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3.監査方法

3.監査方法

2009年08月24日 (月) 18時29分配信 投稿日:09/08/24 18:29 icon_view 284view

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■この記事について




今回は、前回の調剤に引き続き監査と提供書類等の違いを紹介していきます。

海外ではファーマシーテクニシャン主導で調剤が行われていますが、監査からは薬剤師の出番です。オーストラリアでは、日本と同じように処方箋枚数により薬剤師の人数を定めていますが、カナダでは一薬局に一人しかいないことが多いのです。

一人しか薬剤師がいないで監査は誰がするの?というのが自然に生まれる疑問だと思いますが、逆にカナダの薬剤師に言わせれば、なんで一人以上必要なの?といったところでしょう。この疑問が実現可能になるトリックをご紹介していきます。
日本でも、こうしたら業務改善につながるのでは?というヒントが見つかるかもしれません。

 

■監査方法




日本で2人の薬剤師により調剤業務と監査業務を分担しているように、オーストラリアやカナダでも調剤と監査は基本的に別の人が担当しています。しかし、その監査の方法にちょっとした違いがあることを発見しました。オーストラリアとカナダ、それぞれの特徴を見て行きましょう。

◆バーコードリーダーによるコンピュータ監査:オーストラリア


私が研修を行った薬局は、薬剤師1人と薬局アシスタント1人で運営している小さな薬局でした。オーストラリアの薬局では、処方せん150枚/1日に対して1人の薬剤師しか配置できないため、このような「一人薬剤師薬局」は多く見られます。

そんな薬局でも安心して監査を任せられるのが薬局にあるコンピュータ。普段処方せん内容入力や薬歴確認のために用いているあのコンピュータが監査マシーンとしても活躍しているのです。
処方せん情報をコンピュータに正確に入力したあと、調剤した薬の箱についているバーコードをバーコードリーダーで読み取らせると、その薬が入力された薬と一致しているかどうか、コンピュータの画面上に表示されます。(以下写真参考)


画像1.正確な薬の場合(青色:薬名・患者氏名・患者住所・処方箋番号・前回調剤日)


画像2.間違った薬の場合(赤色:薬名・Drug not found in last 20 dispensings.)

正確な薬が調剤された場合は青色で表示され、薬名以外に前回の調剤日まで表示されます。間違った薬を読み取った場合は、危険を表わす赤色で表示され、薬名と「この薬は以前調剤された20種類の薬と一致しません。」というメッセージが表示されます。入力された薬名と調剤した薬名が一致していないことになります。
この作業によって入力された薬と調剤した薬が同一であるという監査を行うことができますが、入力段階で間違えている可能性もあるため、最後に処方せん原本と調剤した薬とが一致しているかの確認は必須になります。

オーストラリアの場合は医師の処方する薬の量を、医薬品一箱分の内容量(主に20、30、60、100錠単位)と一致させているため、日本のように一錠ずつ数える手間がかかりません。
調剤から監査までの時間の短縮、また調剤ミスを減らす意味でも合理的な方法といえるでしょう。


◆DIN(Drug Identifcation Number:医薬品識別番号)による監査:カナダ


カナダでは、厚労省で承認を得た全医薬品に対しDIN(Drug Identifcation Number:医薬品識別番号)が設けられています。その番号自体が固有のものであるため、監査時には薬名によるものとDINによる2種類の監査が可能になります。
一人の薬剤師でも2種類の監査方法が可能となるため、薬剤師本人が調剤及び監査を行っても調剤ミスを減らすことができるのです。もちろんオーストラリアと同様、入力段階で間違えている可能性もあるため、最後に処方せん原本と調剤した薬とが一致しているかの確認は必須になります。

尚、麻薬など限定された薬は二重計数監査(ダブルカウンティング)が行われていますが、その他の医薬品に関しては、テクニシャンが行った計数調剤を薬剤師が監査の段階で再度行うことはありません。薬の総数に関しては、テクニシャンへの信頼の上に成り立っているようです。

 
画像3.薬局用処方せんデータと薬のDIN

カナダでの新しい動きとして注目されているのが、チェッキングテクニシャン(監査テクニシャン)の存在です。テクニシャンの調剤業務における役割に関しては、前回の記事でご紹介しましたが、その役割は現在も拡大しています。
以前までは、薬剤師による最終監査が必須であったのに対し、テクニシャンが行った調剤を、別のテクニシャンが監査をするという事が法律で認められるようになったのです。途中で薬剤師が処方監査を行いますが、最終監査は行わずに済むのです。チェッキングテクニシャンになるためには、一定の期間研修を受ける必要があります。
現在、テクニシャンによる調剤監査は病院でのみ行われていますが、数年以内に薬局にも導入されるといわれています。


