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三カ国での薬学比較

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2.調剤関連

2.調剤関連

2009年06月30日 (火) 16時13分配信 投稿日:09/06/30 16:13 icon_view 358view

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■この記事について




皆さんが普段行っている調剤、全世界で同じように行われていると思っていませんか?
十何種類もの薬が記載された処方せんを調剤するのは、時間がかかるし簡単なことではありませんよね。薬局に一人しか薬剤師がいない他の国では、一体どのように調剤・監査・カウンセリングをしているのでしょうか。日本・カナダ・オーストラリアの三カ国を比較しながら見て行きましょう。

日本では日常茶飯事で行われている散剤の混合や軟膏・クリーム・水剤の調製、他の国ではあまり行われていないってこと、ご存知でしたか?「PTPシート・SPシート」と聞けば、日本の薬剤師の誰もが思い浮かべることが出来ますが、カナダではPTPシートよりも、ボトルから裸錠を取り出して計数調剤する方が一般的です。

このように調剤方法は国によって様々で、それぞれの工夫により簡単に、そしてより迅速に行うことが可能になるのです。1日150枚~400枚の処方箋を一人の薬剤師がこなしているもう一つの理由が見えてくるかもしれません。


■処方せんの様式




呼び方は世界共通で「Prescription(処方せん)」でも、その記載内容や規定は国によって様々。

      
写真:(左から)1.Japan、2.Australia(リピート処方せん(左)処方せん(右))、3.Canadaの処方せん

◆処方せん記載形式
オーストラリアやカナダでは医師による手書き処方箋も未だに多く、字の読みにくさは世界共通のようです。ラテン語による表記が多く見られます。一般名処方も一般的に行われています。処方薬の数も3~10種類以内のものが一般的で、日本のように10~30種類の医薬品が名前を連ねることはありません。

◆患者情報
日本では必須項目である保険番号の記載が、カナダやオーストラリアでは行われていないため、初来局患者に対し保険番号を確認する必要があります。カナダやオーストラリアでは、名前や生年月日以外に住所の記載が一般的です。

◆処方せん期限
カナダやオーストラリアでは、処方せん期限の記載はなく、さらに日本の4日間に比べて非常に長く、18ヵ月(加)・12ヵ月(豪)と法律で定められています。処方せん期限が長い理由として、リピート/リフィル処方の存在が挙げられます。

リピート/リフィル処方
日本には存在しない、海外特有の処方せんシステムの一つです。リピート/リフィル処方とは、高血圧や高脂血症など慢性疾患の患者に対し、医療機関を受診しなくても、医師の指定したリピート回数の範囲内で薬を繰り返し受け取ることができるシステムのことを言います。

オーストラリアでは随時薬局内でリピート処方せんが発行され、患者は薬が必要な時にそのリピート処方箋を持って薬局を再来局することで繰り返し薬を受け取ることができます。リピート処方せんに残されたリピート回数が記載されているので、再度医療機関を受診するタイミングを患者自身が把握することができるのです。

カナダではリピート処方せんの発行はされませんが、薬の入れ物にリフィル回数の記載があります。薬が無くなり次第直接薬局を再来するか、電話で問い合わせることでリフィル処方を依頼できます。さらにカナダでは「自動リフィルサービス」という薬局のサービスがあり、コンピュータで管理されているリフィル回数や服用期間に基づき自動的にリフィル処方が準備され、「薬が準備出来ているので必要な時に取りに来てください」という自動音声電話を配信することができます。

また、リフィル回数がなくなると、「リフィル回数がゼロになりましたので、医師を受診する必要があります」という自動音声電話が配信されるので、忘れやすい人にも安心できるサービスかもしれません。

※オーストラリアでは「リピート処方」、カナダでは「リフィル処方」と呼ばれています。

◆麻薬処方箋

オーストラリアでは、ヘロイン中毒患者に用いられる薬「メサドン」の処方が特殊で、コンピュータにより処方せんが印刷された場合、薬名と用量は医師による手書き二重記載が義務付けられています。これにより偽造処方せんを防いでいるようです。


■調剤方法




日本ではPTPシートやSPシートによる計数調剤が一般的であるのに対し、オーストラリアでは処方せんに記載されている錠数が医薬品一箱分の内容量(主に20、30、60、100錠単位)に合わせられているので、箱やボトル単位での調剤が一般的です。一方カナダでは、50錠~1000錠単位で販売されているボトルから裸錠を取り出し、カウンティングボードという器械を使って計数調剤します。患者には薬の種類ごとにバイアルに入れてお渡しします。

