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8.薬物依存分野における自助グループについて

8.薬物依存分野における自助グループについて

2010年03月25日 (木) 10時08分配信 投稿日:10/03/25 10:08 icon_view 397view

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■薬物依存分野における自助グループについて



1.はじめに

みなさんは、「自助グループ」と いう言葉を聞いたことがありますか。医療分野では、患者がいて、その患者の治療のために医師や看護師などの医療スタッフがいますよね。薬剤師も当然この医 療スタッフの中に含まれています。つまり、医療の恩恵を受ける側である患者と、医療を提供する医療者側との「患者-医療者」の構造があるわけです。しか し、精神保健福祉分野では必ずしもこの構造をとらない「自助グループ」という団体が存在し、重要な役割を果たしています。自助グループとは、同じ問題を抱 える当事者同士が集まり、支え合う団体のことです。

薬物依存の分野では、NAやDARCといった自助グループが有名です。今回は、薬物依存分野における自助グループについてご紹介したいと思います。

2.自助グループの起源
自助グループの起源は、1935年アメリカ合衆国オハイオ州で出会った2人のアルコール依存者(ビルとボブ)が創設したAA(Alcoholics Anonymous、アルコホーリクス・アノニマス)とされています1,2,3)。彼らは、当事者同士が自身の体験を互いに語り合うことで、アルコール依存の回復につながることに気がついたのです。いわゆる「当事者ミーティング」の原点と言えます。彼らは回復のプロセスを12段階に分けた「12ステップ」と呼ばれる回復プログラムを作り活動の基礎としました4)

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AA のメンバーになるために唯一求められることは「飲酒をやめたい」という願いだけです。運営は自らの献金のみで行い、いかなる宗教、政党、組織、団体からの 影響を受けず自立的な立場を維持しているという特徴があります。AAはメンバーの活動を支援する事務的機能を有するサービスセンターを除き、特定の施設を 持たない団体です。「12ステップ」に基づくミーティングは、教会や公民館のスペースを借りて行います。また、団体名の一部でもある「アノニマス」という のは「無名の」、「匿名の」という意味です。

グループの中や公の場で個人名を出さないことは、個人のプライバシーを守るためにはとても重要なことでしょう。また、名前や所属を明らかにしないからこ そ、ミーティングの中で自分に正直になれ、自分の考えや気持ちを仲間と共有することができると考えられます。このような自助グループとしての基本的な態度 やルールについては「12の伝統」という形で定められています。


3.薬物依存や他分野への発展

当事者同士が自身の体験を互いに語り合い依存症からの回復を目指すという「当事者ミーティング」の形式は、その後、アルコール依存のみならず薬物依存にも 応用され、1953年に米国カリフォルニア州でNA(Narcotics Anonymous、ナルコティクス・アノニマス)が生まれました。

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NA は、世界各国に広がっている薬物依存分野の自助グループとしては最大規模の団体です。NAワールドサービスによれば、世界130ヶ国において毎週5万回 (延べ)のミーティングが行われているとされています。日本では1981年にNAが始まりました。現在、全国に136の自助グループが活動しており、毎週 336回(延べ)のミーティングが日本各地で開催されています(2010年2月)。

12ステップをベースとする自助グループはアルコール依存や薬物依存にとどまらず、強迫的ギャンブルの問題を抱える者によるGA(Gamblers Anonymous、ギャンブラーズ・アノニマス)や、過食・拒食など食べ物や食べ方に関する問題を抱える者によるOA(Overeaters Anonymous、オーバーイーターズ・アノニマス)、強迫的な買い物に問題を抱える者によるDA(Debtors Anonymous、デターズ・アノニマス)など、いわゆるアディクション全般に広がりがみられています。これらの自助グループについて詳しく知りたい方 は、それぞれの公式ホームページをご覧いただくと良いでしょう。

4.DARC
AAやNAが海外で始まり日本に持ち込まれた自助グループであるのに対して、DARC (Drug Addiction Rehabilitation Center)は日本で誕生した民間の入所・通所施設です。地域における長期的なリハビリテーションができる数少ない社会資源と言えます。1985年に薬 物依存からの回復を願う当事者同士が共同生活を開始したことがDARCの原点とされています。

その後、DARC は全国に広がり、現在57施設(平成22年2月時点)ありますが、基本的にそれぞれ独立した組織となっています。また、基本的にスタッフも薬物依存の当事 者であり、自助グループ的な要素も持ち合わせた施設といえます。一部、NPO法人の認可を受けている団体では非当事者が理事になっているケースもあるよう です。なお、DARCの誕生の経緯については、創設者である近藤恒夫氏の著書「薬物依存を越えて」に詳しく書かれています5)


5.「言いっぱなし、聞きっぱなし」

同じ問題を抱えた仲間との共同生活を通じて薬物を使わない生活を身につけ、薬物依存からの回復を目指すことがDARCの目的です。1日2~3回、NAの 12ステップをベースとしたミーティングを行うことが活動の中心となっています。ミーティングの司会者は毎回テーマを決め(場合によっては、参加者にテーマを求めることもありますが)、そのテーマに基づいて自分自身の考えや気持ちを発表していきます。

主語は「私」とすることがルールです。他の人の話や噂話をする場ではありません。もちろん、話したくない時は「パス」もできます。ミーティングの場にいる 参加者は仲間の発言をただ受け止めるだけです。「オレなら、そんなことはしないよ」、「お前はそんなことすべきではなかった」などと反論されることはありません。DARCのミーティングは何か話し合いをして解決策を見つけるディスカッションの場ではないのです。

これは、彼らの言葉を借りれば「言いっぱなし、聞きっぱなし」ス タイルです。薬物依存者の多くは人の話を黙って聞くことが苦手であり、このスタイルに慣れないうちはストレスに感じる場合が多いでしょう。しかし、ダルク では薬物依存からの回復するためには自分とは異なる意見や考え方を受け入れることや、他者の存在を認められるようになることが必要とされており、この「言いっぱなし、聞きっぱなし」スタイルのミーティングが重視されています。

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6.Just for todayという考え方

ジャスト・フォー・トゥデイ(Just for today、今日一日)という言葉はDARCで合言葉のように使われているフレーズです6)。もともとはAAやNAで使われていた言葉のようです。これから先、何があるかわからないが、「とりあえず今日一日は薬物を使わずに過ごそう」という意味です。今日一日を積み重ねていくことで、薬物を使わない時間を増やしていくというスタンスです。

明日のことを不安に感じたり、過去のことに囚われ続けるのではなく、今日一日を精一杯生きようというメッセージが込められていると理解しています。
とても普遍的なメッセージが込められた言葉です。


<引用文献>
1)増野肇:セルフヘルプ活動が精神医療の中で果たしてきた歴史的役割と治療的意義、精神障害とリハビリテーション、11(1)、7-10、2007.
2)藤田さかえ:自助グループ、河野裕明、編。我が国のアルコール関連問題の現状、厚健出版、285-301、 1993.
3)ウィリアム・ホワイト:米国アディクション列伝-アメリカにおけるアディクション治療と回復の歴史、ジャパンマック(発行)、125-144,2007.
4)ジョー・マキュー:ビックブックのスポンサーシップ,依存症から回復する12ステップ・ガイド、依存症からの回復研究会(訳者、発行者),2007.
5)近藤恒夫:薬物依存を越えて-回復と再生へのプログラム-,海拓舎, 2000.
6)東京ダルク支援センター:「JUST FOR TODAY」II 薬物依存症からの回復,2003.

著者:嶋根卓也


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

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