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39.1型糖尿病のトップランナーからヴォーカルへ 今度は走りではなく、歌で想いを伝えたい 【1型糖尿病患者 中新井 美波氏】

39.1型糖尿病のトップランナーからヴォーカルへ 今度は走りではなく、歌で想いを伝えたい 【1型糖尿病患者 中新井 美波氏】

2015年10月07日 (水) 07時00分配信 投稿日:15/10/07 07:00 icon_view 106view

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提供:株式会社ウェルビー


1-GATA

 

小学6年生で1型糖尿病を発症しながらも、陸上競技のトップアスリートとして約10年間活躍した中新井美波さん。現在は、スポーツ用品メーカー「BODYMAKER」で営業として働く傍ら、モデル業や講演活動にも精力的に取り組んでいます。

今年1月には1型糖尿患者3人で結成したバンド「1-GATA(イチガタ)」のヴォーカルとしてデビューし、東京で初ライブも開催。「1型糖尿病患者のみんなに『何でもできる!』ということを伝えたくてバンドを結成しました。でもそれがゴールじゃない」と話します。(インタビュー、構成=荻島央江)

 

■1型糖尿病患者3人でバンドを結成

――1型糖尿病患者3人で結成したバンド「1-GATA(イチガタ)」がいよいよ2015年1月1日から始動しましたね。

はい、1月24日、25日は東京で初ライブを開催し、「キミ」など6曲を歌いました。私たちの音楽活動を通して、多くの方々に1型糖尿病を正しく理解してもらうこと、この病気の子供たちに「不可能なことはない。何でもできる」と希望を与えること、同じ病気のみなさんはもちろん他の病気で苦しんでいる人、病気だけでなく様々な悩みを抱えている人などすべての人が元気になれる音楽をつくっていくことを目指しています。

――結成のきっかけは?

メンバーの山川さん、吉田さんとは2014年5月に開催された1型糖尿病シンポジウムで知り合いました。シンポジウム後の懇親会で2人と同席になり、「バンドをできたらいいね」と盛り上がったのがそもそものきっかけです。2人は音楽が本職ですが、私は全くの素人。どうやらその席で「私が歌いたいです!」と言ったようなのですが、実はお酒も入っていてよく覚えていません(笑)。

本格的に準備を始めたのは8月くらい。9月からはボイストレーニングにも通っています。

初めてステージに立ったときは快感でした。私たちのライブを見に来てくださった方々にひたすら「伝われーー」と思いながら歌っていました。手を合わせて聴いてくれている母の姿が舞台上から見えて、涙が出ちゃいましたね。

 

■『マクベス』の一節に救われた

――中新井さんは元々陸上競技の選手でしたね。

中学校から大学まで走っていました。1型糖尿病を発症したのは小学6年生のとき。当時は「1型糖尿病患者が激しい運動をするなんてもってのほか」という時代でしたから主治医からは大丈夫か?と心配されましたが、走ることが何より好きだったので、自分の体と相談しながら陸上競技をすることにしました。

今振り返ると、競技人生は山あり谷ありでした。中学2年生のとき、全国で戦えるタイムを出し、調子のいい時期だったにもかかわらず、大きな大会のレース中に転倒して左大腿骨を骨折するという大けがを負い、全治1年と診断されました。「一線級に戻れるかは保証できない」と言われ、抜け殻状態でしたね。それまで全く苦にならなかった1型糖尿病の発症と骨折が重くのしかかってきました。「なんで神様は私にばかり試練を与えるのだろう」と思ったものです。

周りが心配するので表面的には平静を装っていましたが、もうすべてのことに投げやりでしたね。口では「もう一度走るから」と言っていたものの、心の中では「この足で走れるわけないよ」と絶望の中にいました。

――そこまで落ち込みながら、なぜまた走る気になったのですか。

「もう一度挑戦したい」と思わずにはいられない文章に出合ったからです。それは、シェイクスピアの戯曲『マクベス』の一節です。図書館で、別の本を取り出そうとしたとき、バサッとその棚にあるはずのない本が落ちた。それが『マクベス』で、たまたま開いた文章が目に止まったのです。

こんな一節でした。

明日、また明日、また明日と
時は小さな足取りで、
1日1日を歩み、
ついには歴史の最後の瞬間にたどり着く。
昨日という日はすべて塵と化す。
死への道を照らしてきた。
消えろ、消えろ、束の間の燈火!
人生は歩き回る陰法師。哀れな役者だ。
舞台の上で大げさに見栄を切っても
出場が終われば消えてしまう。
白痴のしゃべる物語だ。
わめき立てる怒りと響きは凄まじいが、
意味は何もありはしない。


とりわけ最後の「Signifying nothing(意味は何もありはしない)」を読んで、「そうか、私に降りかかる不運に意味はないのだな」と思えたのです。後になって読み返してみるとシェイクスピアの意図するところとは違うですが、そのときの私はそう捉えました。