■薬袋や説明書の交付




日本では、薬の種類ごとや飲み方毎に薬袋に入れてお渡しするのが一般的ですが、カナダやオーストラリアには薬袋は存在しません。
パソコンに入力した患者情報や飲み方、注意事項などはラベルシールとして印刷されるので、それらを箱やバイアルに貼りつけてお渡しします。


画像4.Japan


画像5.Australia


画像6.Canada

また、それぞれの薬に対する注意事項、例えば
「眠気がでます。運転は控えてください。」
「食べ物と一緒に服用してください。」
「グレープフルーツとの服用は避けてください。」
「冷蔵庫で保存してください。」

なども、小さなラベルシールが準備されているので、飲み方のラベルシールと一緒に貼り付けておくことで注意を促すことができます。


■ラベルシール




 
画像7.注意事項ラベルシール
印刷されてくるラベルシール(左)、それ以外に必要と判断される際に使われるラベルシール(右)

オーストラリアでは、注意事項ラベルシール毎に番号が割り振られており、患者情報や飲み方が記載されたラベルシールにそれぞれ各医薬品に対応した番号が印刷されてくるので、その番号に合わせてラベルシールを選択して貼りつけるようになっています。

カナダでは、飲み方のラベルシールと一緒に注意事項のラベルシールも印刷されるため、ラベルシールを選択する手間が省け、貼り間違いなどのミスも低減させるメリットがあります。薬ごとに飲み方と注意事項のラベルシールが貼りつけてあることで、いつも服用する時に注意事項を確認できるのは、患者さんにとっても注意事項の見落としが無く安全ですし、服用中に誤った薬袋への戻し間違い等を防げる点で有効な方法といえるでしょう。

オーストラリアやカナダでも、薬の種類ごとに患者用のお薬説明書はありますが、注意事項を全てラベルシールで表示しているため、薬剤情報提供文書(薬情)の発行は日本のように義務ではありません。
さらに、箱単位での譲渡の場合、一箱ごとに患者用説明文書が添付されているため一医薬品ごとに詳しい説明を得ることができますし、患者に読む義務が課せられているのが現状です。カナダのように箱ではなく計数調剤してバイアルで譲渡する場合は、初めての薬で心配な患者等からの依頼や薬剤師の判断により随時発行しているようです。

説明の義務は薬剤師としてはもちろん必要なことですが、患者に対し説明文書に目を通す義務を課し自己責任を追及する考え方は、海外らしい発想であるかもしれません。
これらの国でセルフメディケーションが広がっているのも、このような文化的背景が影響しているのかもしれませんね。

写真協力:フローラ薬局(茨城県水戸市)、East Bentleigh Pharmacy(オーストラリア,メルボルン)、Rexal drug store(カナダ,エドモントン)



■最後に




監査の仕方は国によって様々ですが、薬袋を使用しているのは日本だけのようですね。

薬袋を使用する場合のデメリットの1つとして、患者の混乱が挙げられます。薬局によっては「一医薬品一薬袋」で統一しているところもあれば、同じ飲み方の薬が複数ある場合は一つの薬袋にまとめて入れているところもあり、患者の混乱を招いているのが現状です。

また、たくさんの薬袋を譲渡された患者さんの中には、服用途中に薬を誤った薬袋に戻し間違え、飲み方を間違えてしまうというケースも考えられます。薬袋に薬名が記載されているとはいっても、患者さんにとってはPTPシートに記載された薬名と薬袋に記載された薬名とを照合させるのは、決して簡単な作業とは言えません。自分の服用している医薬品名を覚えていない人が多く、唯一知っている内容といえば錠剤の色くらいです。

そういった意味でも、ラベルシールを薬の箱やバイアルに直接貼り付け、一医薬品ごとに管理する方法は、合理的であり安全面においても有効であるように感じました。
同時に、注意事項のシールが飲み方のラベルシールの近くに貼り付けてあることで、患者が服用するたびに確認できるというのはとてもよいアイディアであるように思います。

たくさんの種類を服用する患者さんが、それぞれの医薬品に対する注意事項を覚えていられるでしょうか?薬情を毎回確認するのも大変です。
日本でも、それぞれの薬袋に錠剤の写真や薬袋要注意事項ラベルシールなどがあったら、より安全で親切な対応になると思いませんか?


著者:五味さやか

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・2.調剤関連
・4.投薬とカウンセリング
・5.薬学と記録
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・8.医療システム
・9.高齢者医療
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

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