新着記事・レポート

カテゴリーを選択

三カ国での薬学比較

<<前の記事へ

次の記事へ>>

5.薬学と記録

5.薬学と記録

2009年10月21日 (水) 14時58分配信 投稿日:09/10/21 14:58 icon_view 324view

お気に入りに登録

お気に入りに登録

icon_view 324view

これまで記事では、薬局における基本業務である調剤から投薬までの流れを、他の国と比較しながら見てきました。
今回は、その続きともいえる薬歴に焦点を当ててみて行きたいと思います。

日本においては服薬指導内容の記録が当たり前の業務として行われていますよね。ルーチンワークになってはいませんか?他の国ではどうでしょう。どんな記録の取り方がなされているのか、薬歴をどのように活かしているのか… あなたの日々の薬歴記録業務を見直すきっかけになれば、と思います。



■服薬指導内容の記録




日本では、指導内容の記録が制度上義務であり、時間を要する業務の一つと認識されていますが、オーストラリアやカナダでは薬歴の記録はあっても、全ての州で服薬指導内容の記録が行われているわけではありません。
その理由として、カウンセリングに対する報酬が支払われないためです。

薬剤師の役割として調剤業務よりもカウンセリングが重要視されているため、カウンセリングは薬剤師の義務であり、むしろ当たり前の業務として認識されています。
また、家庭医制度やかかりつけ薬局・薬剤師が機能しているオーストラリアやカナダでは、日本のように患者が複数の薬局にかかるケースも少なく、薬剤師が患者情報を管理しやすいという利点もあります。

ただし、なかには途中で“トランスファー(薬局同士で患者の薬歴情報を交換または移動することの出来るシステム)”という方法を用いて薬局を変更する患者も存在し、さらに複数の薬剤師が勤務する薬局のおいては、日本の薬歴システムのように、前回の来局でどのような内容が話されたかがわかるような記録があったほうが機能的といえるでしょう。
日本の薬局で使用されているコンピュータシステムは、他の国に比べて最も先進的であるように感じました。しかし、オーストラリアの医薬品バーコードによるコンピュータ監査システム等、まだまだ参考に出来る部分や改善点があるはずなので、よりよいものを目指してさらに追及して頂きたいものです。

■Medication Management Review(薬剤管理指導業務)-カナダの場合-1




「薬剤管理指導業務」という言葉を聞いても、あまりイメージがわかないかもしれませんが、ここでの“Medication Review”とは、患者情報や薬歴、検査、患者インタビュー等から得られた情報をもとに、薬物治療を再検討し、医師や他の医療従事者に提案する一連の作業を意味します。
この「薬剤管理指導業務」は現在、日本でも病院薬剤師により病棟活動の一環として行われていますが、カナダでは薬局の薬剤師でも行う事ができるのです。

日本では薬局の薬剤師が病院のカルテ等を閲覧することが出来ないため、患者からの情報収集により出来るだけ多くの情報を引き出して服薬指導にあたっています。
しかし、患者さんの多くが薬剤師に対して話したがらなかったり、検査値等を知らなかったりという事も少なくありません。
そんな中で厳密な薬歴調査を薬局で行う事は難しく、また薬局薬剤師と医師との連携は、制度的にも関係が築きにくい立場であるように感じます。

このような弊害がありながらも「薬剤管理指導業務」がカナダの薬局で可能なのは、“患者医療情報共有システム”というカナダ特有(現在アルバータ州のみ)の医療システムが導入されているからなのです。医師のカルテを確認しなくても、インターネットにアクセスするだけで瞬時にいつでも必要な時に、患者の医療情報を確認できるのがこのシステムの利点です。

このシステムを通して検査値も確認出来るため、薬の効果や肝機能および腎機能の状態等も把握できます。肝代謝および腎排泄の薬の区別及び調節は薬剤師の専門といっても過言ではありません。高齢患者に対する薬の用量管理等もこのシステムにより可能となるのです。
これらのプロセスにより、起こり得る副作用の予測も立ちやすくなりますし、服薬指導の際に大いに活用できるでしょう。

