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4.投薬とカウンセリング

4.投薬とカウンセリング

2009年09月19日 (土) 11時50分配信 投稿日:09/09/19 11:50 icon_view 287view

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■この記事について




今回は、調剤関連記事の最後である投薬とカウンセリングに関し、他国の状況を紹介していきます。
日本において服薬指導の重要性が議論されているように、カナダやオーストラリアでも薬剤師による服薬指導が最も重要な業務として位置づけられています。
調剤や監査をテクニシャンに任せられるような仕組みづくりがなされてきたのも、煩雑であった薬剤師の業務内容を減らすことで、患者との会話、すなわちカウンセリングにかける時間を設けるためだと考えられています。

薬剤師の共通の役割である投薬。国によってどんな違いがあるのかみていきましょう。

 

■プライマリケアとしてのカウンセリング




服薬指導と聞くと、調剤薬局で働かれている方は、「処方せん薬」に対する指導と考えられると思いますが、カナダやオーストラリアでは半数近くがOTC医薬品のカウンセリングになります。日本では、体調に変化があればまず考えるのが病院への受診ですが、医師不足の状態にある家庭医制度下のカナダやオーストラリアでは、家庭医による緊急の予約が取れない場合も多く、1週間程度待たされる事もまれではないのです。
このような状況の中で人々の唯一の拠り所となっているのが薬局の薬剤師なのです。

また、OTC医薬品が日本よりも安価で手に入るということもあり、病院やクリニックへ行くよりもまず先に薬局を訪れ、薬剤師に相談することが一般的になっています。
このような需要もあり、カナダやオーストラリアの薬学教育では、OTC医薬品の販売方法やカウンセリングの方法など、徹底した教育がなされています。

OTC医薬品とはいっても、その成分などを考えると一概に同じものとは言えません。日本のOTC医薬品に比べ、一般的に単剤処方のものが多く、患者さんの疾患や常用薬に合わせてOTC医薬品が選択しやすくなっています。
また、海外の薬局内を見学していて驚いたことの一つに、スイッチOTCの種類の多さがあります。日本では処方せん医薬品として当たり前のように考えられている医薬品の多くが、オーストラリアやカナダではスイッチOTCとして購入できるようになっていたのです。

それらの多くは“Phamracist Only Medicine”といって、薬剤師によるカウンセリングなしでは購入出来ないOTC医薬品に分類されています。日本でいう第一類医薬品に該当しますが、日本との違いは患者自身が商品を選ぶことができず、薬剤師に症状や常用薬等を伝えることで薬剤師が選択及び推薦するのが基本です。
これら“Pharmacist Only Medicine”に分類されているOTC医薬品の一部は、カナダでは処方せん薬でないにも関わらず薬歴への記録が義務付けられています。(表1)


表1.記録が義務付けられているOTC医薬品の一部

限定されたOTC医薬品の記録ですが、処方せん薬との相互作用を確認する点においても有効です。この状況が実現させられるのも、こういった薬剤師によるカウンセリング力が認められている所以でしょう。制度の欠点を、専門家の裁量と職能の拡大により補っているように感じます。原点はいつも「患者の満足度」にあり、患者中心の医療を目指していることが見受けられます。

    


写真:スイッチOTCとして販売されている(左上)ニゾラール2%,1%、(右上)アスピリン80mg、(下)ジルテック10mg

医師への受診を勧める症状や状態に関してもしっかりと教育を受けているため、患者さんも安心して相談することが出来ているように感じます。
このような環境の構築には、先輩薬剤師や薬学教育関係者等による、長い年月に及ぶ努力や活躍があったことでしょう。

■OTC医薬品分類と登録販売者登場に至った背景




今までの日本において、OTC医薬品に関する法律が野放しであったがゆえに、医薬品が他の一般用品と同様に商品としてインターネット等で取引されてきました。
しかし一般の消費者は、箱に記載されている成分を見ても一体どんなものなのか、自分の処方された薬と相互作用を起こしうるものであるかどうかなど知る由もありません。

「効き目が悪いから2倍のんでみよう」という安易な考え方をする人もなかにはいたことでしょう。ものによっては2倍飲んだところで大きな被害が発生しないものありますが、分類わけがされていなかったこれまでは、安全性の低い薬と高い薬とを判断するのは困難でした。他の国に比べて日本のスイッチOTC薬の割合が少なく感じられたのは、これら背景があったからかもしれません。

