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がん患者さんの治療の伴走者として薬剤師に必要なこととは

がん患者さんの治療の伴走者として薬剤師に必要なこととは

2018年04月06日 (金) 10時00分配信 投稿日:18/04/06 10:00 icon_view 2837view

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前回に続き、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)学術大会2018、2日目のレポートを「薬学ガール」こと、現役薬学部5年生の白石由莉がお届けします。
これまで薬学ガールの活動を通して、がんサバイバーの方にお会いする機会がたびたびありましたが、患者さんの生の声から学ぶことや気づくこと、考えさせられることが多くありました。そこで2日目の午前中は、がんサバイバーの桜井なおみさんのセミナーを聴講しました。

レポーター・インタビュアー:“薬学ガール”白石由莉



がん患者さんの治療の伴走者として薬剤師に必要なこととは
―日本臨床腫瘍薬学会学術大会2018 in横浜 02―


【目次】
1.【Oncology セミナー2】がんサバイバーに聞く薬剤師に求めるコミュニケーションスキル
  ―真の「患者さんに寄り添う医療」とは―
2.【市民公開講座】あなたらしく生きるために―がんの治療と暮らしを語る―
  「がんのその後の人生設計?仕事人生を中心に?」_阿南里恵さん
  「治療中の暮らしを大切にしてほしい理由」_中村清吾先生
  「薬剤師が伝える、自分らしく生きるために―治療の副作用とどう付き合うか―」_佐野 元彦先生
3.2日間の学術大会に参加して・・・



朝一番のセッションでも会場は満席でした

1.【Oncology セミナー2】
がんサバイバーに聞く薬剤師に求めるコミュニケーションスキル
―真の「患者さんに寄り添う医療」とは―


このセミナーは、乳がんサバイバーの桜井なおみさんの講演です。2月の臨床試験学会に参加したときから、もっと学びたいと思ってきた「コミュニケーション」について、患者さんの視点からお話が聞けることから、参加を楽しみにしていました。

講演は、桜井さんの自己紹介から始まりました。AYA世代でのがん告知、自分ではコントロールできない病気と向き合い、自己コントロール感を失ったと感じたことがつらかったことなどの話がありました。
そんななか、病気になったことには意味があると考えたら気持ちが切り替わり、現実を受け止め、今できる最善の策を講じることができるようになったそうです。闘病当時の写真などを紹介しながら、淡々と語られていましたが、私には想像もつかないほどの壮絶な経験だったと思います。

入院治療中は、同世代の患者さんがいないなか、医療者には同世代が多かったこともあり、薬学部の学生の病棟実習に協力されたそうです。学生さんに当時抗がん剤治療による血管痛について質問したところ、詳しく調べて教えてもらえたことで、自分の身体で起きていることが理解でき、納得できたそうです。
そのとき、自分の周りにたくさんの患者さんが集まってきていたのを見て、皆が医療者にいろいろ聞きたいことがあるのに聞けないでいると気づいたとのことでした。

このエピソードから私は、患者さんからどんなことでも聞いてもらえる薬剤師、なぜ薬が効くのか、なぜ副作用が出るのか、どのくらい続くのかといった患者さんの疑問に対して、「人によって違います」などと教科書的な対応で一括りにせず、個別に寄り添って、一緒になって考えられる薬剤師になりたいと強く思いました。

桜井さんは、現在、一般社団法人CSRプロジェクトで、がんサバイバーの就労支援・相談活動にも取り組んでいます。社会生活のなかでがんと向き合う患者さんたちは、医療者との接点が少ないなかでも、治療の副作用のこと、仕事との両立のこと、治療費のことなど、困りごとや悩みごとのSOSをたくさん出しているといいます。
外来での抗がん剤治療が増えてきているなか、薬剤師がそのSOSを受け止める窓口となり、副作用を「有害事象グレード」で一元的に見るのではなく、それが患者さんの生活にどう影響しているのかに関心をもち、サポートできるようになれるとよいと思います。

桜井さんが最後のほうで話した、「5年生存率、生存期間や治療効果の評価を重視するのではなく、その人らしさをどう支えるか、治すことだけをゴールにしない、その人の人生をどう支えていくのか、ということを薬剤師にも考えてもらいたい」との言葉が強く心に残りました。

このセッションのあとは、ポスター発表の時間でした。どの部屋も多くの人で賑わっており、各ポスターの前では活発な議論が繰り広げられていました。



ポスター発表の会場は、あふれんばかりの人で賑わっていました


薬々連携についてのポスターの前で

2.【市民公開講座】
あなたらしく生きるために―がんの治療と暮らしを語る―


午後は、一般の方々や患者さんにも開かれた企画である市民公開講座がありました。
JASPOに2日間参加して、薬剤師としてチーム医療や薬々連携を通して、がん患者さんを治療という「点」だけではなく、その後の生活をも支えることを視野に学びを深めていく必要があると強く感じたこともあり、市民公開講座のタイトル「あなたらしく生きるために〜がんの治療と暮らしを語る」には、とても惹かれていました。

「がんのその後の人生設計〜仕事人生を中心に〜」_阿南里恵さん

阿南さんは仕事が生きがいだった23歳のときに子宮頸がんを告知され、抗がん剤治療と手術を経験しました。治療中の唯一の望みは職場復帰でしたが、治療により体力が落ちてしまったことで元の職場には復帰できず、その後就職した会社でも、リンパ浮腫に悩まされ、思うように働けず、職場の皆さんに迷惑をかけていると思って辞めてしまったそうです。

