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薬薬連携の重要性-病院薬剤師の立場から-|がん治療と向き合う薬剤師

薬薬連携の重要性-病院薬剤師の立場から-|がん治療と向き合う薬剤師

2012年06月27日 (水) 09時00分配信 投稿日:12/06/27 09:00 icon_view 399view

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1.はじめに

 私が社会人になった約10年前から、薬薬連携の重要性について常日頃から耳にしてきました。しかし現在、薬薬連携が大きく進歩したかというと、十分には連携ができていないというのが現状かと思います。外来で院外処方せんが発行されると患者は調剤薬局で薬の交付を受けるため、多くのケースでは病院の薬剤師と患者との接点が限られたものになっています。一方、入院の場合は患者と深く関わることができますが、退院後は外来対応となるため、がん薬物療法を通院で受ける場合など一部を除いて、退院後の患者さんと関わることはあまり多くありません。長期的な視点でみると、私たち病院薬剤師よりも薬局薬剤師の方が患者との接点は多いでしょう。


2.近年の取り組みは…

 しかしながら薬薬連携に関する取り組みや研修は2000年以降数多く企画されてきました。近年はグループディスカッションを中心とした研修も増えてきており、病院薬剤師と薬局薬剤師とのお互いの顔が見え始めていると思われます。しかし、両者の連携の体制が整備されているかというと、一部の地域の取り組みを除いてはまだこれからではないかと思います。本年の臨床腫瘍薬学研究会学術大会2012においても、がん薬物療法における薬薬連携を促進するための取り組みが病院薬剤師・薬局薬剤師双方から報告されました。がん薬物療法の領域では、新規抗がん薬の登場や画期的な支持療法の開発によって、注射の抗がん薬の治療を病院の外来化学療法センターで受け、併用される経口抗がん薬は入院治療から外来治療へシフトしているため、早急な薬薬連携の強化が求められている状況です。このような背景もあり、病院で受けた薬物治療などに関する情報を、お薬手帳をはじめとする様々なツールに記載するなどした具体的な取り組みやその評価・改善策の報告が増えています。昨今、基幹となる病院と周辺の薬局が連携を強化して必要な情報を共有する事例が多くみられています。


3.連携ってどういうこと?

近年は薬薬連携に限らず、病診連携を始めとして様々な医療の連携に関する取り組みが進められています。他の医療機関との連携を行う際に留意したいことは患者自身からの視点です。患者から得た情報は医師・薬剤師・看護師など多職種で共有することになります。しかし各々の専門職種が個人で24時間365日いつでも同じ患者に携わることは現実的でないため、必要な情報を引き継ぐ必要があります。「引き継ぎ」は医師の診断と治療の面でも、看護師の看護・ケアの面でも当たり前のように行われていますので、薬剤師も薬歴管理・副作用確認などの薬学的事項に関して引き継ぎを行う必要があります。薬薬連携の例として、お薬手帳の活用を考えてみましょう。当然のことですが、一つの病院と一つの薬局のみが連携できていればいいわけではありません。かかりつけ病院、かかりつけ薬局は決まっていたとしても、他の疾患で別の病院にかかり、違う薬局に立ち寄ることも考えられ、その場合はお薬手帳に新たな情報が追記されるべきです。さらに、市販薬を服用する際もその内容が記載されることが理想です。すなわち、本来はお薬手帳などからその患者自身が使用している医薬品すべてを把握できなければなりません。薬薬連携とは、自らの病院・薬局における薬物治療に関する情報を、他の病院・薬局薬剤師に的確に引き継ぎするとともに、他の病院・薬局における薬歴を確認するという、医療の中ではごく当たり前の考えが基幹となっています。しかしながら、その引き継ぎがきちんとできている病院・薬局はまだまだ少ないかもしれません。この「引き継ぎ」をいかにしてもれなく、スマートに前進させていくのかが今後の課題と言えるでしょう。


4.病院薬剤師として…

 以前、地域の薬薬連携の研修会でこのようなやりとりがありました。お薬手帳に関することが話題になった際に、「退院の際、服薬指導時にお薬手帳に退院処方の内容を記載している」との発言に対し、「退院処方の情報はわかっても、その薬がどのような背景で投与されるようになったのか(または中止になったのか)、入院中にどのような薬物治療を受けてきたのか、その背景がわからない」という指摘がありました。調剤薬局ではその投薬の背景を主に患者自身から聴取する一方、病院では特に入院患者に対し、薬物治療の方針が決まる過程で薬剤師 が関わることが多いという側面をもっています。そのため、薬局・病院双方において得られた情報を薬歴に追加することは、薬薬連携の観点からも有益です。同様な理由で、治療レジメン、注意すべき検査値の推移、疑義照会の内容なども、追記しておくことで役立つケースがあるものと考えられます。また、薬物治療の内容や経過を確認する医師にとっても診療の一助になります。なお、お薬手帳自体は紙媒体のアナログである面は否めません。多くの問題点が指摘されていますが、お薬手帳に代わる電子的な医療連携のツールが早期に登場することが期待されます(すでに厚生労働省では電子お薬手帳などの検討を進めているようです)。


5.さいごに

 薬薬連携の重要性に関して、がん薬物療法の側面を切り口に述べてみましたが、私の所属する病院でもまだこれからといった状況です。しかし、個別の取り組み事例は確実に増えてきていますので、少しずつ着実に連携できるよう工夫を重ねていきたいと思います。今後、ITを活用したハード面での連携強化の時代が到来することが予想されますが、薬剤師一人ひとりの基本的な「引き継ぎ」の姿勢はソフト面として大切であることは今後も変わらないでしょう。

■著者プロフィール



あかぎ

赤木 祐貴 (あかぎ ゆうき)
2000年3月 東京理科大学薬学部卒業
2002年3月 千葉大学大学院薬学研究科修了
2002年4月 慶應義塾大学病院研修薬剤師
2002年9月 帝京大学医学部附属市原病院薬剤部勤務
2006年4月 東京理科大学薬学部嘱託助手(2007年~嘱託助教)
2011年4月 独立行政法人国立病院機構東京医療センター薬剤科勤務

博士(薬学)
日本医療薬学会認定薬剤師
日本病院薬剤師会生涯研修履修認定

 

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・薬薬連携の重要性‐薬局薬剤師の立場から-
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*連載記事の一覧はこちら

 

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