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アメリカの実例と今後の医療の動向変化|次世代のドラッグストア

アメリカの実例と今後の医療の動向変化|次世代のドラッグストア

2012年05月17日 (木) 09時00分配信 投稿日:12/05/17 09:00 icon_view 450view

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このパートでは、弊社社長の平野著「これからのDgS・薬局ではたらく君たちに伝えたいこと」から大部分を引用してお伝えさせて頂きます。

1980 年代後半のアメリカ・ドラッグストア業界は、今の日本と酷似していました。
当時、様々な形態のドラッグストアがあり、広域型ショッピングセンターのモールには調剤を持たないHBC(Health & Beauty Care) 中心のドラッグストアが出店していました。調剤を主体とした個人店も、まだ70%ほどのシェアを持っていました。
もちろん、ウォルグリーンや今のCVS ファーマシーに代表される日本で言う「調剤併設ドラッグ」の形もすでにかなりの店舗数で存在していました。主たる立地は都市部の住宅密集地か郊外で、主に SMと共に核店舗として入る商圏人口1 万人前後の近隣型ショッピングセンターがその立地でした。当時、調剤の粗利益は35%前後で、チェーンドラッグの売上構成比は物販が圧倒的でした。
OTC の販売は、アメリカではもともと基本的に自由でしたが、80年代途中からスーパーマーケットが調剤を含むHBCに注力するようになってきました。

アメリカでもこの頃、医療費の抑制が問題化しつつありました。アメリカの保険は民間保険が主力ですが、それが故に、医療費の抑制は保険会社の経営に直結します。企業は福利厚生上、どのような保険を従業員に提供するかが大きな課題でしたが、そこでもコストは企業の論理という、公的なものとは比べ物にならないレベルで追求されます。
この頃、一般的な処方箋調剤患者の流れは下記のようになっていました。一部公的保険(メディケア=高齢者対象、メディケイド=低所得者対応)があり、若干流れが異なりますが、ここでは一般的な民間保険の場合を記述します。

薬局選択の理由としてはまず、患者さんは医療機関へ行き、処方箋をもらってきます。
薬価制度がありませんから、調剤薬の売価は各店の自由競争です。患者は幾つかの店頭を比較して自分の求める調剤薬の価格を検討しつつ、薬局を決めます。薬を受け取り、全額を一旦支払って、領収書をもらい、それを保険会社にレセプト(請求書)と共に送付して保険給付金を受け取るのです。保険に入っているのに患者が安い価格を求めるのは、保険でカバーしてもらえる限度額が決まっているからです。

この流れは、利用者に大きな負担がかかります。まず面倒です。それに加えて、この頃のアメリカは不況のどん底にあえいでいた時で、多くの貧困者や失業者にとって、一度全額支払いをすることは大きな負担でした。また、移民の中には満足に文章の読み書きの出来ない人もいて、この点でも医療を受ける障壁は高いものとなっていました。

折しも 1980 年代後半は、第一次 IT 革命とでも言うべき時で、PC と通信が一気に普及しました。これによって、ドラッグストアと保険会社がダイレクトに結ばれるようになります。保険会社と結ばれたドラッグストアでは、患者さんは一部負担金(Co-Pay)を払うだけで済み、処方箋獲得目的で大きなアドバンテージを得ました。
この新しい制度を第三者請求と言います。本人が保険会社に請求すべきものをドラッグストアが代わりに請求してくれるという意味での「第三者」です。

ここではもう一つの変化があります。「売価決定」です。調剤薬の売価は、前述のように従来はドラッグストアが店舗間競争の中で決めるものでした。しかし、保険会社と直接結ばれることによって、売価はドラッグストア企業と保険会社の交渉によって決められるようになります。

この第三者請求の仕組は、もう一つ、思わぬ形でドラッグストアの収益に影響を与えました。
保険会社に電子的に蓄えられた医療情報は、容易にデータベース化されます。薬局に限らず、病院における医療情報の電子化も同時に進んでいましたから、保険会社はそれを一元的に入手することが出来ます。保険会社はそのデータベースを用いて、「ある疾病の、ある段階において、どのような治療、投薬を行えば最もその患者さんの一生の医療費をミニマムに出来るか」という研究をしました。疾病毎のクリティカルパスが出来上がったのです。そして、それ以外の方法は保険適用外にしたのです。
これを「Managed Care(管理医療)」と呼びます。

生涯の医療費をミニマムにするということは経済的側面だけではなく、その方のQOL(Quality of Life=生活の質)を向上させるという側面も持ちます。また、一部医師の思い込みよりは統計的に精度の高い医療を提供できます。その点では、これはこれで医療レベルの底上げに繋がることでしたが、他方、このことによって医薬品の使用にも厳しい制約が課せられます。日本の適用外処方による返戻というレベルではなく、レセコンに打ち込んだ段階で使用できない医薬品が指定されてしまうのですから。

このように激しい粗利益率の低下は、決して他人事ではありません。日本でも着々と進むレセプトのオンライン化は、保険が公的制度であるが故に、アメリカよりはるかに容易にデータベースの構築および分析を可能にします。ただでさえ調剤の経済誘導が終わりを告げ、医療費抑制が進むこのタイミングで、
いつしか同じ道をたどる可能性がないと、誰が言えるでしょうか。むしろ、利用しない方がおかしいとすら思えます。

今53000店ある保険薬局は半減するだろうとする報告もあります。これが正しいかどうかの議論は別としても、今後調剤専門薬局の経営が厳しくなることについて、異論を持つ方はもはやいらっしゃらないのではないでしょうか。80年代に本格的スタートを切った医薬分業の動きは、将来日本が高齢化社会を迎えた時の医療費抑制という使命を色濃く持っていました。
当時非常に政治力の強い医師から薬を切り離し、薬の使用量そのものを適正化すると共に、薬価の引き下げもし易い環境整備の任を背負っていたのです。当時調剤の出来る薬局や薬剤師は皆無に近い状態だったからこそ、マネーインセンティブで誘導してきたわけです。 分業率が60%を超え、想定の2倍以上の保険薬局が整備された段階で、そのインセンティブが続くと期待する方が誤りです。仮に薬局数が半減したら、5 兆円を超える調剤市場のかなりの部分が流動化するタイミングがくるでしょう。


著者:赤川信一郎

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