   
写真:(左から)4.Japan、5.Australia


写真:6.Canada

◆散剤・水剤・軟膏・クリーム
日本では頻繁に行われているこれらの剤形の調剤や調製は、オーストラリアではあまり行われていません。もちろん散剤の分包機はなく、水剤を扱う器具も棚にしまわれたままになっている事もよくあるようです。カナダでは、軟膏やクリームの調製が時々見られますが、日本よりも頻度が少ないのが事実です。

◆小児薬の調剤

散剤といえば、日本では小児への薬としてよく見られますが、海外ではどのようにしているのでしょうか?
カナダでは水剤で対応している薬局が多いようですが、臭いや味のためにシロップ剤を苦手とする小児に対しては、自分で選んで服用できるドライシロップのような日本のスタイルのほうが好まれるかもしれませんね。

◆分包調剤
薬局によっては錠剤専用分包機を利用しているところや、散剤分包機の錠剤部分を利用して分包しているところなど様々でしょう。オーストラリアやカナダでも、日本同様に病院や大きな調剤薬局などで錠剤専用分包機を利用しているところもあるようですが、非常に稀のようです。多くの薬局が、プラスチックのピルケースに薬剤師が手作業で1週間分ごとにお薬を分包しているようです。一般的に行われている方法には2種類あり、それぞれドーセットボックス・ウェブスターパック(ブリスターパック)と呼ばれており、オーストラリアとカナダの両国で使用されています。


   
写真:(左から)7.ウェブスターパック(ブリスターパック)(左) ドーセットボックス(右))、8.ウェブスターパック説明書

   
写真:(左から)9.自動分包機、10.お薬カレンダー

ドーセットボックスは、開閉可能で再利用のできる硬いプラスチック容器を使用し、ものによっては外出時など、一日分(朝・昼・夕・寝る前)だけ取りはずして持ち運べるようになっている物もあります。

ウェブスターパックは、錠剤のヒートのように一回分ずつ薬を押し出して取り出すことができるので、非力な高齢者でも簡単に使用できますが、使い捨てタイプです。どちらの分包方法が用いられるかは、患者さんの意向や薬局の方針によって決められています。ウェブスターパックの場合、顔写真や服用薬などを記載した紙を一緒に付けることかできることから、老人ホーム等で重宝されています。

※オーストラリアではウェブスターパック、カナダではブリスターパックやバブルパックと呼ばれています。呼び方は異なりますが、同じ原理で利用されています。(下記表参照)



写真協力:フローラ薬局(茨城県水戸市)、Neerim South Pharmacy(オーストラリア,メルボルン)、Rexal drug stores(カナダ,エドモントン)

 

■最後に




調剤方法だけを見ても、三カ国でこれだけ違う事が分かります。オーストラリアやカナダでは、調剤全般は基本的にテクニシャンに任されているため、調剤自体を簡素化することで薬剤師でなくても確実に行われる仕組みづくりが国の政策として行われているのです。

1日400枚近くの処方箋を一人で対応している友人の薬剤師(カナダ人)に、「以前勤めていた日本の会社で、薬剤師15人程度が500枚近くの処方箋を対応していたが、2時間近く患者を待たせていた」、と話したところ、「何故そんなに薬剤師と時間が必要なのか?」と驚かれました。確かに彼が疑問に思うのも当然です。一人で対応していても待ち時間は最長15分~20分程度に過ぎないからです。今まで当たり前と思い疑問さえ感じなかった事も、他のやり方や考え方を取り入れることで"当たり前"が"何故?"に変わる瞬間でした。

これでは、日本の薬剤師の職能が疑問視されても不思議ではありませんよね。カナダやオーストラリアでは、処方箋の応需だけでなく、医学的な質問も日々対応し、一次医療としての役割も果たしています。日本のシステムが悪いのか、教育が悪いのか。考えられることはたくさんありますが、まずは"気づく"事が大切です。普段の"当たり前"の中に"何故?"と気づくことができれば、何かを変えられるかも知れませんね。


著者:五味さやか


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、リンク先、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・3.監査方法
・4.投薬とカウンセリング
・5.薬学と記録
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・8.医療システム
・9.高齢者医療
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

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