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1.慢性疾患治療薬のアドヒアランス向上を目指した服薬指導とは。(前編)

1.慢性疾患治療薬のアドヒアランス向上を目指した服薬指導とは。(前編)

2013年11月13日 (水) 09時00分配信 投稿日:13/11/13 09:00 icon_view 734view

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治療継続率が低下しがちな慢性疾患のアドヒアランス向上を目的とした服薬指導の在り方について、医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー取締役の堀美智子先生から、そのポイントとテクニックを伝授していただいた。

アドヒアランスという言葉が最近注目され、いろいろなところで使われるようになってきています。まずは私自身がアドヒアランスについて真剣に考えなければいけないと思った背景についてお話したいと思います。
 

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■どんな気持ちで患者に薬を渡しているか

仕事柄、ドクターにインタビューをする機会が多く、皆さん非常に好意的に質問に答え、指導してくださいます。しかし、以前パーキンソン病の専門医にお会いしたとき、辛辣なご批判を受けたことがありました。インタビューの終盤、パーキンソン病治療薬の副作用についてお聞きしようとしたら、ドクターの顔色が変わってしまったのです。そして「薬剤師はどうして副作用のことばかり言いたがるんだ!」と激昂されてしまいました。しばらくインタビューへ行くのが怖くなってしまうほどの経験だったのですが、あのとき言われたことを思い返すと、こういうことだったのだと思います。

最初から自分がパーキンソン病だとわかって来院される方は多くありません。脚が痛くなったりして、整形外科などを受診される方もいらっしゃいます。検査をした結果、精密検査を勧められ、パーキンソン病の専門医を紹介される。患者さんは単なる脚の痛みだと思っていたのに、よく分からない病名を告げられて、不安でいっぱいになってしまいます。そんななか薬局へ行って薬と一緒に渡された紙には、幻覚妄想などの副作用に注意うんぬんと書かれている。患者さんにしてみれば、自分はまだそれほどひどくないのだから、こんなに怖い薬を飲む必要はないだろうと思ってもしかたありません。薬剤師は本当に薬を飲んでほしいと思って、患者さんと接しているのだろうか。そういう苛立ちをドクターは私にぶつけたのだと思います。"薬剤師が話すこと自体が害になる"という意味での"薬害"であってはいけないのです。

当然ながら、薬は飲んでいただかなければ効きません。うちの薬局にいらっしゃる高血圧の患者さんの服薬継続率を調べようとしたのですが、数値の特定化は簡単なことではありませんでした。来局されなくなったとき、普通薬剤師はこう考えます。「血圧を正常値にしなければいけないことは、皆さん分かっているはずです。これだけ薬局があるんだから、うちに来なくなったとしても、ほかの薬局へ行ってるはず」と。果たして本当にそうでしょうか? もしもほかの薬局へ行っていなかったら、その患者さんはどうなってしまうのでしょう。こうした現状を踏まえ、高血圧を例に生活習慣病のアドヒアランスについて薬局としてできることを考えてみたいと思います。


■コンプライアンスからアドヒアランスへ

高血圧の治療の目的は、心血管病の発症、進展、再発を抑制して死亡を減少させ、高血圧患者が充実した日常生活を送れるよう支援することにあります。この4月から厚生労働省が「第2次健康日本21」というプロジェクトを始動しているのですが、そこでは平成34年度の血圧の平均目標値として、成人男性134ミリメートルHg、成人女性129ミリメートルHgというふうに、平成22年時点よりも共に4ミリメートルHg低い数値を設定しています。一方で140/90ミリメートルHgを高血圧とすると、薬物治療を受けているのは該当者の5割のみという実態があります。特に30~40代に至っては8~9割りが未治療と推測されています。こうした現状を改善するために薬局ができることの一つとして、店頭に血圧計を置いて、症状に関わらず来局したら血圧を測る習慣をつけていただくという方法があります。そして高血圧の方に受診勧奨を行い、すでに薬物治療を受けている方には服用継続の重要性を理解していただく。これが薬剤師の本来の役割といえるのですが、服薬指導の主目的が薬物治療を受けている人の副作用を予防・早期発見することにシフトしている感は否めません。

WHOは2001年に「コンプライアンスではなく、アドヒアランスを推進する」という方向性を示しています。コンプライアンスとは、患者が治療者の決定に従うことで、アドヒアランスとは、患者が自ら治療に納得し参加することを意味します。慶応義塾大学保健管理センターのウェブサイトにこんな情報が公開されていました。患者および医師へのアンケート調査結果なのですが、「高血圧が脳卒中、心筋梗塞などの原因になることを知っている」のは、未治療高血圧患者で約30%、治療中の高血圧患者で約50%。治療中の人でさえ、半分しか理解していないのです。それに対してほぼ100%の医師が患者に対して説明をして、患者は十分理解していると思っているそうです。薬剤師も薬を出すだけではいけません。薬局で、待ち時間に患者さんに見ていただけるような、高血圧の治療意義などを説明するポスターを壁一面に張り出すのも一つの方法です。血圧を下げすぎると血流が悪くなるので、下げないほうがいいのではないかと誤解している患者さんも意外といらっしゃいます。情報が正しいかどうかは別として、活字になった情報の説得力の大きさも無視してはいけません。血圧をコントロールすることの大切さを説明した後で、「あなたの説明は、違うらしいですよ」と店頭に置いてあった週刊誌の誤った記事を読んだ患者さんに言われたこともありました。少々手間はかかりますが、店頭に置く雑誌には事前に目を通して、違うと思った部分、あるいは大事な部分にはマーカーを引くなどして、薬剤師のコメントを挟んでおくくらいの心がけが必要なのかもしれません。

WHOは服薬継続率におけるアドヒアランスの高さを、約8割に設定しています。患者さんの残薬の多さについては、どうして飲まれなかったのか、薬剤師の対応に問題があったと考えるべきです。捨てられるはずだった薬を再利用することが、医療費削減ではありません。薬が継続して服用されることで、病気を改善させ医療費の追加を防ぐことが、真の意味での医療費削減といえるのです。電子薬歴を利用すれば、患者さんの来局がどの程度滞っているのか一目瞭然です。そろそろ受診や来局をうながす連絡を入れるべき時期であることが手軽に分かるはずですし、そういった行為がアドヒアランス向上へとつながるのです。
 

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※この記事は、2013年4月20日に開かれた「第2回 薬剤師力向上セミナー」(株式会社グッドサイクルシステム主催)の内容をもとに構成したものです。


■講師プロフィール

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堀 美智子(ほり みちこ)
薬剤師。医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター 医薬研究所所長。名城大学薬学部卒。同大薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998年から2002年日本薬剤師会常務理事。主な著書に『OTC薬ハンドブック』(じほう)、『ハイリスク薬説明支援ガイドブック』(じほう)など。

photograph by Hideyuki Igarashi


後編はこちら・・・

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