を煽ったり、飲酒を強要したりといった「ハラスメント」的な意味合いは含まれないようです12)。


■4.薬物乱用とアルコールとの関連



では、アルコールと薬物乱用との間にはどのような関連があるのでしょうか。国内の研究では、これまでにいくつかの研究が報告されており、例えば、問題飲酒群(大量・高頻度に飲酒している群)に分類される高校生は、正常群の高校生に比べて薬物乱用経験率(有機溶剤、大麻、覚せい剤のいずれも)が高いという報告13)や、大人不在下の仲間だけでの飲酒経験を持つ中学生は、そのような経験のない中学生に比べて有機溶剤乱用経験率が高いという報告14)があります。
欧米では、先に紹介しましたBinge drinking(暴飲)と薬物乱用との関連を指摘した報告もあります。例えば、大学生におけるBinge drinkingは、大麻吸引時や、その他の違法薬物が入手可能な時に起こりやすいという報告15)や、Binge drinkingがみられない高校生の大麻乱用率(過去1ヶ月)が28%であったのに対して、Binge drinkingがみられる高校生の場合はその2倍以上の59%であったという報告16)があります。

 図2は、ある大学の新入生377名(平均年齢18.5歳)を対象に行った実態調査17,18)の結果の一部です。表中のCG、RG、HGRは薬物乱用のリスクの大きさに基づく分類を表しています。「(いずれかの)薬物乱用に誘われた経験がある」、「周囲に(いずれかの)薬物乱用者がいる」という2つのデータを用いて、どちらも該当する群をハイリスク群(High risk group: HRG)、どちらかが該当する群をリスク群(Risk group: RG)、どちらも該当しない群を対照群(Control group: CG)の3群に分類しました。

image5
図2.危険飲酒行動と薬物乱用リスクグループとの関連

薬物乱用のリスクが大きいグループほど、飲酒の頻度が高く、イッキ飲みの経験があり、アルコール・ハラスメント(飲酒の強要など)の被害経験があり、ブラックアウト(飲酒による一時的な健忘・記憶喪失)の経験があることが示されています。このように、イッキ飲みなどの危険飲酒行動と薬物乱用リスクに共通しているのは「仲間の存在」ですから、日常の「交友関係」が彼らの飲酒や薬物乱用に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆されます。

 一方、飲酒経験そのものや、大人不在下の仲間だけでの飲酒経験については一定の傾向がみられていますが、統計的な有意差はありませんでした。これは中学生対象の先行研究14)とは異なる結果ですが、中学生が仲間だけで飲酒するという逸脱性と、大学生ではその意味合いが異なることを示唆する結果と解釈できるかも知れません。


■5.まとめ―薬物乱用の高いリスク



以上、今回は若者のアルコールをテーマに取り上げ、その現状や薬物乱用との関連について解説してきました。青少年の全体のアルコールのリスクは減少傾向にありますが、飲酒リスクの高い青少年は減少しておらず、そのような集団の薬物乱用リスクも同時に高いことが示されています。

薬物乱用防止教育の中で、アルコールについて触れる際には、アルコールは麻薬や覚せい剤と同じように依存性のある物質であることや、未成年者の飲酒は広義の薬物乱用であるといった「薬物乱用との共通点」を理解させることが求められると思います。また、中学生では大人不在での仲間だけでの飲酒経験が、大学生ではイッキ飲みなどの危険飲酒行動が薬物乱用リスクをさらに高めるなど、「薬物乱用とのつながり」についても強調することが重要でしょう。

著者:嶋根卓也

【文献】
1)    嶋根卓也,三砂ちづる:青少年と薬物乱用・依存.保健医療科学.54(2):119-126,2005.
2)    簑輪眞澄、鈴木健二、和田清、尾崎米厚:1996年度未成年者の飲酒行動に関する全国調査報告書.平成8年度厚生科学研究費補助金厚生科学特別研究事業「未成年者の飲酒行動に関する実態調査」,1997.
3)    上畑鉄之丞、鈴木健二、和田清、他:2000年度未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査報告書. 平成12年度厚生科学研究費補助金厚生科学特別研究事業「未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査」,2001.
4)    林謙治、簑輪眞澄、大井田隆、他: 2004年度未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査報告書. 平成16年度厚生労働科学研究費補助金健康科学総合研究事業「未成年者の喫煙実態に関する全国調査」,2005.
5)    厚生労働省:21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21).2000.
6)    鈴木健二, 尾崎米厚, 和田清, 松下幸生, 林謙治, 大井田隆, 兼板佳孝, 神田秀幸, 簑輪眞澄, 谷畑健生:3回の全国調査における中学生・高校生の飲酒の減少傾向.日本アルコール・薬物医学会雑誌,42(3),138-151,2007.
7)    イッキ飲み防止連絡協議会:アルコール・ハラスメント「アルハラ110番」にみる被害の実態と対策、ASK(アルコール問題全国市民協会),2000.
8)    Wechsler, H., Davenport, A., Dowdall, G., Moeykens, B., & Castillo, S.(1994). Health and behavioral consequences of binge drinking in college: A national survey of students at 140 campuses. Journal of the American Medical Association, 272, 1672-1677.
9)    Kuntsche E, Rehm J, Gmel G.: Characteristics of binge drinkers in Europe.Soc Sci Med. ;59(1):113-27. 2004.
10)    Wechsler, H., Dowdall, G., Davenport, A., & Rimm, E. (1995). A genderspecific measure of binge drinking among college students. American Journal of Public Health, 85, 982-985.
11)    Wechsler, H., & Austin, S. B. (1998). Binge drinking: The five/four measure [Letter to the editor]. Journal of Studies on Alcohol, 59, 122-123.
12)    Marcus Grant,樋口進(監訳):未成年者飲酒の原因-国際的分析-,国際アルコール政策センター委託研究,2004.
13)    鈴木健二、村上優、杠 岳文、他:高校生における違法性薬物乱用の調査研究、日本アルコール・薬物医学会雑誌,34(5),465-474,1999.
14)    和田清:中学生における飲酒-飲酒文化の反映-、日本アルコール・薬物医学会雑誌,34(1),36-48,1999.
15)    Clapp, J. D., & Shillington, A. M.: Environmental predictors of heavy episodic drinking. American Journal of Drug and Alcohol Abuse, 27(2), 301–313. 2001.
16)    D’Amico, E. J., Metrik, J., McCarthy, D. M., Appelbaum, M., Frissell, K. C., & Brown, S. A. Progression into and out of binge drinking among high school students. Psychology of Addictive Behaviours, 15(4), 341–349. 2001.
17)    嶋根卓也,和田清,三島健一,藤原道弘:大学新入生における薬物乱用実態に関する研究.平成20年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)「薬物乱用・依存の実態把握と「回復」に向けての対応策に関する研究」研究報告書.Pp163-191,2009.
18)    嶋根卓也、和田清、三島健一、藤原道弘:危険飲酒行動と薬物乱用リスクグループとの関連について~大学新入生を対象とした調査より~、日本アルコール・薬物医学会雑誌、44(6),2009.


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

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