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1.薬物乱用を理解するpart1

1.薬物乱用を理解するpart1

2009年04月09日 (木) 15時34分配信 投稿日:09/04/09 15:34 icon_view 545view

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■(1)-1 薬物乱用とは何でしょうか?



薬剤師のみなさん、こんにちは。コラム「薬剤師のための薬物乱用・依存講座」にようこそ。

第1回目は、ズバリ、本シリーズのタイトルにも使われている「薬物乱用」をテーマとして取り上げたいと思います。
「薬物乱用」とは 、何を意味する言葉なのか?日本では、どのような薬物が乱用されているのか?に、ついて解説していきたいと思います。
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図1.薬物乱用・依存・中毒時間の相関関係
出典:ご家族の薬物問題でお困りの方へ(厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)

 
薬物乱用という言葉から連想されるイメージはどのようなものでしょうか?違法行為、犯罪、暴力団、麻薬、芸能人逮捕のニュース・・・など暗いイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。

薬物乱用をヒトコトで定義するなら、「社会的規範から逸脱した目的や方法で薬物を自ら使用する行為」となります。
例えば、麻薬や覚せい剤は、法律によって製造、売買、所持だけなく、使用すること自体が禁じられていますので、そのような薬物を自 ら使うことが薬物乱用に当たります。つまり、この場合の社会的規範は、「覚せい剤取締法」などの法律になるわけです。

「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」
出典:ご家族の薬物問題でお困りの方へ(厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)

 薬物乱用は、麻薬・覚せい剤だけに用いる言葉ではありません。未成年者飲酒禁止法や、未成年者喫煙禁止法では、満20歳未満の者の飲酒や喫煙を禁じていますので、未成年者の飲酒や喫煙も薬物乱用 の一つです。
ただ、これらの法律は、未成年者にアルコールやタバコを提供した大人や保護者を処罰することが主たる目的で、未成年者自身を処罰する規定はありません(行政処分として、お酒やタバコを没収する規定はあります)。

また、成人が飲酒をすることは乱用ではありませんが、朝から飲酒をして仕事に行かない、仕事に行ったとしても、飲酒の影響で仕事に ミスが増えるなど社会生活に支障をきたすような飲み方をしている場合は、社会規範からすると妥当とは言えず、乱用と捉えることができます。


■(1)-2 薬物乱用とは何でしょうか?



薬剤師のわれわれに身近な薬物乱用としては、やはり医薬品の乱用を押さえておく必要がありますね。

向精神薬、睡眠薬、咳止め薬、鎮痛薬、風邪薬などを乱用目的で、大量に服用することは、薬物乱用になります。また、寝る前に1錠服用するように指示された睡眠薬を、「早く眠りたい」、「もっと深く眠りたい」と考えて、何錠も飲む行為も薬物乱 用の一つと捉えることができます。

この場合は、治療目的という点では妥当ですが、医師の処方の指示に対して違反をしているという点が問題になります。これは処方薬に 限った話ではなく、市販薬についても同様です。
薬物乱用は、Drug Abuseの邦訳で、乱用(Abuse)という単語からは、何度も何度も繰り返し使用しているようなニュアンスを感じます。 海外での暮らしが長かった友人は、「1回~数回の薬物使用に対してAbuseという言葉を使うのは、ヘンな感じだよねぇ・・・」と違和感 を示しておりました。

しかし、わが国で用いられている薬物乱用という用語は、逸脱行為そのものを指しておりますので、これまでに使用してきた回数や量に 関わらず、1回の使用であっても薬物乱用と定義されることに留意してください。
薬物乱用防止の啓発活動では、「麻薬や覚せい剤の使用 は、たった1回でも薬物乱用!」といったキャッチフレーズを目にすることが多いですが、まぁ、わが国で使われている「薬物乱用」の文脈では、正しい表現と言えるわけです。

さて、薬物乱用という言葉が扱う範囲がかなり広いということをご理解いただけましたでしょうか?薬剤師のみなさんには、なるべく全体を網羅した内容をお伝えしたつもりです。私は、薬物乱用を説明する際、時と場合に応じて、伝える内容を制限することがあります。