手術で子宮を全摘出していることから、恋愛でも悩むことが多く、治療は成功し命は助かりましたが、「こんなにつらい人生が来るなら、あのとき、治療しなければよかった」とさえ思うこともあったとの話には、思わず涙がこぼれてきました。

それにもかかわらず、今は、生かされている理由を考え、生きたいと思えるようになるまでのつらい経験を糧に、命が助かったがん患者さんが「生きたい」と思える社会にしていきたい、と語りました。本当に強く素晴らしい女性だと感嘆するばかりです。

      
仕事が生きがいの時期に宣告されたという阿南さん

「治療中の暮らしを大切にしてほしい理由」_中村清吾先生

中村先生は日本乳癌学会の理事長であり、がん啓発や患者支援に取り組むNPO法人キャンサーリボンズ(http://www.ribbonz.jp/)の理事長でもいらっしゃいます。
乳がんの罹患者は、2015年には年間9万人を数え、患者さんの年代も20代から70代以上まで幅広く分布しており、医療者として患者さんを支えるためには、年代ごとにそれぞれの人生の段階において、役割が果たせるよう生活を支える支援が必要であることを話しました。

中村先生は、2005年に、看護師や薬剤師など、それぞれの専門職が専門性を発揮して全人的なケア、チーム医療を実現するために、当時はまだ先進的な取り組みであった、ブレストセンターを聖路加病院に立ち上げた先生でもあります(現在は、昭和大学病院ブレストセンター長)。

医療者は、患者さんたちの「先の見えない不安」を払拭し、がんを治療するだけでなく、がんとともに生き、充実した人生を送ることを支援する伴走者でありたいと締めくくりました。


医療者は患者さんの人生を支援する伴走者でありたいと語る中村先生

「薬剤師が伝える、自分らしく生きるために
―治療の副作用とどう付き合うか―」_佐野 元彦先生


薬剤師の佐野先生からは、ご自身が幼少時に体験した再生不良性貧血や、大人になってからの急性骨髄性白血病の経験、お母様の闘病を支え看取られたご家族としての経験からの講演でした。

再生不良性貧血は、クロラムフェニコールによるもので、当時は不治の病といわれ、お母様のノートには息子にクスリを飲ませたことを自責する記述があったそうです。クスリ=リスクであると話されましたが、ご自身とともにお母様も、とてもつらかったことでしょう。急性骨髄性白血病の治療の際には無菌室に入り、社会から隔絶されているとの感覚に陥ったこともあったそうです。

また、2015年にお母様ががんに罹患されたことで、今度は家族の立場となり、病気の本人のつらさ=家族のつらさでもあることを実感したそうです。お母様の抗がん剤治療では、副作用が強く出たこともあり、お母様はいつも「ごめんね、ごめんね」と言っておられたそうです。この経験から、その後の再発時には「治療をしない」という選択を一緒にし、緩和ケア病棟では、お母様が気がかりなこと、これからどうしたいか、生きてきた意義などを一緒に時間をかけて話されたそうです。
最後の瞬間にみんなの顔を見たいから、と仰っていたお母様のために、佐野先生自ら目薬を点眼された話が胸に残りました。お母様は最後、「ありがとう、ありがとう」と言って亡くなられたそうです。

 
お母様とご自身の闘病経験を交えて語る佐野先生


パネルディスカッションでは、がんと向き合い自分らしく生きるヒントが伝えられました

市民公開講座では、3人の先生から心に響く大変貴重なお話を聴くことができました。
講演のあとは、パネルディスカッションもあり、最後に大会長の川尻先生から、聴講している市民の皆さんに、「ご自身の思いを医療従事者に伝えてください。ずっと一緒に歩んでいきたいと思っています。」と温かいメッセージが伝えられました。

一般の方々も多く参加されていましたが、私は、将来の薬剤師として各先生の貴重な話を受け止めました。自分には何ができるのか、患者さんの思いを大切に、生きることを支え、「自分らしさ」を取り戻すサポートができる薬剤師になりたい、と改めて強く感じた時間でした。

最後に、乳がん体験者の 川田祐子さんから、想いを込めたエレクトーンの生演奏5曲が会場に届けられました。学びと刺激の多かった2日間の疲れが癒され、心が洗われました!


川田さんは、がんのピアサポート 楽(らっく)みかわ 代表としても活動しています

3.2日間の学術大会に参加して・・・

2日目のJASPO学術大会は、思っていた以上に多くの方が参加されており、熱気でいっぱいでした。学術大会中に、JASPO会員は3,000名を超えたそうで、これからますます発展していくことと思います。

学術大会では、がん体験者の方々の貴重な生の声に触れることができ、学びがより深いものとなりました。患者さんの声は、誰のための医療なのか、何のために学ぶのか、薬剤師になりたかった理由などを思い出させてくれます。この学びを大切にして、日々に忙殺され置き去りになってしまいがちな初心を忘れずに、また学校での勉強に真摯な気持ちで向き合っていきたいと思います。

レポーター:白石由莉




【プロフィール】
白石 由莉(しらいし ゆり)
現役薬学部の5年生。薬学ガールとして、がん情報サイト「オンコロ」の学生スタッフ、日本肺癌学会肺がん医療向上委員会の広報大使を務める。
勉強のこと、日々のこと、薬学ガールとしての活動などをFacebook、Twitterを通じて発信しています。
【薬学ガールFacebook】
【薬学ガールTwitter】


次回は、大会長インタビューをお届けします。


 

著者:白石由莉

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