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学会レポート_臨床試験の最前線、薬剤師としてどのように貢献できるのか

学会レポート_臨床試験の最前線、薬剤師としてどのように貢献できるのか

2018年03月09日 (金) 10時00分配信 投稿日:18/03/09 10:00 icon_view 3310view

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医療の進歩に不可欠な臨床試験。臨床試験を進めるにあたり、薬剤師はどのように貢献できるのでしょうか。
2018年2月23~24日、日本臨床試験学会(理事長: 大橋 靖雄 先生:中央大学理工学部 人間総合理工学科 生物統計学研究室 教授)の第9回学術集会総会(大会長: 山口 拓洋 先生:東北大学大学院医学系研究科 医学統計学分野 教授)が、仙台にて開催されました。
現役薬学部5年生の白石由莉がレポートします(全3回)。

レポーター・インタビュアー:“薬学ガール”白石由莉
大会長・コメンテーター:東北大学大学院医学系研究科 医学統計学分野 教授 山口 拓洋先生





予防・検診・稀少疾患などさまざまな臨床試験を学ぶ【2日目レポート】


【目次】
1.【特別講演3】J-START 質の高い臨床試験の推進
2.【ランチョンセミナー4】CT 希少疾患領域における臨床試験
3.【セミナー4】臨床試験で用いる臨床アウトカム評価
4.学術集会総会に2日間参加して・・・



1.【特別講演3】J-START  質の高い臨床試験の推進

2日目のはじめに聴講したのは、特別講演「J-START 質の高い臨床試験の推進」です。J-STARTとは、2006年から取り組まれている、乳がん患者に対する超音波検診の有効性を検証する研究で、40歳代の12万人もの女性を対象とした大規模なRCT(ランダム化比較試験)による臨床試験です。

日本では現在、40歳以上の女性に対し、2年に1度のマンモグラフィー検診が推奨されていますが、マンモグラフィーでは、画像上がんも乳腺組織も白く写るため、とくに若い女性は乳腺密度が高いことから、マンモグラフィーによる発見が難しいことがあるそうです。現在は12万人の登録は終了し、研究に参加された方々の追跡調査と解析を行っているとのことです。

「科学的根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)」に臨床試験は欠かせませんが、予防や検診についても有効性が、臨床試験で検証されていることを知りました。近年、乳がんに罹患する著名人も多く、一般の人々の関心も高まってきています。薬剤師も医療専門職として、乳がん検診に関する正しい知識を持つべきであると感じましたし、私自身も女性として、この研究の結果には注目しておかねばならないと思いました。



<大会長 山口 拓洋先生より>
白石さんに取材頂いたこのセッションには、2点重要な点があります。
1点目は、臨床試験では、新しい医薬品や医療機器の有用性を検討するだけではなく、予防や検診の有効性などもの検証も行われているということです。臨床試験では、どうしても新薬や新しい医療機器の開発に注目が集まりがちですが、今後、この種の研究もますます重要になってくると思います。

2点目は、乳がんの検診法についてです。「早期発見・早期治療のためにがん検診が必要」と思われていますが、日本人女性は欧米人女性に比べ、デンスブレスト(高濃度乳腺)の比率が高いとされています。マンモグラフィーの弱点を、超音波の追加により補える検診法かどうか注目されています。


特別講演は、一番広い会場で行われ、たくさんの方が参加されていた



2.【ランチョンセミナー4】CT 希少疾患領域における臨床試験

お昼は、株式会社クリニカル・トライアルのランチョンセミナーに参加しました。
同社は、私もスタッフを務める、がん情報サイト「オンコロ」を運営する会社で、臨床試験の被験者募集のサポートに取り組む企業です。

セミナーの前半は、NPO法人肺がん患者の会ワンステップの代表で、肺がんサバイバーの長谷川一男さんの講演でした。

肺がんは近年、特に薬物療法が大きく進歩しており、遺伝子変異に基づいて治療薬を選択する個別化医療が進んできています。そのような状況で、肺がん患者にとって臨床試験は治療の選択肢の1つであり、知りたい情報であること、しかし日本では、臨床試験の情報を見つけることは難しい、との現状を話されました。いっぽうで米国では、民間団体がコールセンターで患者さんに合った臨床試験の情報を提供するサービスもあるそうです。

次に、株式会社クリニカル・トライアルの希少疾患・オンコロジー事業本部長の可知健太さんからは、2015年5月に開設された、がん情報サイト「オンコロ」での、がんの臨床試験被験者募集事業や、昨年末に開設された希少疾患情報サイト「RareS.レアズ」についての紹介がありました。

「オンコロ」では、開設からこれまでに、IRB(臨床試験審査委員会)の承認済み治験情報を62試験掲載し、累計2,000名以上の問い合わせに対応してきたとのことで、そのノウハウを希少疾患に活かし、希少疾患の情報集約、情報AI化、被験者募集システムの自動化を図る準備を進めていることを、熱意をもって語っておられました。