例えば、青少年相手の健康教育の中で、「未成年者喫煙禁止法では、未成年者の喫煙を禁じているけど、みんなが喫煙をしたからといって、それを処罰する規定はない」なんてことは、あえて言う必要のないことです。また、医師の指示通りに医薬品を服用しなかった患者さんに対して、「あなたが行っている行為は、薬物乱用だ!」なんて言ってしまえば、患者さんとの信頼関係が崩れることになりかねません。

つまり、薬物乱用の話をする際には、相手の置かれている立場に合わせて、必要な情報をわかりやすく伝えることが、我々に求められているということです。

■(2)-1 代表的な乱用薬物を知りましょう



次に、国内で流行している乱用薬物のうち、代表的なものをご紹介したいと思います。

【覚せい剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)】

覚せい剤は、戦後のヒロポンから始まり、半世紀以上に渡って日本で流行し続けている代表的な乱用薬物です。
覚せい剤は、中枢神経を興奮させる働きがあり、気分が高揚し、一時的に眠気や疲労を感じなくなります。長期的な使用により、覚せい 剤精神病となり、幻覚、被害妄想といった症状が発現します。近年の流行としては、これまで使われてきた「シャブ」から、「エス」や 「スピード」といった隠語が使われることが多くなったことが挙げられます。
また、注射器を用いた静脈注射から、アルミホイルに乗せた結晶を火であぶって気化した煙を吸引する、いわゆる「あぶり」スタイルが 定着しつつあります。

こうした隠語や乱用スタイルの変化が、薬物乱用に対する心理的抵抗感を薄めている可能性が指摘され、特に若年 層への乱用拡大が危惧されています。

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図2.覚せい剤の結晶
【提供】関東信越厚生局麻薬取締部

 【大麻(マリファナ)】
相撲界の騒動から始まり、芸能人の逮捕、大学キャンパス内での事件など、ここしばらく、大麻報道が続いています。
乾燥大麻の場合は 、パイプで吸引したり、タバコに混ぜて喫煙したりします。大麻の樹脂(やに)や芽を圧縮した大麻樹脂(ハシシ、チョコ)の形で密売されることもあります。
短期的には、気分の変容や、酩酊感、空間認知機能障害が起こります。長期的に使用を続けることにより、無動機症候群(物事への興味・関心が極端に低下し、自発的な行動や思考ができなくなった状態)や 、精神運動興奮(ちょっとした刺激にも簡単に心を乱され、怒りっぽくなったり、興奮しやすくなったり、気分が変わりやすくなる状態 )といった精神病になる恐れがあるとされています。

大麻は、クサ、ハッパ、ジョイント、ガンジャなどの隠語で呼ばれることが一般的です。大麻取締法により、大麻の所持・栽培・輸出入等が規制されており(大麻は免許制をとっており、アサとしての産業的栽培、研究目的の 栽培・使用に対する免許が存在します)、無免許での所持・栽培・輸出入などは取り締まりの対象となっています。
 

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図3.乾燥大麻

【MDMA】
MDMAは、覚せい剤に似た化学構造を有する合成麻薬の一つです。米国では、PTSDの治療薬として用いられていた時代もありましたが、クラブ等での乱用が社会問題化し、現在では規制薬物となっています。わが国でも麻薬指定されており、単純所持や使用が禁止されています。

MDMAを服用すると興奮作用と幻覚作用が発現します。身体的には、体温や血圧を上昇させる働きがあり、クラブ等でダンスをする際に乱用することで、横紋筋融解症を引き起こし、腎臓に影響を 与える恐れがあります。また、強い依存性があり、乱用を繰り返すうちに不安や不眠の状態が続き、錯乱状態に陥る可能性があるとされています。一般的には、様々な模様がつけられたカラフルな錠剤の形で、出回ることが多い薬物です。

このような錠剤は、エクスタシー、バツ、エックスなどと呼ばれ、若年層を中心に、クラブ等での乱用拡大が危惧されています。なお、こうした錠剤には、MDMAだけでなく、MDMAの作用を増強するために他の化学物質が含まれていることや、有害な不純物が含まれていることも多く、健康へのリスクはさらに高くなります。

