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9.高齢者医療

9.高齢者医療

2010年12月14日 (火) 09時00分配信 投稿日:10/12/14 09:00 icon_view 204view

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■この記事について


超高齢社会と言われている日本では、介護の分野における薬剤師の職能が注目されていますが、皆さんは準備を進めていますか?今後薬剤師として地域医療に関わりたいと考えている人にとっては、避けては通れない道になることでしょう。皆さんは介護の現場で薬剤師がどのような活動をしているかをご存知ですか?

日本同様に高齢化が進むカナダでは、65歳以上の約30人に1人が老人ホームのような施設で暮らしているそうです(2007年CBC NEWSのデータ)。高齢になるほど薬の量や種類も増え、管理が大変になるのはどこの国でも同じようです。

カナダやオーストラリアに在住中は在宅の現場を見ることはできませんでしたが、カナダにある老人ホームで週に一回勤務している薬剤師に付き添って、1日の業務を体験する機会がありました。筆者には経験のない事も多かったので、今回ご紹介したいと思います。カナダの薬剤師が行っていることは、日本では必要のない事なのでしょうか、それとも今後担っていける役割なのでしょうか。カナダの薬剤師の業務から、新たな可能性を見出していきましょう。

 

■老人ホームの種類


高齢者医療を考える上でみなさんにとってなじみ深いのは、老人ホームなどの老人保健施設ではないでしょうか?すでに、施設の薬を調剤したり、お届けしている薬局もあると思います。施設を担当する他の医療従事者(医師や看護師等)とのカンファレンスに参加したり、直接入居者に服薬指導をする機会もあれば、薬を配達するだけの薬局もあることでしょう。皆さんは、実際どの施設のお薬を作り、お届けしているのか把握していましたか?これらを意識することで、入居者やその施設を担当している他の医療従事者のニーズが見えてくるかもしれません。
ひとくちに老人ホームといっても、介護の度合いに応じて施設が分類されています。(表1)重度の介護が必要な特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、リハビリや継続的な医療サービスを目的とした老人保健施設や療養型医療施設、心身や経済的な問題のために在宅療養ができない人を対象とした住居(養護老人ホームや軽費老人ホーム)等、その目的や状況によって選択する施設は様々であることがわかります。カナダでも同じように分類がなされており、それぞれの施設で薬剤師の役割は異なるようです。

表1


※カナダではこれ以外にアルツハイマー病患者を対象とした老人ホーム(Alzheimers Care)もあります。

筆者が訪問したのは、介護の必要度が中程度である老人保健施設(Rehabilitation Care)と療養型医療施設(Long term Care)の機能を併せ持つ施設で、担当薬剤師は薬の調剤及び配達以外に、週に1度施設を訪問しています。 主な役割は、薬剤管理指導業務、入居者や入居者家族を含めた担当医療従事者によるカンファレンスへの参加、他の医療従事者との情報共有や質疑応答、備蓄医薬品の使用割合確認や補充、処方医薬品の適正使用評価、適用外使用医薬品に関する保険適用申請など、その業務の幅は広く忙しい1日を過ごしています。これらの役割を順番にみていきましょう。

 

■薬剤管理指導業務


※薬局における薬剤管理指導業務に関しては、第5回目の記事(薬歴と記録)でご紹介しています。

施設で行われている薬剤管理指導業務も、基本的には薬局で行われているものと同様です。施設においても、インターネットを介して患者医療データーベースにアクセス出来ますので、検査値や診断内容等を把握できますが、施設の場合はより病院に近いイメージで、カルテのような医療記録が常備されているので、その記録から十分な情報を得る事ができます。

週に一度の訪問時にはまず、看護師や医師による1週間分の記録を確認する業務から始まります。処方内容から入居者の日々の生活状況等も確認でき、血圧や血糖値等も毎日測定して記録を残しているため、検査値から総合的に評価する事も出来ます。確認する内容は主に薬物治療に焦点を当てたものですが、日々の生活における入居者の症状の変化や行動などから副作用をいち早く発見する事も重要な役割の一つです。

処方薬と診断内容、検査値等を照らし合わせて、一つひとつの医薬品の処方意図を明確にし、診断に適当でない薬剤が処方されていないか、患者の薬物動態等から必要以上(もしくは必要以下)の用量・用法で処方されていないかなどを評価し、必要であれば医師に照会します。

以下の写真は、薬剤管理指導業務の一例で、医師に診断名の追加記載や減量の提案、不適切医薬品の指摘と各種検査実施の依頼を行っています。 この作業に関しては、処方医薬品の適正使用評価、適用外使用医薬品に関する保険適用申請に関する項目で詳しく説明します。

写真1

薬剤管理指導業務の一例(診断名の記載や減量の提案、不適切医薬品の指摘と各種検査実施の依頼)