「私は神様に嫌われている」とよく言っていました。でも、すべての出来事は神様が危害を与えようと思ってしたことじゃない。誰にでもあることで、私はたまたま糖尿病と骨折の2つが重なっただけ。「私は何をしとんねん。頑張らな」と思えたのです。

苦しいリハビリに耐え、復帰し、選手として注目されるようになりました。高校生のときには新聞で「1型糖尿病を抱えるランナー」として記事になったこともあります。当時は駅伝で区間3位とか11位と納得いく成績を残せていないのに、区間賞の選手より大勢の記者に囲まれ、走りの内容でなく、病気のことばかりを聞かれる。私の走りは誰からも評価されないのかと、感じました。でもそこで「だったら来年1位を獲ればいい」と思い直し、結果として次の年に2つの大きな駅伝で区間賞を獲得できた。このとき初めて自分で自分の病気のことを認められた気がします。

最初は自分の病気を公表することに戸惑いがありましたが、そのおかげで同じ1型糖尿病患者の仲間や、エアロビック競技選手の大村詠一さんと出会うことができました。今も妹分としていろいろ気にかけていただいています。「1-GATA」のメンバーと出会えたのも、大村さんが私を引っ張り出してくれたおかげと感謝の気持ちでいっぱいです。大村さんはいつも、“自由人”の私を「表に出る人間なのだからちゃんとしなさい」と本当の兄以上に注意してくれる(笑)。とてもありがたい存在です。

 

■歌うことを新たな武器に

――大学卒業を機に陸上競技から離れたのですね。

現役引退を決めてからしばらくは新しい生活や「走ることをやめた私に何が残るのだろう」と考えてしまいしんどかった時期もありましたが、今は歌という新たに手にした武器を磨くことばかりを考えています。

――現在、発売中の「キミ」では作詞もされていますね。どんな思いを込めたのですか。

少し歌詞を紹介しますね。

君に「ありがとう」を云うよ
大きな希望に向かって
共に走る仲間たちが僕の味方
君が居なくなると
少しは楽になるけど
君との出逢いに僕は強くなれたんだ


歌詞の中ではキミを1型糖尿病になぞらえています。「君に『ありがとう』を云うよ」というフレーズがありますが、いろんな試練を乗り越えた今だからこそ、心からそう思って綴りました。1型糖尿病になっていなかったら仲間には出会えなかったし、歌を歌ったり取材を受けたりする機会もありませんでした。つらい思いもたくさんしたけれど、悪いことばかりではなかった。今はそう思います。

私たちはキミを1型糖尿病に重ね合わせていますが、誰しも抱えている悩みや不安と置き換えれば、多くの人に共感してもらえる歌詞だと思います。1型糖尿病患者の皆さんを元気にしたいというのが結成のきっかけですが、「1-GATA」をもっと多くの人に知ってほしいし、私の想いが言葉と音になって、何かを見いだすきっかけに少しでもなれればと思っています。

 
 

話し手ご紹介

 
中新井
 

中新井 美波氏
http://1gatadm.wix.com/1gata

 
 

1991年神戸市生まれ。野球に明け暮れていた小学校6年生のとき1型糖尿病を発症するも、中学1年から本格的に陸上競技を始める。強豪校の須磨学園高校に進学後は全国高校駅伝や都道府県対抗女子駅伝などに出場、好成績を収める。大阪学院大学を経て、10年にわたる競技生活から引退。2014年、スポーツブランド「ボディメーカー」で知られるBB-SPORTS(大阪府吹田市)に入社。通信販売事業の営業を担当する傍ら、モデル業、講演活動に精力的に取り組むほか、1型糖尿病患者3人で結成したバンド「1-GATA(イチガタ)」のヴォーカルも務める。

 

■写真:1-GATA
1-GATAのメンバーは、2014年12月に解散したロックバンド「THE BOOM(ザ・ブーム)」のベーシスト山川浩正さん(右)、ヴォーカルの中新井さん、作曲家でキーボード担当の吉田敬さん(左)の3人。「キミ」は通信販売で購入できるほか、iTunesなどで配信中。収益は1型糖尿病の研究に役立てられる。

■BODYMAKER(ボディメーカー)
トレーニング、フィットネス、格闘技用品、アパレル商品を取り扱う。企画から生産・販売までを一貫して手掛けるSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel:アパレル製造小売企業)として展開。独自商品の開発、販売状況に応じた生産調整、物流、プロモーション、販売コストを抑えた店舗経営で、「高品質で低価格の商品」を提供している。すべてのアスリートのための日本発スポーツブランド。
【BODYMAKER】http://www.bodymaker.jp/

中新井さんはBB-SPORTSの営業部員としても活躍中。トップアスリートとしての経験や知見を活かした提案力、明るいキャラクターが強み。「東京マラソンEXPO2015」などの大規模なスポーツイベントではブース販売員としてユーザーと交流しながら商品紹介をしている。ボディメーカー社内腕相撲大会暫定1位。

B-BODYMAKER



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