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図4.MDMAの錠剤
【提供】関東信越厚生局麻薬取締部

【有機溶剤】
有機溶剤とは、脂溶性物質を溶かし、揮発性に富む化学物質の総称のことで、その種類は幅広く、有機溶剤の乱用というと、シンナー、 ボンド、トルエンなどが代表的です。
有機溶剤は、血液脳関門を通過し、中枢神経を抑制する働きがあります。長期的な使用により、脳の萎縮、歯の腐食、多発神経炎などの身体症状が現れるだけでなく、無動機症候群、幻覚・妄想状態などの精神病症状も発現する恐れがあります。

【違法ドラッグ】
違法ドラッグは、これまで「合法ドラッグ」、「脱法ドラッグ」と称されてきた薬物に対する総称です。違法ドラッグは、主として、インターネット、ヘッドショップ(大麻の吸引具などを取り扱う店舗)、アダルトショップで販売されており、法的な規制を逃れるため、使用用途を偽装(芳香剤、研究用試薬、ビデオクリーナー、観賞用など)し、輸入・販売がされてきました。

多くの違法ドラッグは、デザイナーズドラッグと呼ばれるもので、数多くの類似薬物が存在します。つまり、特定の成分を麻薬指定しても、化学構造の一部(側鎖や官能基)を変えただけの新しい薬物が、次々と生み出されていることか ら、法規制が追いつかない現状にありました。そこで新たな法規制として、2007年の薬事法改正により、「指定薬物」という枠組みを作 り、違法ドラッグの規制が強化されることになりました。

この規制システムでは、指定薬物を「中枢神経系の興奮もしくは抑制又は幻覚の作用を有する物質であり、人の体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生する恐れがある物」と定義しています。
このシステムにより、危険性の高い違法ドラッグを、厚生労働大臣は指定 薬物として指定し、指定薬物は医療等の用途を除いて製造や輸入やその広告が禁止され、行政は指定薬物の検査・廃棄・回収・立入検査 などが可能となりました。
また、指定薬物の製造・輸入・販売・授与・販売・授与の目的で貯蔵・陳列には罰則が設けられることになりました。

【医薬品】
医薬品の中にも、乱用の対象となっているものがたくさんあります。
処方薬では、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や、中枢神経刺激薬であるリタリン(塩酸メチルフェニデート)などの向精神薬が乱用されるケースがみられます。インターネット等による、これらの医薬品の不正入手も問題視されています。

一方、市販薬でも、塩酸エフェドリ ンやコデインを含有する咳止めシロップや、総合感冒薬の乱用ケースが実際にみられています。私がこれまで出会った患者さんの中には 、かつては覚せい剤などの規制薬物を乱用していたものの、逮捕後、起訴されたものの執行猶予判決となり、その後、こうした医薬品の乱用を開始したという方もいます。
つまり、再逮捕を恐れ、乱用薬物を「使っても捕まらない薬物」にシフトさせていたわけです。この医薬品の乱用は、我々薬剤師にとっては、身近な問題ですよね。

日常業務を通じて、我々薬剤師ができる薬物乱用防止活動についても、コラムの後半で触れていきたいと思います。みなさんも是非考えてみてください。

さて、第1回目のコラム「薬剤師のための薬物乱用・依存講座」は以上です。内容的にちょっと堅くなってしまったのではないかと少し反省しています。
次回は、もう少しリラックスした内容をお伝えできればと思います。お楽しみに。

■参考文献
・ご家族の薬物問題でお困りの方へ(厚生労働省)
・和田清:依存性薬物と乱用・依存・中毒(星和書店)
・舩田正彦:キーワード解説 違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ).日本薬理学雑誌、130(5)、433-435、2007.
・厚生労働省「薬事・食品衛生審議会」:平成19年度第1回指定薬物部会、参考資料No.1薬事法抜粋(指定薬物関係部分),2007.

著者:嶋根卓也


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

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