■Medication Management Review(薬剤管理指導業務)-カナダの場合-2




カナダでは服薬指導内容の記録の義務がありませんが、患者ごとに必要に応じて「薬剤管理指導業務」を行っています。下記は一例です。

◆医師への提案内容

写真1.Medication Review

(1)Problem <問題点>

まず、問題点を列挙することで論点を明確にします。ここでは、肝機能と腎機能の低下および患者が訴えている‘震え’の症状悪化を明示。
(2)Assessment and Interpretation<評価と解釈>
問題点により起こり得る弊害や事象を示すことで、より具体的な理解を求めます。ここでは、肝機能低下により副作用が発現しやすい薬を列挙することで、用量調整の必要性を示唆。
また、患者が訴えている‘震え’の症状は薬による副作用である可能性が高いと評価すると同時に、その薬の必要性に関しても再検討が必要である旨を述べている。
(3)Recommendation<提案内容>
問題点と評価から、具体的な提案内容を医師に提示する。ここでは、一部医薬品の服用中止や増量に関する再検討の依頼、肝機能・腎機能検査の実施と検査値による薬用量調整の提案を行っている。

◆話合いの内容及び結果
医師に提案書をFAXした後、診察後に医師と電話や対面により提案内容に関しディスカッションを行います。その後互いの理解を明確なものにするために再度レポート(Outcome)をFAXし、話合いの内容及び結果が合っているかに対し、同意を得る手順を取っています。


写真2.Medication Management Review(Outcome)

以上は一薬局で用いているフォーマットの一例ですが、他の薬局でも独自のやり方で医師とコミュニケーションをとることで、患者の薬剤管理指導を行っています。アルバータ州はカナダの中でも比較的「薬剤師-医師」の連携が取れている州で、医師から直接薬剤師に電話で問い合わせが入る事も日常よくみられます。

■Medication Management Review(薬剤管理指導業務)-オーストラリアの場合




オーストラリアにおいても「薬剤管理指導業務」は行なわれていますが、合法的に行うには講習を受講して資格を取る必要があります。
オーストラリアにはカナダのアルバータ州のような“患者医療情報共有システム”が存在しないため薬局内ではできませんが、主に在宅と老人ホームにて行われています。これらの患者さんの多くは高齢者であり多くの薬を服用しているにも関わらず、ケアを担当しているのが看護師であるため、薬に関する適切なケアを受けられていなかったようです。

そこで薬剤師の専門性が求められるようになり、現在薬の適正使用の観点で薬剤師が薬剤管理指導を行っています。(表1)


表1.薬剤師の管理指導の評価

カナダの老人ホーム等においても、オーストラリア同様に「薬剤管理指導業務」は行われています。今後日本で在宅の分野まで薬剤師の職域を拡げていくのに、「薬剤管理指導業務」は大きな足掛かりになるかもしれません。



■最後に




今回は投薬業務に引き続き、薬歴や薬剤管理指導業務等の記録に関してご紹介いたしました。
患者の医療情報(検査値、診断結果、服用薬)及びカウンセリング内容から、薬物治療の観点で他の医療従事者に提案を行う「Medication Review(薬剤管理指導業務)」は三か国共通して行われている薬剤師業務であることから、薬剤師に求められている重要なスキルと言えるでしょう。
日本では主に病院で行われていますが、今後在宅や老人ホームにおいても求められてくる専門性なのではないでしょうか。服薬指導内容の記録は、三か国の中で日本でのみ実施されている特殊な業務である事をおわかり頂けたと思います。

服薬指導記録の存在しないカナダの薬局で勤めてみることで、改めて記録の必要性を感じました。時間を要する業務の一つでもありますし、すでにルーチンの一部になってしまっているかもしれませんが、「なぜ記録が必要なのか」、「どのみち記録を取らなければならないのなら、どうやったら自分にとっても他の薬剤師にとっても使いやすいものになるのか」等、再度考えてみてください。
もっと有効な記録の取り方がみえてくるかもしれません。


著者:五味さやか

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・2.調剤関連
・3.監査方法
・4.投薬とカウンセリング
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・8.医療システム
・9.高齢者医療
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

Good3

コメントする

コメントする

コメント

回答:0件

記事・レポート(1336件)

show

2017.09.20 new 260.いよいよ動き出した第二薬剤師会 【薬剤師業界のウラガワ】

2017.09.13 new 259.“要注目”検討会での方向性 【薬剤師業界のウラガワ】

2017.09.07 91.先生 【世塵・風塵】

2017.09.06 258.この表現に耳を疑った 【薬剤師業界のウラガワ】

2017.08.30 257.言葉の印象が事の重大さを遠ざける? 【薬剤師業界のウラガワ】

もっと見る

業界ニュース(19957件)

show

アンケート

show
ただいま、募集中のアンケートはありません。

もっと見る

セミナー情報(2件)

show

ブログ(5653件)

show

求人情報

show

よく見られている
新着記事・レポートランキング 集計期間:09月17日~09月24日

もっと見る

よく見られている
薬剤師のQ&Aランキング 集計期間:09月17日~09月24日

もっと見る