2009年6月の薬事法改正でOTC医薬品が3つの区分に分類されるに至るまでに、他国(フランス、ドイツ、オ-ストラリア、イギリス、アメリカ)における医薬品販売制度等の視察が行われていた事を皆さんご存知でしたか?分類の名称に多少違いはありますが、リスクの低い薬を薬剤師以外の他の専門家を新たに設置することで対応させるというアイディアは、他の国のあり方を取り入れていますし、分類方法も似ています。(表2)
ただし日本の場合は、一般小売店で販売が可能な医薬品でも登録販売者の設置が必要である分、多少規制が厳しいようにも見受けられます。


表2.オーストラリア・イギリス

登録販売者の登場を、薬剤師の役割を奪われたと感じるか、もしくはこれらの背景を知った上で、他の専門家と仕事を分担し薬剤師がより専門的な服薬指導に集中できるように法が改正された、と感じるかは人それぞれだと思います。
改正後しばらくは弊害等もあるかと思われますが、薬の販売には薬剤師等の専門家による説明が前提、という認識を広げることにもつながり、ある意味チャンスかもしれません。

これがきっかけとなり、今まで把握しきれなかったOTC医薬品と処方せん医薬品との併用による相互作用の指導やOTC医薬品分野における薬剤師の職能向上へと導けるのではないでしょうか。

今後、OTC医薬品に関する教育が大学内及び薬剤師の生涯教育においても必要になっていく事でしょう。

■カウンセリング後のフォローアップ




カナダでは、薬局での服薬指導終了後も電話や再来局を促して再カウンセリングを行う「フォローアップ」を重要視しています。特に初めて来局された患者さんに対しては、服用上問題点はないか、指導内容は理解した上で服用出来ているか、等の確認を積極的に行っています。

日本の場合、「何か不都合があれば医師または薬剤師にご相談ください。」というフレーズが定着していることから、薬剤師よりも医師に相談するケースも少なくありません。

麻薬投薬の場合は、算定の関係で数日後に問い合わせをするケースもありますが、他の薬でも必要であればフォローアップをしてみてもよいのではないでしょうか。薬局によっては積極的に行っているところもあるかもしれませんね。
もちろん患者さんの了承が必要ですが、患者さんとの関係構築や副作用被害を最小限に抑える効果が期待できるように思いませんか?

写真協力:East Bentleigh Pharmacy(オーストラリア,メルボルン)、Rexal drug store(カナダ,エドモントン)

 

■最後に




今回は投薬業務に関し他国の状況を紹介しながら比較してみましたが、どの国においても服薬指導は薬剤師業務として重要視されているようです。

日本において、服薬指導が重要な職能として認識され始めたのがここ数年であることから、カウンセリングの技術等は患者からの期待度からみると、オーストラリアやカナダが一歩進んだ取り組みを行っているように感じます。特にOTC医薬品のカウンセリングにおける薬剤師の役割は大きく、制度に多少違いがあるとしても、役割としては日本においても他国と同じものが求められようとしています。

この二カ国においても現在の日本同様、葛藤や混沌の時代がありその時代を切り抜けてきたからこそ今があるのです。現在薬事法の改正や薬学教育の変更など、薬時に関する事柄が大きく変わろうとしている時代です。逆に考えれば、私たち薬剤師が自ら変えていける時代でもあるのです。

薬剤師に求められている事は本当は何なのか。自分が薬剤師としてどんな事をしたいと思っているのか。
改めて考えることで今までにない薬剤師の新しい像が見えてくるかもしれません。そんな時に一つの方法として海外の薬事情に目を向けてみてください。日本の良さや、さらなる改善につながる意外なヒントが見つかるかもしれません。


著者:五味さやか


*この記事は2018年3月30日に更新しました。
*本記事の掲載内容、データ、リンク先、著者の所属先や肩書などは掲載当時のものです。

 

「三カ国での薬学比較」の連載記事
・1.薬剤師を取り巻くスタッフの役割と位置づけ
・2.調剤関連
・3.監査方法
・5.薬学と記録
・6.医療制度 vol.1
・7.医療制度 vol.2
・8.医療システム
・9.高齢者医療
・10.薬学教育<実務実習>

*連載記事の一覧はこちら

 

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