■記録の確認とカンファレンスへの参加


1週間分の確認が済むと、個々の入居者対応に移ります。この施設では、週に2~3回入居者やその家族を含めたカンファレンスが行われており、担当医師や看護師が定期的に個別の指導(相談)を行っています。勤務の日は薬剤師も参加し、薬の説明や服薬状況、考えられ得る副作用や注意点等について入居者と家族に説明する事もあります。カンファレンスの前に個々の入居者の薬歴を確認し、薬剤管理指導業務を行った上で参加します。

 

■他の医療従事者との情報共有や質疑応答


施設訪問時には、看護師からの薬に関する質問も多く、 薬のスペシャリストとして信頼されている様子が見受けられました。



■備蓄医薬品の使用割合確認や補充


施設内には、それぞれの階にナースステーションのような部屋が設けられており、 各部屋に備蓄医薬品が設置されています。
これは、看護師が急な発熱や吐き気などの緊急時に使用できるよう、、 それぞれ備蓄医薬品リスト及び使用方法(用法・用量)が記載されたリストを設置しています。
週に1度の訪問時は、使用済みの備蓄医薬品を確認し、必要に応じて使用した看護師に確認したり、 定期的に補充を行っています。

写真2



■処方医薬品の適正使用評価、適用外使用医薬品に関する保険適用申請


施設に入居している高齢者の特徴として肝臓や腎臓の機能が低下していることから、検査値項目から求められるクレアチニンクリアランスを用いて薬物動態の観点から副作用の可能性や用量等を評価することができます。また、カナダでは医薬品ごとに保険適用の有無が厳しく規制されており、診断内容と合わない薬が処方されていたり、必要以上の量や期間で処方されている場合は保険が適用されません。そのため、薬剤師は医薬品の適正使用や保険会社による制限に関して正確で豊富な知識を持つ事が求められ、入居者が問題なく治療に必要な医薬品を服用できるように医薬品使用の適性を評価することは重要な役割といえます。
適用外の処方がある場合、保険会社に適用外使用医薬品の申請を文書にて行う必要があります。例えば、アルツハイマー病の薬であるアリセプト(ドネペジル)は、高価な薬であることから、薬を飲み始めるのに精神科医や専門医による診断書を必要とし、継続治療のためには定期的な“精神状態に関する検査”による評価が求められます。初期から中期までのアルツハイマー病であれば服用により進行を遅らせることができても、末期では薬の服用が患者のQOL向上に寄与しないことから、薬の無意味な服用を避けさせる意味で規制が設けられているようです。作業療法士が行った精神状態に関する検査の評価内容をもとに、薬剤師は処方削除を医師に提案したり、保険会社に継続治療と保険適用の申請を行います。それ以外にも、高脂血症治療薬のリピトール(アトルバスタチン)や骨粗鬆症治療薬のフォサマック(アレンドロン酸ナトリウム)なども同様に高価な薬であると同時に長期服用による副作用のリスクも考えられることから、有用性とのバランスを検討した上で継続治療の必要性を評価する必要があります。患者のQOLや医療経済を意識した薬の適性使用評価は、論理的な判断が求められる薬剤師ならではの役割であるように感じました。薬の適性使用に関しては、薬の適用以外に入居者の嚥下機能の評価を行っており、薬の服用状況を評価する上で役立っています。



■処方薬の調剤と管理


この施設では医師は常勤ではなく、薬剤師同様に週に数回定期的に訪問しています。入居者の薬も処方しており、処方された薬は老人ホーム処方専用の薬局へ運ばれ、日本同様に自動分包機で調剤されます。用法毎にホッチキス止めも行われており、日本のやり方に似ていると感じました。分包紙には服用する日にちや服用時点、薬の名前や錠数まで記載されており、仕分けするスタッフを気遣った方法で行われています。調剤済みの薬は施設内でお薬カートの中にある入居者の写真付お薬ケースに保管され、施設のスタッフが食事の時間に入居者に服用させているようです。週に1回訪問している薬剤師も、他の曜日はその薬局で調剤・監査をしているそうです。一般的な薬局とは異なり老人ホーム処方専用の薬局は工場のようで、数台ある自動分包機により流れ作業でひたすら調剤しているそうです。

 

■まとめ


日本やカナダ、オーストラリアでは医療制度が異なるため、同じやり方をまねても同様の効果を得られるとは限りません。特に保険適用申請の部分においては、きちんと疑義照会が出来ていれば、適用外処方でもそこまで厳しい規制が設けられているわけではないので、患者様が服用できなくなるという事もありません。ただし、医薬品の適正使用においては、患者が必要以上に服用していたり、適切な量で服用出来ていない場合は、薬の専門家としてきちんとした評価を行い、医師にフィードバック出来る立場でなければならないのではないでしょうか。そういった意味でも、今回の見学は薬剤師の役割や職能を改めて考えるきっかけになり、とても有意義な経験が出来たように感じます。
老人保健施設等に入居している患者さんに今後どのような介入ができるかを、再度皆さんにも考えて頂ければ幸いです。



著者:五味さやか

 

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・2.調剤関連
・3.監査方法
・4.投薬とカウンセリング
・5.薬学と記録
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・8.医療システム
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

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