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『薬剤師力向上セミナー』6.薬剤疫学への誘い-前編-

『薬剤師力向上セミナー』6.薬剤疫学への誘い-前編-

2014年04月09日 (水) 08時00分配信 投稿日:14/04/09 08:00 icon_view 368view

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医師や医学系研究者の研究ツールとして必要不可欠な統計分析の手法を、薬剤師で取り入れている人はまだまだ少ない現状を踏まえて、統計分析の重要性とその活用法について、おふたりに指導していただいた。

杉森 裕樹先生

■薬剤師にとってなぜ統計分析が必要なのか?

みなさんは薬剤疫学という言葉を耳にしたことがありますでしょうか。日本薬剤疫学会の久保田潔理事長の言葉を引用すると、薬剤疫学は「人の集団における薬物使用による効果と副作用を、薬学的手法を用いて研究する学問」ということになります。これまで医療の世界では動物実験のデータを重視する傾向がありましたが、薬剤疫学は人を対象にするところが大きなポイントです。

疫学というのは統計分析をした結果、有意差があったかどうかが大事であるため、個人ではなく集団を相手にするのが特徴です。ここで言う集団とは国や地域のことで、まさにメガデータを意味します。普段からみなさんは、薬歴管理システムや調剤などのデータを扱っておられると思いますが、そういった現場のデータが薬剤疫学でも非常に重要な要素になるのです。市販後調査も製薬企業などが多く実施しているのが現状ですが、医師や薬剤師が主導となって始める研究も今後必要です。

近年では薬学部も6年制となり、薬剤師の職能拡大も視野に入ってきております。問診を十分に行って副作用を未然に防いだり、臨床の場で直接患者さん関わる機会が増えています。そしてそのような幅広い業務を通して、さまざまなデータが集積されています。経済産業省が指導する形で、こういった医療データベースを積極的に活用することで、経済を活性化させようという動き(「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」)も一方であります。まだまだ慎重論もありますが、欧米の流れを見ると、そういったデータは今後ますます重要になっていくだろうと個人的には思っています。

現状の業務の中では、データを分析するゆとりなどなかなか持てない、と医療関係者の多くは思っているかもしれません。しかし年間の医療費が40兆円に届こうとしている今日、国民にレベルの高い医療を効率よく提供するためにも、こうしたデータを分析して、何らかのアクションにつなげる動きは、日本でも徐々に重視されるようになるはずです。


静野 潤先生

(パート1)

■Excelによる統計分析で実際にできることとは

今日は<エクセル統計>の紹介ではあるのですが、実際にデータを解析するときに一番手間がかかるのは、統計解析にかけられるようにデータを準備する作業で、全体の9割くらいがその作業になります。ですから<エクセル統計>を使うところだけお話するとあっという間に終わってしまうので、その手前のExcelを使ったデータの整理のしかたや、Excelだけでできることなどをお話して、最後に<エクセル統計>の使い方を説明したいと思います。

Excelにはピボットテーブルという機能がありまして、これはビジネス・データを分析するための集計機能といえます。このピボットテーブルを使うと、たとえば患者さんごとや、薬剤師さんごとなど、さまざまな視点で集計をすることが可能になります。ほかにもたとえば薬歴管理のデータベースに入っている情報と何らかのアンケートのデータを結合することも、Excelを使うとできるようになります。統計で使う数値を求めるときは、統計関数と呼ばれる機能もありますし、分析ツールといって簡単な統計グラフを書いたり、実験のデータを分析するようなごく初歩的な機能も入っています。一方でExcelのみの場合、集計したり、その結果を選定したりという作業をバラバラにやらなければいけないのですが、統計ソフトを使えばこういったことをひとまとめに簡単にできてしまいます。

今日は、薬局を利用されるときに書いていただく初回の問診票のデータを分析するという設定で、Excelを使って実習していきたいと思います。まずアンケートの回答をデータにする前に、どんな回答のしかたがあるのか見ていきましょう(図1)。


アンケートの回答方法は主に、SA(シングルアンサー)、MA(マルチプルアンサー)、数量、FA(フリーアンサー)もしくはOA(オープンアンサー)の4つに分けられます。SAは、性別で男か女のどちらかに○をつけたりするような、選択肢からあてはまるものを1つだけ選ぶ回答方法です。MAは、該当する選択肢を複数選ぶ方法で、たとえばどんなアレルギーを持っているか、あてはまるものをすべて答えてもらうときなどに用いられます。数量というのは、数値を直接書いてもらう方法で、日付や年齢、身長、体重などを記入するのがこれになります。FAまたはOAは、文章や名前などを記入していただく方法です。

これらをどのようにしてデータ化していくか、次に考えていきましょう。SAの場合、質問事項に対して答えは1つなので、選択肢に番号を振っておいてその番号を入力するのが最も簡単な方法です。あるいは性別などの場合は「男」「女」というふうに、文字を直接入力するのもExcelであれば可能です。MAの場合は、選択肢ごとに1列用意します。先ほどの「どのようなアレルギーですか?」という質問だと、6つの選択肢があるので6列用意する必要があります。そして○がついている場合は「1」、ついていない場合は「0」を入力します。数量やFAについては、質問ごとに1列設けて回答をそのまま入力します。

このようにして入力したのが図2になります。


列に対して質問が何なのかがひと目でわかるように、1列ずつに見出しをつけることが大切です。これは後々の処理でも必要になってきます。左端には、回答した人を特定できるような情報、たとえば患者さんの保険証番号などを入れます。ここまでがデータ入力前の準備作業となります。日付のデータは、和暦の場合「S45.10.22」、西暦の場合「1970/10/22」と入れます。時間を入れたい場合は、10時15分なら「10:15」とします。回答がない場合はセルに何も入力せずに、空白のままにしておきます。

生年月日の右側に「記入時満年齢」という列を設けていますが、アンケートでは聞いていないので、記入日のデータとその人の生年月日から計算することになります(図3)。


これはふたつの関数を組み合わせて求めるのですが、YEARFRAC関数は、開始日と終了日を入れるとその間の期間を算出してくれます。この場合、開始日のほうに生年月日を、終了日のほうに記入日を設定すると年数が求められます。ただし今回は満年齢を出したいので、今度はYEARFRAC関数の結果に小数点以下を切り捨ててくれるINT関数を用います。このようにさまざまな形にデータを加工できるのも、エクセルの便利なところといえます。


(次ページ)ここまでがデータ分析の9割になりますので・・・

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