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8.医療システム

8.医療システム

2010年08月09日 (月) 09時00分配信 投稿日:10/08/09 09:00 icon_view 350view

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前回まで海外の医療制度に関してお話しましたので、今回は少し掘り下げて医療システムに関してお話したいと思います。

まず、日本にはどのような医療システムがあるでしょうか?

代表例として、電子カルテが挙げられると思います。そもそも電子カルテは業務の効率化を大きな目的として構築されましたが、医療情報の一元管理やセキュリ ティの付与が出来る等、安全面においても有効とされています。ただし、新しいシステムの構築においては利点だけでなく欠点がうまれるのも事実。ディスプレ イ上での一覧性の低さや入力の手間等の課題は残っています。

また、現在議論されているレセプトのオンライン請求の義務化も医療システムの一つに該当しますが、このシステムも電子カルテ同様に業務の改善につながりま すが、診療所や個人薬局など、従業員の高齢化や高額な施設整備負担の問題等で閉店(院)に追い込まれざるを得ないケースも出てきています。果たしてそれが 地域医療にとって吉とでるのか、凶とでるのか。広い視野で見ていく必要がありそうです。

カナダやオーストラリアにも興味深い医療システムがいくつかあり、中には日本にも導入できたら、と思うものがありました。制度や文化の違いにより、実現が 難しいものも中にはありますが、いつか新たなシステムを導入する際に参考にして頂いたり、似たようなシステムが導入される際に海外にもこんなシステムが あったなと思い出して頂ければ幸いです。



●患者医療情報共有システム(Alberta Net Care)


カナダで発見した最も興味深いシステムの一つが「患者医療情報共有システム」です。医療システムの基本は国ではなく州で取り決められているため、これは私が住んでいたカナダのアルバータ州に限ったシステムになりますが、今後日本にも取り入れたいシステムの一つと感じました。

アルバータ州においても、2005年から政府主導で本格的に電子化が進められ、2008年の完全電子化を目指して改革が行われてきました。

患者医療情報共有システム(Alberta Net Care 『アルバータネットケア』)と は、国が運営している大規模な患者医療情報データベースであり、患者基本情報(氏名,年齢,生年月日,住所,電話番号,アレルギー等)から診断内容、検査 値、手術歴、薬歴まで、インターネットを介して閲覧が可能になります。データはすべて病院やクリニック、薬局等から集めており、薬歴情報では、いつどこの 薬局でどのような内容で調剤されたかまでも特定することが出来るのです。

診断画像記録の共有は、他病院における同じ検査の実施を防ぐことにもつながり、医療コストの削減や患者の心理的負担を軽減にも有効であると考えられていま す。これらの情報は、日々の業務の中で病院や薬局のコンピュータを介して、自動的にデータベースにアップデートされるよう設定されており、情報は常に新し い状態が保たれています。さらに、サイト閲覧中に直接追加情報を入力する事も可能です。






この「患者医療情報共有システム(Alberta Net Care)」へのアクセス権を持っているのは、医師や薬剤師、看護師等の有資格者で、そのアクセス制限は厳密に行われています。各資格保有者は、“安全ID FOG”と 呼ばれる6桁の番号が表示されるキーホルダーを保有しており、その番号は1分ごとに随時変更されるように設定されています。この6ケタの番号を、個人のロ グインパスワードのあとに入力することで、ログイン情報とキーホルダーを保有している人のみがアクセスできるような仕組みになっています。さらにもう一段 階のログイン画面を設けることにより、厳密なアクセス制限を可能にしているのです。


このシステムを構築する上で、最もネックになるのが患者のプライバシーの問題であると思いますが、「Better Patient Information, Better Care Decision.(より良い治療の選択決定は、より良い患者情報から。)」という理念のもと、これまでの医師や薬剤師の連携および活躍により、プライバシーの領域を超えた理解を患者から得られているのです。その期待と信頼を裏切らないためにも、医療従事者による適正使用が求められると同時に、倫理観が求められます。


このシステムが可能になる背景として、カナダの病院がすべて公立(州立)であることが挙げられます。日本のような私立病院が存在しない(※ケベック州を除く)ため、病院同士の情報を共有でき、かつ政府による統括が可能となったのです。



●薬学情報ネットワーク(Pharmaceutical Information Network


「患者医療情報共有システム(Alberta Net Care)」で薬歴が参照できるのは、このPINと呼ばれる薬学情報ネットワークというシステムがあるからです。このシステムは、アルバータ州の薬剤師会 と協力関係を築く事で実現しており、薬歴の参照のみならず薬物相互作用や常用量などのDrug Informationも同時に参照する事が出来、医師等が活用しています。
 