臨床試験の結果を早く出すためには、必要な症例数が集まらなくてはなりませんが、とくに希少疾患の場合、多施設共同臨床試験でも、被験者を集めることは難しいようです。また、患者さんたちにとっても、治療の選択肢となり得る臨床試験の情報を探すことは難しい現状があります。

このセッションに参加して、ITやAIなどのテクノロジー、患者さんたちの思いとネットワーク、臨床試験にかかわる人々の誠意や熱意が有機的につながれば、臨床試験を早く進めることができるのでは、と期待をもちました。

私も将来は薬剤師として、患者さんに臨床試験の情報を提供できるようにならなくては!と思いました。



<大会長 山口 拓洋先生より>
学術集会と株式会社クリニカル・トライアル共催のランチョンセミナーは、これまでの学術集会にない形式で開催されました。
発表者は、医師などの医療者ではなく、がん情報サイト「オンコロ」などを運営する株式会社クリニカル・トライアルのこれらのプロジェクトの責任者である可知さん、そして自身も肺がんサバイバーであり、日本肺がん患者連絡会 代表の長谷川一男さんでした。

内容は白石さんのレポートの通りですが、今後、医療系の学会においても、企業の方、患者さんをはじめたとした皆さんが、重要なステークホルダーになってくると思います。


臨床試験は患者にとって治療の選択肢、と話す長谷川さん



3.【セミナー4】臨床試験で用いる臨床アウトカム評価

2日目の最後に参加したのは、臨床試験のアウトカム(重要な臨床結果)に関するセミナーです。
1日目から、いくつかのセッションに参加して、臨床試験では、主に少しでも長く生きること、つまり生存期間の延長だけでなく、生活の質の維持向上を成果として計画立案されることがあることを知りました。
また、その成果を測る「ものさし」にも、さまざまなものや視点があることも知りました。このセミナーでは、そうした「ものさし」に関して詳しく学ぶことができました。

アウトカム評価の尺度(ものさし)には、海外で開発されたものも多く、日本で使用するためには、開発者への使用の許諾や日本版としての妥当性の検証が必要なことも知りました。臨床試験には、計画、実施、評価のそれぞれに、熟慮し検討すべき事項があり、本当に奥が深いです・・・!

また、臨床試験で試された治療(プロトコル治療)を医療者が評価とするのと、患者さんが評価する結果が違うことがあるそうです。例えば、抗がん剤の有害事象などをみるときに、嘔吐回数は客観的に見てわかりますが、吐き気は主観的なものなので、医療者だけの評価では十分ではないことが判明した調査について紹介されました。痛みや不安なども、同様の傾向がありました。

1日目のレポートでも、PRO(Patient Reported Outcome)に触れましたが、PROを活用することで、有害事象の発生頻度が減り、生命予後が延長された調査結果もありました。私も将来、臨床試験にかかわることがあれば、PROと医療者としての評価が乖離しないよう、患者さんに寄り添った評価ができる薬剤師になりたいです。


 
<大会長 山口 拓洋先生より>
第1弾のレポート記事においてもPROが取り上げられていましたが、医療のIT化が進み、AIが導入され、スマートホン、タブレット型端末などのさまざまなデバイスの進化が進んだとしても、これらは、すべて医療者と患者さん(ご家族)との双方向のコミュニケーションの助けのためであるということを忘れてはいけないと思います。


大会長の山口先生には、たくさんの質問に答えていただきました




4.学術集会総会に2日間参加して・・・

臨床試験学会は初めての参加でしたが、本当に多くの方が学びに来られていて、どの会場も熱気に包まれており、圧倒されました。

少し難しく感じられるセッションもありましたが、大学の先生をはじめ、製薬企業や臨床試験を支援する企業、医療機関などで活躍する薬剤師の方々に声をかけていただき、将来は皆さんのように医療の進歩を支えることができる薬剤師になりたい、との思いを強くし、積極的にセッションに参加し学ばせていただきました。

大学では、臨床試験についてここまで深く学ぶ機会がなかったので、とても勉強になりました。この学びを大学の友人たちともシェアして、これからに活かしていきたいと思います。



<大会長 山口 拓洋先生より>
1人でも多くの人に日本臨床試験学会のことを知ってもらいたい、1人でも多くの人に臨床試験について知ってもらいたい、そしてさまざまな方々にこの取り組みを知ってもらいたい。そんな思いから、今回、現役薬学部の学生である白石 由莉さん(薬学ガール)に取材をお願いしました。

若い学生さん、薬剤師さんなどには敷居が高いと思われていたかもしれませんが、この記事をきっかけに、興味を持って頂ければ幸いです。


レポーター・インタビュアー:白石由莉







【プロフィール】
白石 由莉(しらいし ゆり)
現役薬学部の5年生。薬学ガールとして、がん情報サイト「オンコロ」の学生スタッフ、日本肺癌学会肺がん医療向上委員会の広報大使を務める。
勉強のこと、日々のこと、薬学ガールとしての活動などをFacebook、Twitterを通じて発信しています。
【薬学ガールFacebook】
【薬学ガールTwitter】



次回も、薬学生の目から見た学会レポートをお届けします。
 














 

 


 

著者:白石由莉

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