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30.副作用の情報提供義務

30.副作用の情報提供義務

2012年11月08日 (木) 09時00分配信 投稿日:12/11/08 09:00 icon_view 281view

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まれにしか起こらない重篤な副作用について、薬剤師は投薬時にどの程度説明をする義務を負っているのでしょうか。仮に患者さんに重篤な副作用が発生し、説明していなかった為に悪化してしまった場合、薬剤師は責任を問われるのでしょうか。
 

1 情報提供義務

薬剤師は、投薬時、適正な薬剤使用のために服薬指導をする義務を負っており、副作用等の服用上の留意点を患者さんに伝える必要があります(薬剤師法25条の2)。それでは、何万人に一人にしか起こらないような、まれな副作用についても、患者さんに伝える必要はあるのでしょうか。

薬剤師が、このような義務を負っているとすれば、まれにしか起こらない副作用についてなんら説明せず、そのために副作用の発見が遅れるなどして、患者さんに健康被害が起こってしまえば、薬剤師は責任を負うことになります。

(情報の提供)
薬剤師法25条の2
薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない。


2 裁判例

  このような義務があるか否かは、医師に対する裁判例ですが、参考になる裁判例があります(高松高判平成8年2月27日 判例タイムズ908号232頁)。事案の内容は、 医師がアレビアチンとフェノバールを併用投与していたところ、患者さんが退院後に中毒性表皮融解壊死症(TEN)を発症して死亡してしまい、患者さんの遺族が投薬に際して医師に注意義務違反があったとして損害賠償請求をした事案です。裁判所は、「その副作用の結果が重大であれば、発症の可能性が極めて低い場合であっても、副作用が生じた時には早期に治療することによって、重大な結果を未然に防ぐことができるように、服薬上の留意点を具体的に指導すべきである。」とし、100万人に1人しか起こらないとされる中毒性表皮融解壊死症(TEN)についても、服用上の留意点を説明する必要があると判断しました。そして、その説明方法については、単に「何かあればいらっしゃい。」という一般的な注意だけでなく、「痙攣発作を抑える薬を出しているが、ごくまれには副作用による皮膚の病気が起こることもあるので、かゆみや発疹があったときにはすぐに連絡するように。」という程度の説明が必要だとしています。

この判決は、医師に対するものですが、前記のとおり薬剤師には情報提供義務があるので、薬剤師にもこの判決は当てはまると考えられます。
 

3 初期症状を伝える必要がある

この裁判例は、副作用の留意点を具体的に伝える必要があるとしていますが、「この薬は、まれにですがTENという皮膚の病気が起こり、最悪の場合は死に至ることもあります。ですから、湿疹などが出たらすぐに相談するように。」などと言う具体的な説明を要求しているわけではありません。このようなことを言ってしまえば、患者さんは薬を飲むことを躊躇し怖くて服用しなくなってします。投薬時に、まれに起こる重篤な副作用を具体的に説明しても、それはコンプラインスを低下させるだけであり、薬剤の適正使用にはらず、薬剤師に情報提供義務を課した意味がなくなってしまいます。しかし、一方で何も説明しないのであれば、副作用などによる薬害を防ぐことができません。薬剤師には、患者さんに安心して服用してもらい、かつ、薬害を防げるような情報提供をすることが求められます。

そのためには、副作用を個別具体的に説明するのではなく、副作用の初期症状を患者さんに伝え、そのような症状がでた場合に、「これは薬のせいで起こっているのかもしれない。」という認識を患者さんにもたせることが必要です。そうすれば、何か異変を感じた際には、すぐに医師や薬剤師に連絡をし、医薬品を中止するなどの適切な処置をとれます。副作用の初期症状には様々あり、医療の知識のない患者さんは、異変を感じても、それがすぐに薬のせいだという認識ができない場合があります。初期症状を説明し、患者さんに注意を促しておくことで、患者さんが自分で副作用の可能性を疑うことができ、医師や薬剤師に連絡をしてくるように説明しておくことが重要になります。上記の裁判例もこのような趣旨の判断をしたと考えられます。

以上のとおり、薬剤師は、まれにしか起こらない重篤な副作用について、早期発見や予防のために、初期症状を説明する義務を負っていることを理解しておくことが重要です。

薬剤師は、副作用等を最小限に抑えるなど、薬害を防ぐことを大きな任務の一つとして持っています。数万人に一人に起こるものだから、それは仕方がないと言ってしまえば、薬剤師の義務を果たしたとはいえません。副作用を発症した患者さんは、その不利益を一人で負うことになり、重大な損害を被ることになるので、それを防ぐことが薬剤師の義務だと認識しておくことが重要です。この一人の負担をなくし又は少しでも軽減するために、薬剤師は、数万人に初期症状を説明し薬害を防いでいく必要があると考えられます。


著者:赤羽根 秀宜

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