ここでいう薬歴の内容は処方薬のみならず、日本における第一類医薬品のような制限のある一般用医薬品も記録の対象となっているため、OTC医薬品も 含まれます。このシステムは、新患で来局した患者の服用歴等を確認する際に役立つだけでなく、救急等で運ばれてきた患者の薬剤アレルギーや常用薬の確認、 最近購入した薬物による急性症状等の把握にも繋がるため、安全面においても非常に有効なシステムといえるでしょう。また、服用歴を確認出来る事から、患者 様がお薬手帳などを持ち歩く必要がありません。お薬手帳よりも確実な情報が瞬時に手に入るのです。



●リピート/リフィル処方


第三回目の調剤関連の記事で詳細をお伝えしましたが、これも医療システムの一つです。カナダとオーストラリアで共通するシステムで、日本のように薬を処方 してもらうために毎回医師を受診しなくても、医師の指定したリピート/リフィル回数の範囲内で薬局で薬を繰り返し受け取ることができます。

特に高血圧などのような慢性疾患の場合、家で測定を行う事で病状を把握できる薬の場合は、定期的に薬局を訪れ薬剤師と病状や副作用を確認することで十分の ようにも感じます。リピート処方で一度に受け取る事の出来る1回分の量は、1~3カ月分で、しばらくの間(1年程度)医師にかからないことから、リピート (リフィル)処方で薬を受け取る際に薬剤師との面接がより重要なものとなることは、皆さんもうご存じの事と思います。
※オーストラリアでは「リピート処方」、カナダでは「リフィル処方」と呼ばれています。

<リフィルお知らせ電話サービス>
リピート/リフィル処方の回数は、薬の種類や医師によって様々であり、人によってはリフィル回数がゼロになっているにも関わらず、勘違いをして薬を受け取りに薬局を訪れるということも少なくありません。そのような問題を解決するために、カナダでは「自動リフィルサービス」というサービスを薬局で提供しています。

コンピュータで管理されているリフィル回数や服用期間に基づき自動的にリフィル処方が準備され、「薬が準備出来ているので必要な時に取りに来てください」 という自動音声電話を発信することができます。またそれ以外にも、リフィル回数がなくなると、「リフィル回数がゼロになりましたので、医師を受診する必要 があります」というメッセージも発信されるので、受診忘れによるお薬切れ等を防ぐ事が出来ます。調剤したお薬のラベルにもリフィルの回数が記載されていま すが、忘れやすい人にも安心できるサービスであると思います。

 

●トランスファー(患者医療情報転送システム)


リフィル処方のあるカナダでは、急な転勤などで同じ薬局に通い続けられない場合もあります。そのような場合に移動先でリフィル処方を受け取れる、トランス ファーというシステムがあります。今まで通っていた薬局の名前等が分かれば、その薬局に問い合わせることで、新しい薬局にて患者様の情報を一括で引き受け る事ができるのです。レセコンで入力した情報をそのまま他の薬局に転送するようなイメージです。

日本では、新患の場合問診票を記載して頂くのが一般的な流れですが、このシステムのおかげで口頭による確認作業だけで済むようになりました。患者さんの負 担軽減や時間短縮にもなっています。このシステムは、他の州に移動した場合も適用出来るシステムなので、旅行先で薬がなくなった場合でも安心して薬を受け 取る事が出来ます。

 

●最後に


オーストラリアやカナダで実際に実施されている医療システムの内容をいくつか紹介しましたが、いかがでしたか?日本にもあったらいいなぁ、と思えるような内容がありませんでしたか?

まったく同じものを導入する必要はありませんが、日本流にアレンジして導入する事は十分出来ると思います。新たなシステムを考案する上で重要なのは、私たち医療者だけでなく、患者さんにとっていかにメリットとなるかという部分であると思います。

上記の医療システムも、原点にはいつも患者さんがいるように感じます。「Better Patient Information, Better Care Decision.(より良い治療の選択決定は、より良い患者情報から。)」という理念にもあるように、いつも中心に患者さんがいる事で、プライバシー等の問題を超えた理解を得られているのかもしれませんね。


著者:五味さやか

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・2.調剤関連
・3.監査方法
・4.投薬とカウンセリング
・5.薬学と記録
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・9.高齢者医療
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

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