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学会レポート_がん医療の変化の前で薬剤師が求められること

学会レポート_がん医療の変化の前で薬剤師が求められること

2017年05月11日 (木) 07時01分配信 投稿日:17/05/11 07:01 icon_view 2253view

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がん医療が急速に進歩しつつある現代、病院だけでなく在宅治療も可能になり、薬剤師に必要とされる知識と役割が大きく変化しています。2017年3月18~19日、「がんと生きる時代―薬剤師が紡ぐがん医療―」をテーマに、日本臨床腫瘍薬学会学術大会2017が開催されました。病院、薬局のそれぞれにおいて、これからの薬剤師はどうあるべきでしょうか。現役薬学部4年生の“薬学ガール“白石由莉さんが2日間の学術大会をレポートしました。(全3回)
レポーター・インタビュアー:“薬学ガール”白石由莉


2日間の学術大会をレポートする白石由莉さん


がん医療の変化の前で薬剤師が求められること
―日本臨床腫瘍薬学会学術大会2017 in新潟 01―


【目次】
1.AUCやGFRが生きた薬学につながった
2.肺がん医療の最新情報が提供される場
3.がんサバイバーに薬剤師ができることは
4.これからの薬剤師に求められるのは「信頼」


1.AUCやGFRが生きた薬学につながった

最初に訪れたのは「プレナリーセッション」です。
プレナリーセッションは「本会議」と訳されることもあるように、学会で重要とされるセッションのこと。抗VEGF抗体薬、ゲフィチニブ、カルボプラチンなど演目に並ぶ薬の名前が、いま腫瘍薬学の世界で注目されている薬剤を語っているようです。

さて、最初の発表は、「ペメトレキセド+カルボプラチン療法において血液毒性を予測する最適な用量設定法」。現在重要とされている抗がん剤のカルボプラチンについて、血液毒性を予測するための計算法についての検討でした。国内ではCockcroft-Gault(CG)法が多く用いられているそうですが、年齢や肥満度に応じて計算方法を変えていくことが大事だという発表でした。

AUC(血中濃度-時間曲線化面積) や、GFR(糸球体濾過量)など、日頃授業で勉強している用語が耳に飛び込んできました。それらはこれまで、教科書の上にしかなかったもの。実際に臨床の現場でどのように使われているのか理解していませんでした。しかし、この講演を聞いて、それらは単なる計算式ではなく、「抗がん剤の中毒症状が出る前に、血液濃度を測定して予測する」ことに活用されていることが実感できました。

「薬物動態学」の先生が言っていた「計算が苦手な人は嫌いな科目だけど、とても大事」という言葉がリアル迫ってきました。 “薬学”を“臨床”として立体的に感じられた瞬間でした。


 


初めての学術大会を聴講して白石さんは、「薬学と臨床がつながった」という
 



2.肺がん医療の最新情報が提供される場

続いて聴講したのは、医師が登壇する「最新の肺癌診療ガイドラインにおける薬物療法について」。私は「肺がん医療向上委員会」のメンバーでもあるため、参加してみることにしました。この講演は、ランチョンセミナーのためお弁当付き。お昼時間にも新しい情報を提供し、吸収していこうとする皆さんの意気込みを感じます。

講演では、肺がん医療がここ数年で飛躍的に進歩したこと、より早く患者さんに新しい医療を届けられるようにガイドラインを迅速に変更できるようにしてきたこと、患者さんの遺伝子変異の状況によって治療を変えていく時代になっていることなどがお話されていました。

現在の肺がん治療は、分子標的薬剤や、免疫チェックポイント阻害剤といった、従来にはなかった新しい薬が主流になってきています。大学の講義では、概要しか触れていなかったこれらのすさまじい進歩の様子が、学術大会では最先端の情報として提供されているのでした。

今回の学術大会への参加者の1人に話をうかがうことができました。岡山大学病院の現役薬剤師である蔵田さんです。蔵田さんによると、学術大会に参加する意義の1つは「つながり」とのこと。新しい出会いや再会があり、互いに情報共有できることが目的の1つなのだそうです。
蔵田さんの言うとおり、学術大会では薬剤師同士のほか、医師や看護師などさまざまな職種の人とつながりをもつことができます。自分の職種、職場以外の人たちとかかわることによって、さらに知識や見識の幅を広げていけるのではないかと思いました。

