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7.難病患者としての経験から|薬剤師の働き方

7.難病患者としての経験から|薬剤師の働き方

2012年07月27日 (金) 09時00分配信 投稿日:12/07/27 09:00 icon_view 497view

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■薬学部を目指した理由は?

みなさんは大学受験のとき、数多くの学部の中から、薬学部を選択されたのはどのような理由でしょうか?

他の理系学部や文系学部に比べて、医療系学部を目指す人は大学受験という人生の早い段階で将来の進路を狭めなければなりません。未来への入り口を狭くするというリスクの高い選択をしたわけですから、何らかの理由があるものではないでしょうか。もしかしたら、学生生活を送るうちに忘れることもあるでしょうし、卒業することで変化することもあるでしょう。むしろ、高校時代から思いは変わらない人のほうが少ないかもしれません。

これから薬剤師としての働き方を考える上で、もっとも基礎にある医療人としての心構え、薬剤師としての志がとても重要だと考えています。ぜひ、みなさんそれぞれに大学受験のころを思い出し、振り返ってみて欲しいと思います。
では、私の過去を公開しましょう。
 

■潰瘍性大腸炎がきっかけに

私の場合は、自分の難病(特定疾患)がきっかけでした。

高校に入学した16歳の夏、排便時に下血しました。最初は恥ずかしくて、親にも相談できません。数ヶ月後に下血が止まったことから放置しましたが、17歳のときまた下血しました。さすがにヤバイと感じ、親に相談し病院に連れて行かれ受診しました。

診察し、注腸バリウムによるX線検査、大腸ファイバーでのバイオプシー(生検)の後、診断されたのが「潰瘍性大腸炎」という初めて聞く病気の名前でした。医師より、「原因不明の自己免疫疾患」と言われても高校生の自分にも、医療職でもない両親では理解できない状況で、当時はインターネットもありませんでしたので高校の図書館で調べたものです。

そのとき、つきつけられた現実がありました。難病持ちでは、将来の就職に困るというものです。父親からは、「難病持ちなんて、企業側が採用しないぞ。」と言われました。青春と呼ばれる時期に、暗い未来をイメージさせられたことが医療を目指すきっかけでした。現実には、そんな差別はありませんでしたので、企業にも父親にも感謝しています。

当初は、医学部を目指し消化器科の医者になって自分の難病を解明し、治療薬も創りたい・・・そんな夢を抱いていましたが、そう簡単ではありませんでした。もう一つの道、薬学部に進み薬剤師になり、潰瘍性大腸炎の治療薬を創りたい、もしくは同じ患者として何か役に立ちたいというものでした。
 

■薬剤師への道

そんな思いで入学するものの、当時の私は遊びたい盛り。授業の出席もそこそこに、アルバイトに精を出し、学業よりも多くの社会勉強(!?)に力を注いでいましたので、卒業も危ぶまれる始末。

「研究室始まって以来の出来の悪い学生だ。」と、研究室の教授もあきれ顔です。

しかも、大学受験のとき抱いた志もすっかり忘れ去られ、薬剤師になることに対して魅力を失いました。就職活動のとき、消去法で選んだ道が製薬企業のMR(医薬情報担当者)でした。こんな状況ですので、もちろん薬剤師国家試験も落ちました。

結局、国家試験を3回受けて合格しましたが、このモチベーションにつながったのも、MRに認定資格制が導入されるにあたり、薬剤師資格があると受験科目が少なくていいからです。

ホント、ひどいエピソードです。自分で書いていてもお恥ずかしい。どうぞ、笑ってやってください。


■なぜ、今ここにいるのか

さて、こんな過去を持った私でしたが、潰瘍性大腸炎の再燃をきっかけに将来を考え直します。

MR時代は緩解期が長く続いていたため、すっかり自分が難病であることを忘れていましたが、30歳を目前にして再燃しました。いろいろ無理をしていたのでしょう。「このままMRを続けていても大丈夫だろうか。」そんな不安がよぎり、再燃したことで思い起こされたことは、「大腸がん」のリスクが高まるということ。

「短い人生なら、太く生きる道を探すか・・・。」

社会人としていい経験もし、つらい経験もしながら、かねてより希望していた企画業務部門へ異動になり、慣れないデスクワークも板につくようになってきます。そんな中、幅広い勉強の必要性を感じ、男30歳にして中小企業診断士の資格取得のために通信教育なども受けながら、お酒の付き合いも減らし資格取得を目指しました。

この資格取得のための勉強は、中小企業診断士になるよりも、薬剤師の資格を活かして医薬品業界で何かビジネスができそうだと感じるようになりました。ただ、製薬企業内では薬剤師資格を活かすことができません。このころには緩解していましたので将来を考えて、薬剤師の経験を積みたいとの思いが増幅してきます。

そこで選んだのが日本調剤でした。ちょうど、ジェネリック医薬品を製造する部門を立ち上げるというニュースが飛び込んできて、素直に面白そうと思ったのです。グローバルに見ても、薬局が製薬企業を傘下に持つなんて考えられませんでしたし、新しいビジネスモデルも展開できる柔軟な会社であることが、私の心をひきつけました。


■薬剤師としての「任務」と「志」

寄り道をしてきましたが、大学受験のころ志していた医療人。あらためて薬剤師とは、どんな存在なのか考えてみました。みなさんもご存知、薬剤師法の中にありました。

薬剤師法第1条(薬剤師の任務)
薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、
公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

この下線部は、医師法第1条とまったくの同文です。すなわち、医師と薬剤師は手段は違えど目的は同じということです。薬剤師は、調剤もさることながら、医薬品だけでなくもっと視野を広げて、多くの人を健康で幸せにしなければなりません。

誰にも命には限りがあるもの。特に私は、一人の難病患者として短い可能性があります。おかげで、患者の気持ちも家族の気持ちも理解できます。

せっかくこの世に生を受け、国から国家資格を与えられたなら、人生を賭して多くの人を健康で幸せにしたい。これこそライフワーク。文字通り「命がけの仕事」として取り組んでいます。

こんな愚かな薬剤師が、この世に一人ぐらいいてもいいですよね。
 
著者:長尾剛司


*この記事は2018年2月14日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、リンク先、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

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