 


どの会場も大盛況でロビーには入りきれない人があふれていた


3.がんサバイバーに薬剤師ができることは

私はこれまで薬学ガールの活動をしてきて、たくさんの若いがん患者さんに出会いました。最近ではAYA世代(一般に15〜39歳)のがん患者さんに起こりうる問題も広く知られるようになっています。なかでも患者さんにとって大きな課題の1つは、「妊孕性温存」でしょう。このことに対し、薬剤師として何ができるのか、とても興味がありました。
そこで、シンポジウム3「がんとともに生きる―患者を支えるために、薬剤師ができること―」に参加しました。

このシンポジウムでは次の5題が発表されました。
・「がんサバイバーに必要なサポートと薬剤師の可能性」
・「保険薬局から、地域のがん患者を支える取り組み」
・「医療者が行うアピアランスケア、薬剤師ができるアピアランス支援」
・「AYA世代のがん患者が抱える問題点」
・「がんサバイバーシップケア」

とくに関心のあった「AYA世代のがん患者が抱える問題点」では、自身もサバイバーである岐阜大学医学部附属病院の薬剤師、吉見千明さんが、薬剤師とサバイバーの両方の視点から話されていました。また、「生殖医療」に関するセッションでは、会場に向けて「患者さんから妊孕性について質問されたことがありますか」との問いがあり、驚くことに、多くの参加者が手を挙げていました。

治療を受ける患者さんの妊孕性を考えることは、すでにそれほどまで薬剤師にとって身近になっていたのです。患者さんは病気や治療については、医師と相談することが多いと思いますが、薬剤師は薬の専門家という立場から、薬物療法を受ける人にきちんと情報を伝えていかなければいけないと思いました。また、そのためには産婦人科医、がん治療医、その他の医療者とのチームとしての連携が大切だと感じました。

がん治療の進歩のおかけで、がんの患者さんは、治療を受けながら長期にわたり生活していくようになりました。そこで出てきたのが長期にわたる合併症や再発不安とともに、就学や就労への問題、経済的問題など、サバイバー特有の問題だそうです。「妊孕性」もその1つ。
治療を優先しなければならないとはいえ、「妊孕性」は、患者さんの人生にかかわる大切なこと。私は、それを一緒に考えていける薬剤師になりたいと思いました。


 


会場1Fの展示ホールには多数のポスター発表が掲示されていた。発表を読む白石さん


4.これからの薬剤師に求められるのは「信頼」

いくつかのセッションを通し、薬局と病院、それぞれの立場によって薬剤師の役割が違うことを知りました。病院の薬剤師は医師と対等な立場で治療に参加していくことが必要とされ、薬局薬剤師はがん患者さんの増加と薬物治療の多様化・長期化に対応できるように、がんの勉強をしていくことが大切になっているようです。

そして、どちらにも共通して求められるのは、「患者さんの生き方を考えること」だと思います。それには、信頼関係を築くことが重要となります。その人の支えとなれるよう、対話していくことが必要です。また、あるセッションで、「感情の問題を解決できれば、薬物治療をよりよく行うこともできる」との話がありました。薬剤師が関わることで、患者さんの苦痛を大きく軽減できる可能性があるのだと知りました。

今後、これまでとは違う要素が、薬剤師に求められるようになってきます。私も、“寄り添う力”を熟成させていきたいと思いました。


レポーター・インタビュアー:白石由莉
写真・文:木口マリ





【プロフィール】
白石 由莉(しらいし ゆり)
現役薬学部の4年生。薬学ガールとして、がん情報サイト「オンコロ」の学生スタッフ、日本肺癌学会肺がん医療向上委員会の広報大使を務める。
勉強のこと、日々のこと、薬学ガールとしての活動などをFacebook、Twitterを通じて発信しています。
【薬学ガールFacebook】
【薬学ガールTwitter】



次回は、学術大会大会長の齊藤真一郎先生、実行委員長の野村久祥先生へのインタビューをお伝えします。


 

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